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つながれば、ぼろ儲け!?
山崎亮が語るコミュニティーデザインという仕事。(下)

2012年08月27日



つながれば、ぼろ儲け!?<br />山崎亮が語るコミュニティーデザインという仕事。(下) | あしたのコミュニティーラボ
全国各地でさまざまなプロジェクトに携わり、コミュニティーの課題に向き合う人たちを応援している山崎亮さん。扱う課題は多岐にわたり、1か月の3分の2以上もの間、地方を転々とするという多忙ぶりだ。そんな彼は、自らの仕事を「ぼろ儲け」だと振り返る。果たしてその真意とは――。地域を見続けてきたコミュニティーデザイナーが、豊かな社会についての意見を語った。

「つながれば、ぼろ儲け!? 山崎亮が語るコミュニティーデザインという仕事。(上)」はこちらからどうぞ。

「ノウフー(know-who)」こそ地域の課題を解決する

————山崎さんはさまざまな事例に取り組んでおられますが、こういうケースにはこの手法で、といったノウハウはあるのですか。

山崎 ないですね。課題が出たらそれをどういう「人」で解いていくか。どんな人たちをどう組み合わせればそれぞれのキャラクターが生きて、アイデアを生み出せるのか。それをつくりあげていくのがおもしろいんです。デザイナーの性なんでしょうかね。八百屋のおっちゃんも、旅館のオーナーも、行政の人もいろんなことを言いますが、それらをいい具合に統合させるやり方は、それぞれ違います。

――だから、とにかく徹底的に聞くんですね。

山崎 やはり、僕らのほうから「こうすればうまくいきますよ」と提案したら反発が起きるんですよ。地域の人たちの想いを引き出して、たとえば相反する要素もなんとか収まるプログラムになるよう手助けをする。「こういうことを皆さんやりたいんですよね?」と投げかけたとき「そう、それが自分たちのアイデアだ」と言えるようなアイデアを生み出せれば、「自分たちの言ったことだからやろう」とみんなが動き出すんです。

————つまり、地域ごとにまったく異なるアプローチをとらなければいけないのですね。

山崎 本当に毎回違います。漁村なのか農村なのか、都市なのか郊外なのか、中心商店街なのか限界集落なのか、コミュニティーの年齢層や性別などの属性によっても、それぞれやり方を変えなければいけません。ワークショップなのか、ワールドカフェなのかという方法一つとってもそうですし、主催者側の見た目や話し方、キャラクターによってもやり方が違う。だから教科書は書けない。こんな手順でやれば成功します、という本を書いたとしたら、それは何十万通りのうちの一つのやり方にすぎません。そのとおりにやれば、ほぼ確実に失敗するでしょうね。

――コミュニティーデザインは、さまざまな立場の当事者が主体的にかかわって課題を解決していくという作業でもあると思います。たとえば、「共働」というキーワードに置きかえて考えることもできそうですね。

山崎 僕の立場から言えば、「共働」をどう「共創」に結びつけていけるか。そこでデザインマインドというかクリエイターの力が試されると思います。みんなの意見を合わせればいいものになるかといえば、衆愚になるおそれもあって、すなわちそこには戦略が必要です。社会の課題が複合化して一人の専門家だけで解決できる時代ではないので、いろんなアイデアを持ち寄り「共創」することで地域が抱えている課題を乗り越えていく。そのとき「ノウハウ(know-how)」ではなく、誰と一緒にやればよいのかという「ノウフー(know-who)」、つまり地域の人たち自身のクリエイティビティの組み合わせ方によっては、2倍にも3倍にも価値を膨らませることができるのではないかと思っています。

「つながりを儲ける」という発想があってもいい

————今、社会というお話もありましたが、コミュニティーデザインは社会的課題の解決にも貢献しうるのでしょうか。

山崎 コミュニティーデザインはソーシャルデザインの一分野だと思っています。鬱病、自殺、孤独死、農業、林業、限界集落、エネルギー、少子化などなど「課題先進国」といわれている日本の社会的課題を少しずつ解決していくソーシャルデザイナーがたくさん出てくれば嬉しいし、僕も及ばずながらコミュニティーデザインという手法を使ってお手伝いしたいですね。それは、豊かな社会をつくっていく前提を成立させるための取り組みだと考えています。

———では、山崎さんが考えるこれからの「豊かな社会」とは、どんな社会なのでしょうか。

山崎 地球が1個の宇宙船みたいなもので、誰かが金持ちになれば誰かが貧乏になる、どこかで多くのモノをつくって手に入れればどこかで資源が食い潰されることがすでにわかっているわけです。つまり、物質的に豊かな人間が増えれば豊かな社会になるかといえば、そうはならないことを知ってしまった。

だとすれば、豊かさをどう認識するか。たとえば人と人とのつながりが増えればどうでしょう。つながりが増えることによって、どこかで誰かが何かを搾取されているかといえば、そうでもない気がします。「つながりの多様性」を増やしていくことが、豊かな社会の一つの側面なのかもしれません。

――山崎さんはこれまで、まさに「つながり」を紡いで課題解決を行ってきたわけですからね。

山崎 僕は「儲ける」という言葉の意味を広げたいんですよ。お金のことだけでなく、「つながりを儲ける」という発想があってもいい。この仕事をしていると本当に実感しますが、「あんたら来てくれへんかったら、本当にこの地域どうなっていたかわからへんわ」と言われると、僕らとしてはそれがすごい報酬なんです。新蕎麦とか新米を送ってくれるのも嬉しいし。地域で100人くらいと友だちになって、再訪すれば「おーひさしぶり!」と笑顔で迎えてくれる。対価としての業務費はそんなに大きくありません。でも、これらすべて「儲け」だと考えれば、この仕事は「ぼろ儲け」なんですよ。これって豊かだな、と思いますね。「多様な価値観」という言葉に収束されるのかもしれませんが、やはり豊かな社会は、「つながり」と大いに関係しているように思います。

山崎亮(やまざき・りょう)

1973年愛知県生まれ。コミュニティーデザイナー。
99年大阪府立大学大学院(地域生態工学専攻)修了。SEN環境計画室勤務を経て2005年にstudio-L設立。現在、studio-L代表、京都造形芸術大学教授。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティーデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。2010年度は「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」「震災+design」でグッドデザイン賞、「こどものシアワセをカタチにする」でキッズデザイン賞、「ホヅプロ工房」でSDレヴュー、「いえしまプロジェクト」でオーライ!ニッポン大賞審査委員会長賞をそれぞれ受賞。著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、『ソーシャルデザイン・アトラス』(鹿島出版会)、そのほか共著・編著多数。

山崎さんが手がけられた上記のお仕事について、詳細は以下のリンク先をご覧ください。
http://www.studio-l.org/

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