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五大陸で、チャンスに火をつけろ! 学びから世界を変える大学生・税所篤快の挑戦(下)

2012年09月20日



五大陸で、チャンスに火をつけろ! 学びから世界を変える大学生・税所篤快の挑戦(下) | あしたのコミュニティーラボ
大学生・税所篤快さんの挑戦は、教育機会に恵まれなかった貧しい農村から「バングラデシュの東大」といわれるダッカ大学の合格者を輩出するという結果をもたらした。彼の教育革命はこれにとどまらず、世界中に可能性を広げつつある。脇目もふらず世界を走り続ける若き社会起業家に、「学び」に対する想いとこれからを聞いた。

「五大陸で、チャンスに火をつけろ! 学びから世界を変える大学生の挑戦(上)」はこちらからどうぞ。

史上初、大学生と国連の共同プロジェクト

————その後もバングラデシュで活動を続けられたそうですね。

税所 これまで2年間の挑戦で、約50名の生徒に授業を提供しました。映像授業は、5教科で100時間近く制作したんじゃないかと思います。生徒の大学合格率は8割を超えています。

————一見、プロジェクトは順風満帆のようですが、失敗もあったのだとか。

税所 一時期は、大手居酒屋チェーンと連携し、ごくわずかな授業料の有料モデルで教室を展開しようとしたのですが、生徒が思うように集まらず、結果的には失敗でした。予備校と競合しても仕方ありません。僕らがやりたいのは教育のイノベーションなので、いわゆるビジネスとはちょっと違う。今は東京大学とのコラボレーションで、DVD授業の効果を科学的に検証する研究に取り組んでいます。その結果が出れば、今後、政府系の公共機関や国際機関などにプロジェクトの意義や有用性をプレゼンするにあたって有力な証拠になるし、ますますこのプラットフォームをいろいろな場所に展開しやすくなると思うのです。

————バングラデシュの教室は、現在どうなっているのでしょうか。

税所 現地のチームがマネジメントして、4か所でやっています。パートナーのマヒーンが実行隊長を務めて、およそ180名の高校3年生に授業を提供しているところです。最初の2年間の映像授業を機に、生徒たちに根づき、広がってきていると実感しますよ。バングラデシュはマヒーンたちに任せておけばなんとかなるし、僕は数カ月に一度、現地に行って進捗をチェックする程度になりました。

————着実に人数も増えているし、成果が楽しみですね。ところで、税所さん自身は大学に戻ったんですか。

税所 実は、大手居酒屋チェーンとの取り組みがうまくいかなかったあと、その先の進路についてかなり迷っていたんです。同学年は就職しちゃったし、まわりの親戚にも心配をかけっぱなしだし(笑)。そんなとき、尊敬していた元杉並区立和田中学校長の藤原和博先生に僕の書いた本を献本して、会いに行ったんですね。そしたら「お前はもっと外れろ、そうすれば同世代に創造的なインパクトを与えられるぞ」と。

————焚きつけられたわけですね。

税所 焚きつけられました(笑)。

————社会のために何かをしたいと思う後進のために、やりたいことをやって道をつくれ、と。

税所 そうですね。それで、よし、バングラデシュのDVD授業を五大陸に広めよう、と新しいビジョンを立てたんです。このプラットフォームはどんな場所でもどんな子どもたちのためにも役に立てるはずだ、という信念が、僕なりの希望のともし火でもありました。先生が不足しているエリアは世界中にたくさんあるはずなので、一つひとつ実証実験してみよう、と。

————すでに着手しているんですか。

税所 今やろうとしているのは、パレスチナ自治政府のガザ地区。10㎞×40㎞のエリアに140万人が暮らしていて、イスラエル軍が境界線に沿って封鎖している地域です。そういう状況だと子どもたちのストレスは激しく、1学年3万人の実に30%が学習障害といわれています。そこで、ヨルダンの首都アンマンの学習障害に関する専門家によるDVD授業で、ガザ地区の先生に学習障害への対応スキルを伝授する、というプロジェクトをスタートさせるつもりです。

————今度は先生に対するトレーニングというわけですね。

税所 そうですね。資金はネット上のクラウドファンディング「READYFOR?」で調達しています。100万円の設定で、すでに目標金額を超える104%を達成しました(2012年9月10日現在)。国連はこのプロジェクトを、大学生の思いつきなのに、すぐ認可してくれました。ガザの子どもたちの厳しい状況にイノベーションをもたらす可能性があるということを認めてくれたんですね。史上初らしいです、大学生と国連の共同プロジェクトは。しかも大学生のほうがファンディングするという(笑)。さらにルワンダでもバングラデシュと同じようなプロジェクトを始めようとしています。

———そこまで「学びの場」の提供に熱意を燃やせる原動力は何でしょう。

税所 高校は進学校でしたから、テストで2点とか3点を取ったときにクラスで感じていた孤独感や悲しさを今でも鮮明に覚えていて。あのときに出会った予備校の先生方にどれだけ救われたことか。生徒にとってすばらしい先生に出会えるかどうかは一生のマターです。ICTを使えば、すべての生徒が国宝級の先生にアクセスする権利を保証できます。バングラデシュにもガザにもルワンダに優秀な生徒がたくさんいる。せっかくポテンシャルがあるのにくすぶっているのはもったいない。僕らが着火剤の役を果たしたいんです。

税所篤快(さいしょ・あつよし)

1989年東京都生まれ。早稲田大学教育学部在学中。e-Educationプロジェクト代表。2009年、19歳でバングラデシュ・グラミン銀行の研究ラボ「GCC」初の日本人コーディネーターとなり、10年には「e-Educationプロジェクト」を設立して独立。教育機会に恵まれない子どもたちに映像授業を行い、多数の大学進学者を輩出した。現在はヨルダンのパレスチナ難民キャンプやルワンダ、パレスチナ・ガザ地区などに活動の幅を広げている。著書に『前へ! 前へ! 前へ! 〜足立区の落ちこぼれが、バングラデシュでおこした奇跡。』(木楽舎)がある。


ガザ地区での取り組みについてはこちらをご覧ください。
https://readyfor.jp/projects/gaza_dragon/announcements


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