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10の事業創出に必要な、50のチャレンジと、500の“種”探し ──オムロンベンチャーズ「オムロン コトチャレンジ」(後編)

2015年10月13日



10の事業創出に必要な、50のチャレンジと、500の“種”探し ──オムロンベンチャーズ「オムロン コトチャレンジ」(後編) | あしたのコミュニティーラボ
中期計画の基本戦略の1つに「最適化新規事業の創出」を掲げているオムロン。創業以来、脈々と受け継がれる「事業を通じて社会的課題を解決する」という理念に沿い、得意とする事業領域で社会ニーズを創出することのできる新規事業にチャレンジしたい──コーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)設立の背景には、そんな強い志がある。後編では、大企業とベンチャーの良い関係とはどのようなものか、そしてオムロンのCVCが果たすべき使命についてオムロンベンチャーズの小澤尚志代表取締役社長に伺った。

ハードウェア系ベンチャー育成のエコシステムで、メーカー企業が担うべき役割とは ──オムロンベンチャーズ「オムロン コトチャレンジ」(前編)

オムロンが農業ビジネスに進出している!?

オムロンと聞けば「電子体温計」のようなヘルスケア事業を思い浮かべがちだ。しかしそれは同社の事業のなかでも一部に過ぎない。売上シェアは、工場自動化に関する制御機器事業が実に4割を占め、電子部品、車載電装部品、社会インフラ、ヘルスケア、環境など多岐にわたる事業を展開している。

オムロンというと体温計などのヘルスケア領域の印象が強いかもしれないが、 その技術は駅の自動改札や工場の自動化など、日常のあらゆるシーンで活躍している (提供:オムロン株式会社)
オムロンというと体温計などのヘルスケア領域の印象が強いかもしれないが、
その技術は駅の自動改札や工場の自動化など、日常のあらゆるシーンで活躍している
(提供:オムロン株式会社)

オムロンは企業理念のなかで「私たちが大切にする価値観」として「ソーシャルニーズの創造」を掲げ、過去には、駅の混雑という社会課題を解消する“自動改札機”を発祥させた企業としても知られている。もとより、ベンチャースピリットを持った社会課題解決型のメーカーなのだ。

「自動改札機を世に送り出したのと同じように、オムロンのコアであるセンシング&コントロール技術で社会課題解決に貢献したい。われわれは『主要部門の事業分野』+『既存領域にない事業分野』で、新規事業の創出を進めています」

そう話すのは、オムロンベンチャーズ株式会社の小澤尚志代表取締役社長だ。

オムロンベンチャーズ株式会社 小澤尚志 代表取締役社長
オムロンベンチャーズ株式会社 小澤尚志 代表取締役社長

オムロンでは、オムロンベンチャーズがCVCとして機能するかたちで、農業ビジネスにも進出している。これまで3社の投資実績があり、そのうち2社は農業分野のベンチャーだ。また、シードアクセラレーターである株式会社リバネスと共同で「オムロンアグリベンチャーファウンダーコンテスト」も開催している。

エンジニアから戦略的なプランナー、そしてCVCの代表へ

およそ2年前に開かれたオムロン株式会社の経営会議。その席で、2014年度〜16年度の3カ年計画に関する議論が繰り広げられ、その基本戦略である「最適化新規事業の創出」の実現のために必要とされたのは、新規事業の“多産”だった。そのイメージを小澤社長は次のように説明する。

「2020年までの間に、10個の新規事業をオムロンから世の中に送り出したい。それを実現するには50くらいのチャレンジが必要です。そして『50くらいのチャレンジ』のためには、さらにその10倍以上の新規事業の“種”を見つけなければいけません」

ベンチャーとオムロン(大企業)の相補的関係から新たな可能性を生み出そうとしている (提供:オムロン株式会社)
ベンチャーとオムロン(大企業)の相補的関係から新たな可能性を生み出そうとしている
(提供:オムロン株式会社)

小澤社長は2003年にオムロンに中途入社。ちょうどその頃にもオムロンでは新規事業の立ち上げに注力しており、小澤社長も当時、1人の“エンジニア”として同社の新規事業の技術開発に携わっていた。しかし小澤社長はそのうち、商品開発だけでなく事業企画や商品企画にも携わりたいと思うに至り、戦略的な“プランナー”のほうに軸足を移していった。

時を経て、小澤社長は前述した2014〜2016年度の3カ年計画の策定リーダーを務めるようになっていた。そして新規事業の“多産”のためにはベンチャーと組みオープンイノベーションを加速させるしくみが必要だとの組織的な決定がが下り、その当時、小澤社長がグループ長を務めていた事業インキュベーショングループでCVC立ち上げを担当することとなった。

「CVCの立ち上げは決まったものの、新規事業をつくる『WHAT』(何を)の部分と『HOW』(どうやって)のところが分離していては、立ち上げ当初のマネジメントが不効率になってしまう。なので、グループ長である自分が社長を『やれ』といわれれば自らやる腹づもりではありました」と語る小澤社長。

「経営会議で人選を考えているなかで『私がやりましょうか』と自ら手を上げたらその場で私が社長をやることに決まりました」(小澤社長)
「経営会議で人選を考えているなかで『私がやりましょうか』と自ら手を上げたらその場で私が社長をやることに決まりました」(小澤社長)

かくして小澤社長が代表取締役に就任することとなったのだった。

コトチャレンジ1年目を終えて見えてきたもの

インキュベーションプログラム「コトチャレンジ」の成果について、小澤社長は次のように総括する。

「社会課題という切り口では、若い人たちは身近な課題に寄りがちです。一方オムロンは、さまざまなドメインの事業に精通していることから、スケール感のある課題が出てくる。そうしたお互いの視点からのニーズを共有していけることは、双方にとってのメリットだと思います」

現在、コトチャレンジは来年度のプログラム策定を始動させたばかりだ。次年度の課題には「大学に対するコネクションをもっと強くし、オムロングループ全体の取り組みとしてPRを強化すること」を挙げている。

オムロン株式会社 事業インキュベーショングループの今林知柔さんは、「メンターに参加したメンバーが中心になり、社内にクリエイトラボをつくる動きもあり、社内発の新規事業にも注力していきたい」と語る。

「最近はオムロンベンチャーズの取り組みを通じて“新しいことにチャレンジしている”という期待感が社内でも醸成されているように感じます。事業立ち上げの成功例を出すなど、うまく今のサイクルが回りだせば、また新たに手を上げて参加したいと言ってくれる人もでてくるでしょう。コトチャレンジ参加者へのサポートをより強化させるためにも、社内のアサインに力を入れ、リソースの拡大も目指したいです」(今林さん)

私だけでなく、ほかの社員にも「事業を通じて社会課題を解決する」という考え方が浸透してきているように感じます(今林さん)
私だけでなく、ほかの社員にも「事業を通じて社会課題を解決する」という考え方が浸透してきているように感じます(今林さん)

「コトチャレンジ」で得た若い起業家との接点は、彼らをサポートした社員に、ほどよい刺激になったことが伺える。

ものづくりのエコシステム形成への挑戦は続く

あらためて、小澤社長にメーカー企業とベンチャーがタッグを組んで新規事業創出に挑んでいくことのメリットを伺った。

「新しい領域のビジネスは、誰も要件を言ってくれないという点でたしかに難しさがあります。そのため、新規事業をオムロンのような大きな企業の社内プロセスのなかに乗せるのは、なかなか難しい面がある。『本当にその市場で通用するのか』なんて意見が頻出することもあるでしょう。だからこそ、チャレンジスピリットのあるベンチャーというパートナーの力に期待しているのです」

では、オムロンベンチャーズとしての今後の展望はどのように考えているのか。

「CVCとしての難しさは、投資対象になるかどうか、その判断のバランスです。1年目の活動として、自分たちが何をやりたいかを決めるところまではできましたが、どこまで自分たちに『投資するつもり』があったら投資するのか、社内でも議論が分かれてしまう。多産の目標からしたらまだまだ届いていない状態だと感じており、まずはそうした投資ポリシーを確立させていきたい」(小澤社長)

オムロンが発信する、ハードウェア系ベンチャー育成のエコシステムづくり。多産に向けては課題もあるが、日本のMakerシーンは今、たしかに大きな変革期を迎えようとしている。

オムロンの歴史と技術の軌跡が展示されている見学施設「コミュニケーションプラザ」。事業を通じた社会貢献、社会的課題の解決への取り組みはこれからも続く
オムロンの歴史と技術の軌跡が展示されている見学施設「コミュニケーションプラザ」。
事業を通じた社会貢献、社会的課題の解決への取り組みはこれからも続く

ハードウェア系ベンチャー育成のエコシステムで、メーカー企業が担うべき役割とは ──オムロンベンチャーズ「オムロン コトチャレンジ」(前編)

関連リンク
オムロン株式会社
オムロンベンチャーズ株式会社
コトチャレンジ
Maker Faire Tokyo2015
Waiston Chobit Healthcare


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