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「働きがいのある会社」にするために僕が実施した3つのカイゼン:駒崎弘樹インタビュー(下)

2012年11月26日



「働きがいのある会社」にするために僕が実施した3つのカイゼン:駒崎弘樹インタビュー(下) | あしたのコミュニティーラボ
「働きがいのある会社」ランキング(*)の中小企業部門で8位になったNPO法人フローレンス。代表理事の駒崎弘樹さんは、「イノベーションなくして日本の発展はない」と力説する。企業が社会に対してできるアプローチを、社員の働き方という身近なテーマから考えた。
(写真上:仮装姿で働く社員のみなさんとNPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事。ハロウィーン恒例の社内行事)

インタビュー前編はこちらから
「働きがいのある会社」にするために僕が実施した3つの「カイゼン」(上)


カイゼンその2:コミュニケーションのしくみをつくる


部下に仕事を任せる

————管理職が率先して定時に帰らないと全員に浸透しないと思うのですが、そこはどう徹底したんですか。

駒崎 マネージャーも忙しいのが大好きな人たちだったんで、「君たちがいなくても回るチームをつくることが君たちに求められていることなんだ」と口を酸っぱくして、しつこく、しつこく言いました。

よくよく聞いてみると、やっぱり「ヘッドギア」がはまっているんですよ。忙しいのはいいことで、自分は頼られている。そういう思い込みを「それって本当に君が判断しなきゃいけないんだっけ?」と、一つひとつ解きほぐしていく。むしろ人間臭い、感情的でセラピー的なアプローチが必要でした。

————仕事を任せるのはスタッフを育てることにもなりますしね。

駒崎 そうそう。自分の仕事を渡すということは育成にもつながるので、結局チームとしてはすごくいいことなんですよ。

マリー・アントワネットの扮装でインタビューに答える駒崎弘樹さん

テレワークを取り入れる

————テレワーク(在宅勤務)も導入したようですね。

駒崎 今でもみんな週に1回くらいは在宅勤務です。最初はすごく生産性が上がったんで、会社に来なくていいよ、くらいの勢いでした。ところが今度は逆にコミュニケーション不足で寂しくなってしまい、生産性が下がった。まあ僕らの組織だと週1〜2回が妥当なところですね。会社の風土やしくみにもよるので、在宅勤務は最適頻度を見定めたほうがいいと思います。

活発なコミュニケーションをつくり出す

————そうしたいろいろな試みの結果、生産性も売上も上がったと。

駒崎 業績は伸びて残業が減りました。残業時間は今、1人平均1日15分程度です。人数もいないしお金もない組織でも、やればできます。ただし、冒頭にもお話ししたように、生産性が上がりすぎて今度はマシーンみたいになり、コミュニケーションがすれ違ったりしたので、楽しい要素も入れるようにしました。

たとえば毎朝の朝礼。仕事の連絡事項だけじゃなくて楽しくやるんです。「皆さん何かありますか?」「僕、誕生日なんです」「おめでとう!」みたいに、プライベートなことも共有し合うフランクな雰囲気で。あとは全員で毎日15分間のお掃除タイム。部署を超えて「これ捨てていいんだっけ?」といった話をするので、コミュニケーションが生まれるし、机の上が片づいて生産性も上がるんです。ハロウィーンのようなイベントもその一環ですね。

————働き方のカイゼンにICTは役立ちましたか。

駒崎 もはや欠かせない基盤ですね。僕ら、ICTマニアなんで使い倒していますよ。メールで済むなら会議はいらないし、グループウェアで予定管理するし、東日本大震災の被災地支援もしているのですが、そういう場合はスカイプでミーティングしたり。ICTの進化は早いので、活用法を考えるのが楽しいんです。

本業の病児保育でも、わが社では親が必要なときにアクセスできる24時間ネット予約システムを取り入れています。クラウドのネットワークシステムと連動していて、決済まで行えるしくみです。少しずつカスタマイズしながらICTを使っていますね。


カイゼンその3:人材を地域・社会へ還元する


実のお子さんをあやす駒崎さん。まずは自分の働き方から変えていった
提供=NPO法人フローレンス

行動から変える

————ワークライフバランスを保てる働き方が大切だとわかってはいても、なかなか実行できない会社が多いのではないかと思うのですが‥‥‥。

駒崎 育児と仕事が両立できなくて女性が働きづらいとか、そういう前近代的で多様性をマネジメントできない会社は、ハッキリ言ってこれから時代に食い潰されるだけです。会社がいくら潰れてもまったくかまわないのですが、働いている人たちが潰されてはいけない。昔は「会社=コミュニティ」で、そのために家族や自分を犠牲にするのは当たり前でした。でも今は「会社=乗り物」に過ぎませんから、フェイズに合わせて最適な乗り物に乗り換えるのが当然です。

働き方の未来を考えるうえでは、会社という組織がこれまでのように全人格を預ける対象ではない、ということを押さえないと語りきれません。

————これから管理職になっていく世代としては、どんなふうに会社の中を変えていけばいいのでしょう。

駒崎 自らロールモデルになることです。「お疲れさま、お先に」と帰る。行動から先に変えるんです。意識を変えよう、とよく言われますが、それは無理。行動を変えたら意識はついてくる。僕もそうでした。心は後からついてきます。上司が行動を変えれば、その行動は必ず部下にも伝播しますからね。

イノベーティブな仕事は、彩り豊かな生活から

————日本がグローバル経済の中で生き残るにはイノベーションしかないと思うのですが、新しい価値はきっとそういう働き方から生まれるのでしょうね。

駒崎 おっしゃるとおりです。これからの知識経済社会における働き方は「時間×努力」ではありません。イノベーションによって勝負する。イノベーションは生活の彩りから生まれます。家族、友人、異業種の人とのコミュニケーション、ふだん見たことがない世界との融合。新しいアイデアはそこから生まれます。だとするなら、1日12時間も会社にいるようなモノクロな生活から抜け出さなければなりません。2枚目、3枚目の名刺を持って自分の人生を豊かにしていくことから、イノベーティブな仕事も生まれるんです。

僕の友人がいま「イキメン」というのを流行らせようとしています。地域に出て行く男性。イクメンの次はイキメンになるべし、と。確かにそうで、男性の家庭参画が高まると、今度はPTAに出ようとか、地域とかかわることになる。

会社にロックインされている人材資源を解放して地域に還流していく。そういう流れをつくることで、個人も社会も豊かに回り出すのだと思います。

駒崎弘樹(こまざき・ひろき)

1979年東京都生まれ。NPO法人フローレンス代表理事。
慶應義塾大学総合政策学部卒業後、2004年にNPO法人フローレンスを設立。翌年、全国初の訪問型・共済型病児保育サービスを開始。10年から待機児童問題解決のための小規模保育サービス「おうち保育園」を開始している。これまで内閣府「新しい公共」専門調査会推進委員など、政府の委員などを歴任。一般財団法人日本病児保育協会理事長、特定非営利活動法人全国小規模保育協議会理事長も務める。受賞歴多数。著書に『「社会を変える」を仕事にする』(ちくま新書)『働き方革命』(ちくま文庫)などがある。

NPO法人フローレンス ホームページ (http://www.florence.or.jp/
(財)日本病児保育協会(http://www.sickchild-care.jp
(特非)全国小規模保育協議会フォーラム開催について(http://www.florence.or.jp/news/2012/10/post361.php

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