Cases
社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

770の町民発のアイデアを「8つの機能」に凝縮 ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(2)

2015年03月02日



770の町民発のアイデアを「8つの機能」に凝縮 ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(2) | あしたのコミュニティーラボ
5つのペルソナが完成後「本当に使ってもらえるタブレット開発」を目指し、プロジェクトが本格的に稼働した。当初4回予定していたアイデアソンは福島県内と東京で計6回開催し、同じく福島県内と東京でハッカソンも開催された。これらのワークショップには県外のエンジニア、ハッカー、デザイナーらのほか、浪江町民も意欲的に参加した。10代から80代まで幅広い年齢層が揃ったという。今回は、町民を巻き込んだアイデアソン&ハッカソンと、開発段階までの動きをお伝えする。

浪江町が挑む“町民のための”タブレットづくり ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(1)
「2017年3月」の先にある浪江町の未来像 ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(3)

町民協働だから「前向きなかたちで発想できた」

ペルソナがまとまれば、次は浪江町民を巻き込んだアイデアソン&ハッカソンだ。あまりなじみのないイベントには「『タブレットがもらえる会合かい?』なんて勘違いされた方もいらっしゃいましたが(笑)、誤解が解けてもなお『ぜひとも意見が言いたい!』と、自らアイデアを紙にまとめて参加されていました」と浪江町役場の小島さん。
アイデアソン二本松
アイデアソンでは町民からさまざまな意見が集まった 提供:浪江町役場

浪江町ではもともと「町民協働」というスローガンを掲げている。日頃から町民との協働による委員会も開いているが、今回は職員を通じて各人の知り合いにも声をかけてもらった。その結果、10代から80代までより幅広い年齢層が集ってくれた。「町民協働」のスローガンはCFJの掲げる「ともに考え、ともにつくる」の理念とも見事に合致。プロジェクトメンバーのやる気はますます向上していった。

浪江町役場の2人もそのときの印象をこう語る。
namie2_02
浪江町役場復興推進課 陣内一樹さん

「役場のワークショップっぽくない感じ。被災地の事業だからと暗くなるわけでもなく、くだらないことを発言してもいい。前向きなかたちで発想できるアイデアソンならではの雰囲気だった」(陣内さん)。「CFJのファシリテーターの方の仕切りも素晴らしく、自由な雰囲気のなかで、みな積極的に発言していました」(小島さん)。CFJ高木さんも「とにかくみんな元気で、お年寄りだからパソコンのことはわからないかと高をくくっていたけれど、むしろ『こんなこともやってみたい!』と前向きでした」と語る。

770のアイデアを16パターンに類型化

最初に集まったアイデアの数は、実に770。それらを複数回のアイデアソンを経て16パターンに類型化し、それをもとに2回のハッカソンでプロトタイプを開発した。そして実現性を踏まえながら、「システム設計・開発」の事業者選定に必要となる調達仕様書が作成されていった。
namie2_03
タブレットを説明するCode for Japan フェロー 小俣博司さん(左)と吉永隆之さん(右)
タブレットのTOPはアイコンが少なく、すっきりと使いやすい画面になっている

毎回のアイデアソン終了後には、必ず集まったアイデアをまとめる会合を開き、その日の振り返りもおこなったという。そこでまとめられたアイデアを次のハッカソンへ。ハッカソンの結果を調達仕様書へつなげていった。その過程では「この個別機能のことならあいつに聞け!」とばかりに、特定のアイデアに対する専門家のような立場もチームのなかで生まれていった。

たとえば高木さんは「放射線量情報配信機能」を担当した。「実際に町民が知りたいのは、自宅の周辺やいつも歩いている道とかの放射線量。それらは定点観測だけではまかなえません。町民との対話からわかったことだし、だからこそ僕らも気持ちが入る。ハッカソンで開発したプロトタイプも評価をしていただき、仕様書に載せることができました」。

断片をストーリーに紡ぐ、フェローの役割

2014年8月に公開された調達仕様書には、共通管理や操作ログ解析の機能のほか、8つの個別機能が盛り込まれた。

(1)ローカルニュース配信関連機能
(2)放射線量情報配信機能
(3)行政情報配信機能
(4)世帯間SNS機能
(5)利用率向上に資する機能
(6)待ち受けスライドショー
(7)町民間情報共有機能
(8)浪江町アーカイブ
※(1)〜(6)は必須。(7)(8)は選択。

これら調達仕様書を含めたRFPのもと、6つのベンダーが「システム設計・開発」受託候補者選定の入札に参加。入札結果の発表時には各社の獲得スコアやプレゼンテーション内容も公開され、「なぜこのベンダーなのか」が町民の目にもはっきり見て取れるようになっている。9月には受託候補者が富士通に決定し、プロジェクトチームに開発担当として加わることとなる。
namie2_04
Code for Japan フェロー 吉永隆之さん

ちょうど同じ頃、プロジェクトチームにCode for Japanから2人のフェローも加わり、浪江町に常駐しプロジェクト推進や開発などに携わった。2人は浪江町役場に籍を置くIT開発の専門家としてコミットしていく担当だ。

2014年7月から1年間参加する予定の吉永隆之さんは、もともとコンサルティング会社で通信会社向けの業務システム構築のプロジェクトマネージャーをしていた。今回は、開発のプロジェクトリーダーとして、山ほどあるアイデアをRFPに落とし込んでいった。「当時はまだアイデアはあっても、具体論にまで至っていない状態。たくさんのアイデアの断片を1つのストーリーに紡いでいきました」。
namie2_06
浪江町フェローシップの仕組み 提供:Code for Namie

2014年10月から参加した小俣博司さんは、エンジニアとして都内で働きながら今回のプロジェクトにフェローとして参加。事業者選定が進む途中の開発段階から関与している。「本事業は『BtoC』でありながらも、『C』は“コンシューマ”というより“Cho-min(町民)”の意味合いが強い。ユーザー層も老若男女に幅広く、それをカバーする難しさがありました」。
namie2_07
Code for Japan フェロー 小俣博司さん

開発段階では、こんな苦労もあった。「集まったアイデアを盛り込んだだけでは、みんなを納得させるタブレットになるとは限りません。そもそもタブレットというものをどう認識してくれるのか。個人によって差があります。最初の試作機を町民に見せても、触ってくれない……。触ってくれたとしても、アプリのアイコンを押せるものと気づいてくれない。どうやったら押してくれるか試行錯誤しました」(吉永さん)

UI/UXの優れたデザインを探るため、町民が参加する交流会があれば参加し、タブレットの使い方を教えながらリサーチを続けた。「すべての町民に使ってもらってこそ意義がある。隣で見ていても使ってみたくなる、そんなタブレットとはどんなものなのか検討を重ねました」(小俣さん)

こうして、年が明けた2015年1月末、「きずな再生・強化事業」のタブレット端末は、いよいよ日の目を見ることとなる。

いよいよ配布に向け最終段階となった浪江町タブレット。町民の声を具現化したタブレットは、どのようなものになったのか。最終回は搭載されたアプリケーション・サービスを通じて見えてきたタブレット事業の今後について聞く。

「2017年3月」の先にある浪江町の未来像 ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(3)へ続く
浪江町が挑む“町民のための”タブレットづくり ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(1)

関連リンク
浪江町フェローシップ募集中*(Wantedlyリンク)
*浪江町フェローシップは2015年度のフェローを募集しています。
募集職種はマネージャーとデザイナー。興味のある方は上記リンクをご覧ください。


いいね!を押して
Facebookページをフォロー

あしたラボの最新情報をお届けします。

Twitterであしたラボ(@ashita_lab)をフォローしよう!

皆さんの感想をお聞かせください!





  • facebook
  •  twitter
  • RSS

Copyright 2018 あしたのコミュニティーラボ