Cases
社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

未来を担う85年世代が感じた、これからの働き方 ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(6)

2015年04月15日



未来を担う85年世代が感じた、これからの働き方 ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(6) | あしたのコミュニティーラボ
設計・開発チームの山口さんと行田さんはともに1985年生まれ、今年30歳を迎える同世代だ。富士通とEyes, JAPAN、それぞれ働く場所も職種も異なるが、同じ“85年世代”が縁あって、今回同じプロジェクトに参画することとなった。他の自治体に類を見ない“オープンな調達”は、大企業、ベンチャー企業それぞれで活躍する若手メンバーにとってどんな学びをもたらしたのだろうか。2人へのインタビューから、協働が前提となる時代の新たな働き方のヒントをお届けする。全3回の最終回。

タブレットが浪江町に“新しいつながり”をつくる ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(4)
“アジャイル型”開発が浪江町タブレットにもたらしたもの ──浪江町タブレットを利用したきずな再生・強化事業(5)

自分たちががんばることで、町民が幸せになることを実感

「本当に使ってもらえるタブレット端末をつくる」をスローガンにはじまった“オープンな調達”。発注者と開発ベンダーががっちりとスクラムを組むことで、このたび、理想のタブレット端末が誕生した。それが「本当に使ってもらえる」ものかどうか、浪江町では2015年度中にユーザーへのインタビューを行い、その反応によっては2015年度中の機能改善も予定している。
6
(写真右)参加町民にタブレットの利用方法を教えながら談笑する浪江町役場 復興支援課 陣内一樹さん

初年度を終えたここまでの成果について、“公共事業”の観点から見ても「予定価格の半分くらいまでコストを抑えることができた」と浪江町役場復興推進課の陣内一樹さんは話す。さらには「アプリやプログラムは、すべてオープンソースなので、ほかの町にも横展開させられます。浪江町だけで独占してもいいことはないので、同じ状況にある他の自治体などでも使ってもらえればうれしい」と展望した。

一方で、自治体初の“オープン調達”に携わった約半年間のプロジェクトを、開発ベンダーはどのように感じたのか。行田さんは「めったにできない体験だった」と振り返り、山口さんも次のように話す。

「町民の方の声を聞きながら細かく改善していった結果、作業的には大変でしたが、町民の皆さんが幸せになる。大変な部分もあったけど、それがあるから頑張れた」

協働の背景にはさくらハッカソンでの“出会い”

そもそも富士通とEyes, JAPANが協働参画したきっかけは、浪江町のハッカソンが開かれることを山口さんの同僚である下野暁生さんが知り、東京開催のハッカソンに派遣されたことにはじまる。そのときに下野さんと同じチームになったのが、プロジェクトに興味を持ち参加した行田さんだった。
14
(左から)富士通株式会社 山口真幸さん、株式会社Eyes, JAPAN 行田尚史さん。今回の開発を通してあらためて「ものづくりには空気の共有が欠かせない」と感じたという

「下野さんとは浪江町のハッカソンの『電子回覧板』チームで、たまたま2人だけのチームになりました。それが縁で、下野さんから今回のプロジェクトに誘っていただき、富士通さんとタッグを組むことになったんです」(行田さん)

しかし背景には、それに加え別の“縁”があった。2014年4月に開催した「さくらハッカソン」に山口さんが技術提供者として参加し、アドバイザー兼モデレーターだったEyes, JAPAN代表の山寺純さんや同社のスタッフに出会ったことだ。また、期せずして山寺さんとあしたのコミュニティーラボ編集部で行った対談にも下野さんが参加していた。

「Eyes, JAPANのスタッフが優秀かつ熱心であることをそのときから知っていました。山寺さんともお話させていただく機会があり、いつかご一緒したいと思っていた。Eyes, JAPANの人たちと仕事をして、私自身もものの見方が変わるところがありました」と山口さん。ちなみに、さくらハッカソンには浪江町のフェローである小俣さんも参加しており、プロジェクトで山口さんと数カ月ぶりの再会となった。

ベンチャー×大手企業による協働で得られたもの

今回ベンチャー企業=Eyes, JAPANの側から見て、大手企業=富士通とのプロジェクト推進にどのような感想を持ったのか。行田さんは、Eyes, JAPANに入社する前に大手印刷会社に勤め、雑誌のWebデザインなどを担当していた。その意味では、大手企業とベンチャー、それぞれのいいところをよく知っている人物だ。
8
講習会では、隣になった住民同士が教えあいながらタブレットの使い方を学んでいった(タブレット講習会 東京会場にて)

昨今、大手企業で働くことは、ネガティブなイメージで語られることもあるが、行田さんは「ベンチャー企業で働く人間として、そういったイメージは全然本質的じゃないと思います」と話す。

「もともとEyes, JAPANには多様性のあるエンジニア、デザイナーが集まっていて、互いのいいところを取り入れながら仕事をしています。もちろん、大企業のなかにも優れた人がたくさんいて、多様性があるというのは当然の考え方として持っていました。今回はさらに、山口さんのイノベーティブなものの考え方や大企業で培われたプロジェクトの進め方など、今までになかった新しい考え方や手法を自分のなかに取り入れ、整理していくことで、これまでとは違ったチーム設計やアプリ開発をすることができました」

これから求められる“公共の利”を考えた働き方

浪江町のようなプロジェクトは、設計・開発を統括した富士通の数ある事業のなかでは、“SI(システムインテグレーション)”という位置づけになる。SI事業とは、今回のように、企画、設計、開発、保守、運用などの工程を一手に請け負う事業のことだが、ほぼ全てが顧客との守秘義務の上になりたっており、「どこの誰が、どんな仕事をしていているのか」が見えにくいという側面がある。
9
「わあ、こんなことができるんだ……」。Googleマップなど新しい機能を知ることで自然と笑みがこぼれる(タブレット講習会 東京会場にて)

山口さんもかねがね「SIはいい仕事だと思っていますが、当事者の中に閉じてしまうので、外からSIerがやっていることを知ってもらうことは難しい」というもどかしさを感じていた。しかし、ともすれば“クローズド”なSI事業が多いなか、浪江町のプロジェクトはその点から言っても“オープン”だった。

「Slerは何をしているかわからない、旧態依然としているという声もありますが、今回のプロジェクト、“オープン調達”を使った“オープンなプロジェクト”に参加したことで、富士通自体もこうした事業にチャレンジしていることを発信できたと思います。今後、オープンなプロジェクトが増えることで隠れたSIer人材にも光が当たるようになって欲しい。それを広く伝えていくことで『SIもおもしろいことやってるじゃん!』と興味を持って、この業界にも良い人材が集まってくるのではないでしょうか」

その思いは行田さんも同じだ。デザインの世界でも、行政の案件やシステム開発などのSI事業は必ずしも花形ととらえられていないところがあるという。

「しかし、本来デザインが求められているのは“公共の利”を考えた、今回のような仕事にこそあるはずです。ユーザーの体験を第1に、導線や利用者への配慮といったものが切に求められている今回のような案件に、クリエイティブの力が入っていく。そういう仕事をデザイナーの花形にしていかないと、行政の案件やシステム開発などのSI事業には新しい人材が入ってこないと思います」

浪江町の“オープンな調達”は、これからそれぞれの業界を牽引していくであろう“85年世代”の2人にも、貴重な体験になったに違いない。自治体のタブレット端末配布という事業におけるオープン調達を活用したプロジェクトの推進体制とともに、新しい協業、働き方のヒントにもなりそうだ。

これまでの活動の様子はこちらからご覧ください。
浪江町が挑む“町民のための”タブレットづくり(1)
770の町民発のアイデアを「8つの機能」に凝縮(2)
「2017年3月」の先にある浪江町の未来像(3)
タブレットが浪江町に“新しいつながり”をつくる(4)
“アジャイル型”開発が浪江町タブレットにもたらしたもの(5)

いいね!を押して
Facebookページをフォロー

あしたラボの最新情報をお届けします。

Twitterであしたラボ(@ashita_lab)をフォローしよう!

皆さんの感想をお聞かせください!





  • facebook
  •  twitter
  • USTREAM
  • RSS

Copyright 2017 あしたのコミュニティーラボ