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「これからの「教える」と「学ぶ」を考えよう! 「学び」の場で、つながるもの。」座談会レポート

2012年10月05日



「これからの「教える」と「学ぶ」を考えよう! 「学び」の場で、つながるもの。」座談会レポート | あしたのコミュニティーラボ
2012年9月17日(月)、東京・世田谷にて、これからの学びのあり方を考える座談会イベント「これからの〈教える〉と〈学ぶ〉を考えよう! 〈学び〉の場で、つながるもの。」を開催しました。モデレーター役の「自由大学」学長・和泉里佳さん、主体性を育む教育を実践する「広島市立藤の木小学校」校長の堀達司さん、Webサイト「greenz.jp」発行人の鈴木菜央さんの3人によるお話と、集まった多くの来場者の活発な参加の姿勢により、会場は大盛り上がり。当日の模様を詳しくレポートします。

自分で問いを立てることが、学びの場になる

座談会が開催された「世田谷ものづくり学校」は、廃校になった東京都世田谷区立池尻中学校の校舎を再利用したもので、モデレーターの和泉里佳さんが学長を務める市民大学「自由大学」のメインキャンパスもここにあります。

イベント開始の定刻には、30名の一般参加者が来場し、会場はほぼ満席に。そこへ和泉さんと「greenz.jp」の発行人・鈴木菜央さんが登場し、会場に質問を投げかけるスタイルでお二人がプレトークを行い、場を盛り上げました。

その後、「広島市立藤の木小学校」の堀達司校長先生も登場し、イベントがスタート。3人の自己紹介に続いてまず話題となったのは、社会人も自由に学べる「自主的な行動につながる学びの場」としての自由大学でした。立ち上げから約3年半の間に受講した生徒数は、累計で4,000人以上。中心は20〜30代だそうです。若い世代が多く集まる理由について和泉さんは、変化の激しい時代に、ただ会社にいるだけでは将来が危うい、自分自身をどうつくりあげていくか模索している人が多いからではと感じていると話します。

モデレーター役の「自由大学」学長・和泉里佳さん

それは、鈴木菜央さんが発行するWebマガジン「greenz.jp」の読者のモチベーションとも重なるようです。greenz.jpでは、「社会の問題は、楽しく解決できる」を旗印に、ソーシャルデザインのグッドアイデアを紹介してきました。鈴木さんいわく、現代社会はマクロ・ミクロともに複雑な問題がスパゲッティのように絡まり合っていて、従来のレールに乗った成功の道筋は描きにくい。その先に幸せがあるのかさえわからない。そんな中で、一つひとつ身のまわりにあるものから考え学び直すことが、やがては自分の人生を取り戻すことにつながる。そんなふうに考える人たちが自由大学にもgreenz.jpの読者にも多いのではないか、と持論を展開しました。

Webサイト「greenz.jp」発行人の鈴木菜央さん

自由大学のような市民大学には初めて足を踏み入れるという、堀達司さん。小学校校長の立場から堀さんが抱いた感想は、「今を学んでいる場」であるということでした。学校では、教師が「過去の財産」を教えています。ところが、自由大学では教えたい人が教えている。現役で活躍しているさまざまな職業の人たちが講師を務めている、 そんな事実に驚いたそうです。教師は子どもたちの可能性を常に探っていて、それがチラっと見えたときにほめると、子どもはグンと伸びる。「自分を突き動かすきっかけや、探しているものを見つけるために人は学ぶ」と考える堀さんは、自由大学のようなコミュニティに学びの本来の姿を見たようです。

「広島市立藤の木小学校」校長の堀達司さん

和泉さんは「自分で問いを立てる 」練習の大切さを強調します。問題を与えられて答えることに慣れすぎていて、そもそもの問題設定が適切なのかどうか考えられていないことが世の中には多い。自分で問題を見つけることが学びであり、自由大学ではその場づくりをしている、というわけです。

かつて学校は「教える場」と考えられてきたが、今は「学ばせる場」にしようとしている、と堀さんも言います。学びは、自分が主体的なポジションにいないと成立しない。答えを出すのではなく「考えるプロセス」を生徒に経験させる授業が望ましい。そうした方向に、学校での学びも変わりつつあるようです。

一人の考えがみんなに共有されて議論が始まる

その具体例として、堀さんが校長を務める広島市立藤の木小学校の取り組みが紹介されました。同校は2010年からスタートしたICTを活用する「フューチャースクール推進事業」(総務省)の実証校。全児童がタブレットPCを持ち、電子黒板を使って授業が行われています。

社会が急速に変化し、未知の課題ばかりになる時代がもうそこまで来ている。今ある知識で解決できない問題にぶつかったとき、どうやって一歩ずつ進んでいけばよいのか。ICTの利点を活用して、そのプロセスをつくりあげる力を子どもたちが身につける。それがフューチャースクール推進事業の目的です。

堀さんによれば、フューチャースクールの最大のポイントは「自分の考えが転送されてみんなに共有される」こと。だから全員が議論に参加できます。たとえば、手を上げて自分の考えを発表できなかったA君のPCのワークシートが電子黒板に映し出され、教室の全員に共有される。教師は「A君の考えていることがわかる人?」と尋ねます。B君が「こういうことじゃないですか」と代わりに説明する。A君は自分の考えが認められたと感じて嬉しくなります。そしてA君と違う考えのC君のワークシートも映し出され、議論が始まる――。こうしたプロセスを通じて、自分の考えをまとめて人に伝える力、他人の意見から得た気づきをもとに、新たな考えを生み出す力を育むのです。

このように知識をつくりあげていく過程で、皆が同じ画面を共有できる効果はとても大きい、と堀さんは感じています。子どもたちが答えを言うだけでなく自分の考えを説明できるようになりました。ワンワードではなくセンテンスで話すようになり、「ウザい」「キモい」という言葉も一掃されたそうです。

鈴木さんは友人から聞いて衝撃を受けたという、ニュージーランドの小学生の話を紹介しました。インターネットで無料配信されている講演動画を参考に、子どもたちが「どうしたら持続可能な社会を実現できるか」というテーマを授業で議論しているというのです。しかしながら、藤の木小学校の取り組みを知り、日本でも「考える人」を育てる教育が始まっていることを心強く思ったと語っていました。

人生をよりよく楽しむために学び続ける

では、これからの学びを通して何が変わり、それがどのように豊かな社会につながっていくのか。後半はそんな議論になりました。

鈴木さんはソーシャルデザインの観点から、「山積する社会的課題をどうしたら克服できるのか」という問題意識こそ、学びの源泉だと考えます。自分の仕事を通して社会が少しずつよい方向に進んでいるという実感を得られれば、こんなに幸せなことはありません。楽しく社会を変えていく。そのために学ぶ。鈴木さんは、パリの若いデザイナーが「おばあちゃんの手編みニット」を学園祭で売り出したら好評だったことから、通販サイトを立ち上げた事例「Golden Hook」(http://goldenhook.info)を紹介しました。どのおばあちゃんに編んでもらいたいか、プロフィールや作品などを見て選べるようになっています。おばあちゃんは元気になり、ユーザーは本物の服を着られる。そんな変化が社会のあちらこちらに生まれつつあるのです。

和泉さんも「楽しさ」が学びのキーワードの一つだと考えます。学ぶことによって自分の身のまわりにある問題が一つずつ片づいていく。そのことの充実感、嬉しさ。今はこれだけ学んだらOKという時代ではなく、常に学び続けていないと、変化の激しい社会には適応できない。しかしそれは強制されて学ぶのではなく、人生をよりよく楽しむためにこそ学び続けるのです。

堀さんによれば、学びのもたらす力とは「現状を変えようとする力」。どんな職業であれ課題がある。現状に満足せず、よりよく変えていこうとする発想で仕事に携われる人こそ、これからの求められる人材と堀さんは考えます。

さらに堀さんは、学ぶ目的は「他人や社会から認められること」でもあると指摘しました。主体的に認められることで新たな行動につながり、さらに深く学ぶ姿勢が生まれ、それが楽しみになる。web、市民大学、子どもたちの教育機関 と、どんな学びの場であれ、他者とのつながりこそ学びの原動力であることが確認できたトークセッションとなりました。

参加者同士も熱く自分の意見を交わす

最後に、聴講した参加者全員で、トークセッションの内容についての感想や問題意識をテーマに、ディスカッションを行いました。実はイベント開始前の和泉さん・鈴木さんによるプレトークでは、あらかじめ「自分にとって学びとは?」というテーマで隣り合わせた人同士がグループを組み、話を交わしていました。そのせいか、すぐさまあちこちから熱を帯びた話し声が聞こえてきます。3人の登壇者も別々のグループでディスカッションに参加。会場は、学びについての関心の高さをうかがわせる雰囲気に包まれていました。

その後の質疑応答でも、熱心で鋭い質問が続出。堀さんへの「フューチャースクールのICT授業で、子どもたちがみんなの説明に耳を傾ける態度はどのようにして養ったのですか」という質問は、まさにディスカッションの成果なのか、教育の現場感覚に基づくものでした。堀さんによれば、藤の木小学校では1年生時に「話を聞くときは人の顔を見て」など「学びのスタンダード」を身につけさせます。学習規律という土台がしっかりできていてこそ、学びは成立するのです。

「小学生から社会人まで一気通貫できる学びの場があってもよいのでは? たとえば大運動会とか」といった自由大学に対する「提案」もありました。和泉さんは「おもしろいですね! ぜひやりたい」と乗り気の答え。さまざまな立場、年齢の人たちが交じり合うことも学びの場の意義の一つです。すかさず和泉さんは、「そのときはぜひプロジェクトリーダーになってください!」と会場の笑いを誘っていました。

誰にとっても身近な「学び」というテーマをめぐり、登壇者と参加者が一体となって考えた一日。多くの方が真剣な表情で話に耳を傾けていたり、体を前のめりにさせながら話し合っていた姿が印象的でした。アンケートには多くの方に「おもしろかった」と回答を寄せていただいたほか、「学びのあり方」や「ICT授業」に関するご質問やご意見をたくさんいただきました(こちらは今後、順次「あしたのコラム」にて回答していきますのでお楽しみに)。トークセッションでのお話どおり、その場にいた皆が楽しみながら学びについて考えるきっかけとなったようです。

「あしたのコミュニティーラボ」では、今後もさまざまな特集をテーマにリアルイベントを開催していきますので、これからもご注目ください!


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