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誰もが参加できる “遊び場”づくりのヒント「デジタルFab」 ──ワークショップコレクション11 レポート(前編)

2015年10月16日



誰もが参加できる “遊び場”づくりのヒント「デジタルFab」 ──ワークショップコレクション11 レポート(前編) | あしたのコミュニティーラボ
2015年8月29日と30日、東京・渋谷の取り壊し予定のオフィスビルを舞台に、こどものためのワークショップ博覧会「ワークショップコレクション11 in シブヤ」(以下ワーコレ)が開催された。“遊びと学びのヒミツ基地”を標榜し、2002年から活動を行う特定非営利活動法人CANVAS。CANVASが2004年から行ってきたこのイベントは、子どもにどんな新しい世界を見せるか、子どもの創造性をどう育むのか、さまざまな見本が集まる場となっている。今回はその会場に潜入、なかでも幅広い年代が参加しはじめている“デジタルファブリケーション”と、2020年に向けて注目が集まる“スポーツ”の2領域で新たな場づくりをする活動を前後編にわたって紹介する。

ワークショップは未来へのステップ

「ワークショップを1つの手法として、子どもたちに新しい表現方法や豊かなコミュニケーション能力を育んでほしい」
◯△□のスタンプだけで、どこまで絵が描けるか、挑戦中
◯△□のスタンプだけで、どこまで絵が描けるか、挑戦中

NPO法人CANVAS ワークショップコレクション運営事務局の古畑理枝さんは、CANVASのミッションをこう説明する。CANVASは2002年11月の設立以来、子どものためのワークショップの普及・啓発をするとともに、全国からワークショッププレイヤーを集め、子どもたちの創造的な学びの場をつくるハブの役割を担ってきた。

「ワークショップのプレイヤーは日本国中に点在していて、企業、大学、研究者、サークル活動、アトリエ経営者、美術教師など、メンバーも千差万別です」

そんなワークショッププレイヤーが一同に会し、地域全体が巨大な遊び場に変わるイベントが「ワークショップコレクション」(以下ワーコレ)だ。2004年の第1回は出展ワークショップが13種類、参加した子どもは500名だったが、回を重ねるごとに参加プレイヤーの数も会場規模も拡大。2013年の第9回にはおよそ100種類のワークショップが集まり、来場者数も10万人を数えるまでに急増した。
NPO法人CANVAS ワークショップコレクション運営事務局 古畑理枝さん
NPO法人CANVAS ワークショップコレクション運営事務局 古畑理枝さん

今年の広がりを、古畑さんは「第11回となる今回は、今までで最大の約150のワークショップが集まりました。最近のワークショップへの注目の高さを表した数字でもありますが、CANVASがこれほど多くのワークショッププレイヤーが参加する場をつくっていることに意義を感じます」と話してくれた。

年齢別にアレンジできるのがデジタルなものづくりの利点

ワークショップコレクション11、8つの目玉のうちの1つが「Making&Codingエリア」。昨年同イベントで紹介したプログラミング学習普及プロジェクト「peg(programming education gathering)」の活動とコラボレーションした特別ブースが今年も登場した。
電子タグ「MESH」で日用品が電気仕掛けのおもちゃに変身!
電子タグ「MESH」で日用品が電気仕掛けのおもちゃに変身!

アプリ上で簡単にプログラミングできるロボットをはじめ、設計したミニカーをすぐに3Dプリンタで出力したり、電子タグを利用した電子工作であらゆるものを電子化したりするブースが並ぶなどその場で楽しめる展示のほか、ロボットとのじゃんけん大会や電子楽器を使ったプロの音楽家とのワークショップなどが行われた。つくって遊べるイベントに子どもたちは心躍らせていた。

「Making&Codingエリア」のプロデュースメンバーであるCANVAS事務局の赤松裕子さん、土橋遊さんの両名に話を伺った。

「今年は昨年と比べ、さらにプログラミングや電子工作がより一般的になってきたのを肌で感じていました。それを体現できないかと今年のブースを企画しました。実際、大人のなかでもデジタルなものづくりが流行しはじめているなかだったので、出展者や親御さんが楽しんでいるのが印象的でしたし、だからこそ、子どもたちも自由に入ってくる。この2日間、そんな場が築けたと思います。出展されたものが場の雰囲気に合わせて途中でアレンジされ、子どもたちと一緒につくり上げることができた展示でした」(赤松さん)
写真左からNPO法人CANVAS 土橋遊さん 赤松裕子さん
写真左からNPO法人CANVAS 土橋遊さん 赤松裕子さん

「Making&Codingエリア」のワークショップは、比較的対象年齢を高く設定していた。しかし土橋さんが出展者にこの2日間で話題を振ると、意外にも、小学校の低学年の子どもたち、さらには幼稚園の年少組の子どもたちの参加が多かったという。
段ボールでつくったドームのなかにLEDをつけると、プラネタリウムのような楽しみ方ができる
段ボールでつくったドームのなかにLEDをつけると、プラネタリウムのような楽しみ方ができる

「それができるのも、プログラミングやデジタルものつくりの利点だと思います。たとえば、ロボットをプログラミングさせるのは、少々レベルが高い。でも事前に大人がアレンジしハードルを下げておくことで、低年齢のお子さんでも取り扱えるようになります。デジタルものつくりには、対象によってアプローチを変えられるという利点があるのだとあらためて気づきました」(土橋さん)

きらめくLEDに誰もが目を輝かせる

赤松さん、土橋さんは、CANVASとしてプログラミング学習普及プロジェクト 「PEG」の活動を続けていくなかで、プログラミングでゲームやアニメーション をつくる、などのコンピューターのなかの世界だけではないと思うようになった。センサー等を活用した電子工作、ロボットやIoTをテーマとしたものづくりの体験等、コンピューターの 外の世界を交えた体験もより多くのこどもたちに伝えていきたい──。そう考えて企画されたのが「Making&Codingエリア」だ。

それを象徴する参加プレイヤーが「乙女電芸部」。合同会社techika代表の矢島佳澄さんが、当時在籍していた慶應義塾大学 環境情報学部のメンバーと結成した。「研究や論文とは別に、“女子の欲望”を満たす活動を電子工作の力で実現したいと、部活感覚でこの活動をはじめました」と矢島さん。現在も「手芸×電子工作」をテーマに活動を継続している。

乙女電芸部による「〈自分だけの光る宝石を作ろう!〉オリジナルレジンLEDづくり」は、行列に制限ができるほどの大盛況ぶりだった。
簡単に固まるUVレジンを使って左上のようなブレスレットをつくる。特に女の子が夢中になっていた
簡単に固まるUVレジンを使って左上のようなブレスレットをつくる。特に女の子が夢中になっていた

ワークショップの内容は、わずか5~10分でできる非常にシンプルなもの。あらかじめ選んだ、宝石やハートの“型”に、UVライトで固まる液状のレジン(樹脂)を流し込み、ビーズやスパンコールなどデコレーションパーツを投入。そこにLEDを挿し込み、UVライトを当ててレジンを固め、最後に電池を入れてLEDを光らせたら完成だ。子どもたちは、完成した光るバッジやブレスレットをうれしそうに両親に見せびらかしていた。

デジタルファブリケーションのハードルを下げるのは「プリミティブ」

乙女電芸部では、これまで「光るアクセサリー」のほか、「なでなで帽子」「セルフ回転寿司」など、ユニークな作品を発表している。そうした作品をメーカー系のイベントに出展しているうちに多くの反応を得られ、つくり方を教えるワークショップもはじめるようになった。現在は百貨店のイベントや、高校の文化祭からもお呼びがかかるという。
合同会社techika 代表/乙女電芸部 矢島佳澄さん。 落書き自由だった会場を生かし、壁に大きなイラストを描いた
合同会社techika 代表/乙女電芸部 矢島佳澄さん。
落書き自由だった会場を生かし、壁に大きなイラストを描いた

「ワークショップコレクション」の子どもたちの反応は、またひと味違ったものになったようだ。

「LEDの端子と電池のプラスマイナスの方向が合っていないとLEDは光らないんです。短い時間のなかで、それだけ子どもたちに説明し、電子工作を楽しんでもらいました。デジタルファブリケーションの世界ではパソコンを使うことがメインになってしまいがち。ですが、私たちはこうした電子工作=アナログなものづくりも大切にしたいんです。難しいプログラミングではない、プリミティブ(素朴)なものづくりだからこそ、子どもは参加もしやすく、喜んでもらえる。そう再確認できました」

大人が楽しむ“ファブリケーション”の文脈が注目されて久しいが、それが徐々に幅広い年齢層に受け入れられている状況がそこには広がっていた。大人も子どもも、多様な背景をもった人たちが一緒に楽しめるワークショップとは何か。後編では、それを“スポーツ”の文脈で広げようとしているブースを訪問した。

テクノロジーで“人と人の枠”を超える新たなスポーツ ──ワークショップコレクション11 レポート(後編)

関連リンク
NPO法人CANVAS
ワークショップコレクション
乙女電芸部


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