オープンイノベーションを活性化する“5つ”の条件とは――HAB-YU、未来を共創する場づくりに向けて(後編)

2015年12月15日



オープンイノベーションを活性化する“5つ”の条件とは――HAB-YU、未来を共創する場づくりに向けて(後編) | あしたのコミュニティーラボ
「場づくり」「アイデアを着実に生み出すツール」「それをまとめ上げる人材」など、オープンイノベーション活動を継続するにあたって、必要となる項目はどの程度あるのだろうか。今回は、富士通デザインが行う研究プロジェクトであるHAB-YU、さらに、そのリアルな場であるHAB-YU platformを通じて、企業がオープンイノベーション活動を行うために必要なしくみや要素について伺う。全2回の後編。

潜在的な課題を掴み、未来を描き出すプロセスから見えてくるもの――HAB-YU、未来を共創する“場”づくりに向けて(前編)

人をつなぎ、エコシステムを生み出す「場」

未来思考でバックキャスティング(理想から、それを達成するための施策をブレイクダウンしていくこと)を行いながら将来ありたい姿としてのビジョンを描き、想定される利用シーンと、それを可能にするソリューションを明らかにし、具体的な施策へと落とし込んでいく。

そこで利用されるのが、ワークショップやイベントなど共創活動の実践の場HAB-YU platformだ。富士通デザインのチーフデザインディレクター・平野隆さん(ソフトウェア&サービスデザイン事業部)によれば「この場のコンセプトは3つ。お客さまとの共創・企業内の共創・都市と地域をつなぐ共創、です」。前編でユナイテッドアローズとのFutureShopProjectは、まさに顧客との共創の典型事例だ。

富士通デザイン株式会社 チーフデザインディレクター 平野隆さん富士通デザイン株式会社 チーフデザインディレクター 平野隆さん

「地産外商」をテーマに高知県の魅力を発掘し発信する「高知家学講座」や、社内のIoT(Internet of Things)ビジョンを富士通のグループ企業や部門間の横断により策定するなど、都市と地域を結ぶ共創、企業内の共創でもHAB-YU platformはさまざまな場を提供してきた。「予想外だったのは、事業部門を横断した共創の機会としての社内利用がとても多いこと。人材育成や販売戦略などのテーマでも、デザイン思考的なアプローチでアウトプットを出そうとするニーズが増えています」と平野さん。

開設から1年で350件以上にのぼるイベントを開催。1日複数件の利用があり、ほぼ毎日、稼働している。

テーブルの脚にもなるツールボックス。なかにはアイデア創発ツールや、それをアウトプットするために必要なツールが詰まっているテーブルの脚にもなるツールボックス。なかにはアイデア創発ツールや、それをアウトプットするために必要なツールが詰まっている

使う目的に応じ、机や椅子として自由に組み合わせや配置を変えられるオリジナルデザインのボックス型什器。バックヤードに収納すれば空間を広く使うこともできる。机をちゃぶ台のように中心に置き、あぐらをかいて車座になり、公民館での集会のようなスタイルで実施したワークショップもあった。やりたいことに合わせて、どのようにもしつらえを変えられるので使い勝手が良い。

富士通デザイン チーフデザイナー 高嶋大介さん富士通デザイン チーフデザイナー 高嶋大介さん

とはいえ、そうした物理的な空間としての機能よりも重要なのは、場としての機能だ。富士通デザインのチーフデザイナー高嶋大介さんによれば、HAB-YU platformができたことで「場が人をつなぎはじめた」という。

「今まで出会えなかった企業とパートナーになれたり、アクセラレーターやNPOと新たな関わりを持てるなど、この1年間で当初の想定になかった広がりが出ています。こうしたつながりを活かせれば、新たなビジネスモデルのエコサイクルを生み出せるプレーヤーが揃うはず。六本木の地域性も大切です。隣接するアーク森ビルに来年4月にオープンするデジタルファブリケーション工房“TechShop Tokyo” とのプログラム連携で、共創の場としての可能性はさらに広がるでしょう」

「アイデア・ノウハウカード」で成果を可視化

HAB-YUをつくった真の目的は「そこで出たアウトプットを蓄積し、お客さまのニーズやウォンツを取り込んで、マーケティングや製品開発やデザインなど、さまざまな事業活動に活かす」(平野さん)ことにほかならない。

「アイデア・ノウハウカード」は、プロジェクトを遂行するにつれてどんどん増えていっている「アイデア・ノウハウカード」は、プロジェクトを遂行するにつれてどんどん増えていっている

そのしくみを回すために蓄積し続けているツールが「アイデア・ノウハウカード」だ。これはコンサルティング事例やワークショップでのアウトプットを集積し、ニーズごとのアイデアをカード化したもので、開設当初は100枚準備していたものが、現在は300~400枚になっている。

カードの裏面には「Context:使える場面、状況は?」「Essence:ポイントは?」「関連するカード」が記載されている。たとえば「所有からシェアへ」というキーワードのカードを見ると次のような具合だ。

Context「環境を装って行動する」
Essence「個人や企業が所有しているモノをオンライン化しシェアすることで家やモノを所有することなく、あらゆる環境を入手する」
関連カード「機器が自ら不満をつぶやく」「オープンメンテナンス」等々——

壁にカードを写し、その並びを編集するという技術も、今後活用が進む壁にカードを写し、その並びを編集するという技術も、今後活用が進む

「このカードはこれから500枚、1,000枚と増え続けます。そのため、データベース化しワークショップで使えるようにします。たとえば壁全面にアイデア・ノウハウカードが川のように流れて映し出され、それをチョイスしてタブレットやスマホに取り込めるなど、活用しやすいユーザーインターフェースをさまざまに工夫して開発したい。思考をドライブできるツールになるはず」と平野さんは話している。

共創プラットフォームが活性化するための5カ条とは?

HAB-YU platformのようなオープンイノベーション活動を行う場が活性化する条件として、富士通デザインでは次の5つの要素が欠かせないと仮説を立てている。

1.“モノ” ではなく “コト” づくりのできる人材をファシリテーターとして、将来のビジョンや持続性の高い価値づくりに取り組む「メソッド」。

2.先のアイデア・ノウハウカードのような、限られた時間内で効率よく質が高い、なおかつ発散―収束の各フェーズに応じて多種多様な発想を促せる「ツール」。

3.ワークショップ参加者のコラボレーションを進めるための、アプリケーションやクラウド環境などのICTに代表される「テクノロジー」。

4.あらかじめ決め込まず、用途に応じてどのようにも変えられる余白を大切にした、イノベーションと親和性の高いオープンな設えである「プレイス」。

5.企業、自治体、NPOなど多様なプレーヤーとネットワークを構築し、ゆるやかなつながりのなかでアイデアを形にしていく「パートナーシップ」。

ワークショップ用の便利な道具やスマートデバイスなどが完備したどんなに立派な会場が用意されていても、アイデアの発散から収束を促し、参加者からアウトプットを引き出せるデザイナーやファシリテーター、その場への期待をもって集まる多様なプレーヤーがいなければ、そこはただの「貸しスペース」にすぎない。HAB-YU platformが盛況なのは、先の5条件を満たしているからだろう。

富士通デザイン HAB-YU運営チーム富士通デザイン HAB-YU運営チーム

多様なプレーヤーとの共創によって、どれだけの成果が上がったのか。それをどのような尺度で測るのがふさわしいのか。難しい課題だが「今後1年間で叩き台でもいいからKPI(重要業績評価指標)自体を作成することが目標」(平野さん)という。

それと同時に、ここで開催されるハッカソンやアイデアソンのアウトプットをどう事業化していくか、その出口を探ることも今後の課題として浮かび上がる。自社の新製品・新サービスとしてリリースするのか、他社とのアライアンスやジョイントベンチャーの道筋を探るのか、外部のインキュベーターと連携した新規事業として別会社を立ち上げるのか。

HAB-YU platformは、共創の場としての真価をいよいよ発揮しようとしている。

潜在的な課題を掴み、未来を描き出すプロセスから見えてくるもの――HAB-YU、未来を共創する場づくりに向けて(前編)

【関連リンク】
HAB-YU
地域から起こるこれからのワークライフスタイル探求プロジェクト(あしたのコミュニティーラボ内)


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