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働くってどういうこと? 「コミュニケーションから理想の働き方を考える」イベントレポート(下)

2012年12月27日



働くってどういうこと? 「コミュニケーションから理想の働き方を考える」イベントレポート(下) | あしたのコミュニティーラボ
2012年12月14日(金)、東京・渋谷にて開催された、これからの働き方を考えるトークセッションイベント「コミュニケーションから理想の働き方を考える」。プログラム後半ではいよいよ「多様化する働き方はいかに実現できるか」をテーマとして、具体的に考えていきます。登壇者のお話やワークショップでの対話を受けて、来場者が感じた想いとは。当日の模様を詳しくレポートします。

インタビュー前篇はこちらから

社内SNSで多様性を浮かび上がらせる

休憩を挟み、今度は後半のテーマである「働き方の多様化はいかに実現可能か」について考えていきます。まず、前半からの議論の橋渡しとして、「多様な働き方を補完するうえで、具体的な手段についての話を避けることはできないと思う」というお話が西村さんからありました。そこで、働き方を変える一事例として、本メディアを運営する富士通株式会社から小古善晴さんが登壇し、ICTシステムを使って社内で取り組もうとしている新しい構想についての話を始めました。

取り組みの目的は、「時間と場所に制約されない新しいワークスタイルの確立」。従来、働き方を変えようとしても、働く場は「会社の中」だけだったそうです。しかし、Wi-Fi環境が整い、モバイル端末も進化している現在、「会社の外」を考えなくてはいけないのではないか。それを実感したのが、東日本大震災でした。会社に行かないと仕事ができないという状況を目のあたりにして、新しいワークスタイルづくりに着手したそうです。

まず、社内のコミュニケーション基盤を見直すと、意外な落とし穴があることに気づきました。それはメール。便利なツールであるがゆえに、メールを送った時点でコミュニケーションが完結したと思ってしまう。一本電話をかければその場で済んだ用事なのに、タイムロスが生じる。これは思い当たるフシがある人も多いのではないでしょうか。

さらには、メール、ビデオ会議、ポータル、掲示板、文書管理といったツールがバラバラに存在していたため、全体として非常に重たく、使いづらいシステムになっていました。これらをすべてつなげ、入り口を一つにして使い勝手をよくする。それこそが、小古さんの取り組みでした。以来、スマートデバイスなどを使った社外からのリモートアクセスがスムーズになり、時間と場所に制約されないワークスタイルへの一歩を踏み出せた、と小古さんは語ります。

さらに、話はこれからの試みへと続いていきます。個人専用のワークスペースであり、社内SNSの起点となる「マイサイト」にプロフィールを公開する。個人の創造性が組織全体のノウハウ・ナレッジとして還元され、グループ全体の創造力・知識レベルが底上げされる。こうした情報共有のしくみを構築し、従来の「部門依存」型の働き方を変えるのが新しい構想の狙いだと小古さんは話します。齋藤さんが指摘したような、シナジー効果を阻害する「営業」対「開発」といった部門間の壁を、社内SNSで取り払いたい。いうなれば、社内SNSを機能させることで個人の創造性を拾い上げ、もともと存在している多様性が姿を現しやすい状況にしていく。そんな未来像を描いているそうです。

社会とつながる非同質的なワーカーチーム

続く齋藤さんは、多様な働き方を実現するワークスペースの海外事例を紹介しました。キーワードは「チーム」。多様なバックグラウンドを持つ人たちが刺激を与え合い、協働を通してクリエイティブなプロセスを生み、連続的にイノベーションを実現する。その非同質的なプロジェクトチームが、社外のパートナーや先端顧客とソーシャルメディアでつながりながら、新しいビジネスモデルをつくる。こうした働き方はどんなワークスペースを必要とするのでしょう。

シリコンバレーのEvernote社のライブ感覚のあるオフィス。上下階をつなぐ階段が広場の役割をして全社員ミーティングが行われます。壁をアイデアウォールにして自由に書き込む。週に一度、他部門のミーティングに出ることがルール化されているなど、「コミュニケーションの温度感」を大切にしているワークスペースです。ウォーキングマシンにテーブルが付いている「ウォーキングデスク」も好評で、歩きながら仕事をすることで集中できる人もいます。

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Evernote社のオフィス(「WORKSIGHT」より転載)

Skype社ではエンジニアが新しいことにチャレンジできる環境を重視しているようです。キッチン周辺のコラボレーションサロン。ホワイトボードなど持ち運びできるブレストツール。集中とコラボレーションのゾーン切り替え。SNSを空間化したような、個人とチームの心地よい関係を保てる大部屋感覚のオフィス、と齋藤さんは印象を話します。

HOKという建築設計会社のロンドンオフィスでは、異分野プロフェッショナルによるチームのためのスペースを重視しています。世界中のクライアントとパートナーが集合し、国際コンペを勝ち抜くプロジェクトのハブ機能となるオフィスづくりをしています。顧客を招いたイベントを社員が企画運営するなど、創造的で見えにくい仕事を可視化して社員個々の隠れた才能を発見し合う場づくりも特徴です。

こうした事例を参考にしてコクヨでは、クリエイターと企業がフラットに協働するスタジオ、複数企業と行政の知の交差点、異分野の個人同士が交流できるラウンジといった、多様性から生まれるクリエイティビティの場をつくり、実践しています。

もっとゆるやかに、もっとしなやなかに

江口さんによれば、最近日本でも「コワーキングスペース」が増えつつあります。渋谷「co-ba」、西麻布「NOMAD NEW’S BASE」、下北沢「オープンソースCafe」、関内「mass×mass」――。シームレスな空間や、雑多な感じの居心地のよさが、コミュニケーションを促進し新しいアイデアを生みます。

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写真左から西麻布「NOMAD NEW’S BASE」、下北沢「オープンソースCafe」
(提供=江口晋太朗さん)

ただし、江口さんは物理的な「スペース」にこだわる必要はないと考えています。ポイントは、コワーキングの話にありがちなスペース論ではなく、ゆるいつながりのコミュニティーと、いろんな人が滞留しやすい「場」づくり。そこに多様さや柔軟さを取り込む余地が生まれます。

分野・業種・部門を超えてどうフラットに混じり合えるか。多様性を持つ人たちの経験、知識、アイデアなどを受け入れ、共有するしくみをつくることは、つまり自分自身の人とのかかわり方をデザインすることにほかなりません。自分と違った思想や考え方を持つ人たちとかかわり、そこから新しい発想や視点に気づくことが大切です。

働き方を考えるという視点においては、個人や組織といったこれまでの二項対立の考えから脱却し、個人も組織も、といった柔軟な考えを持つべきだと江口さんは訴えます。SNSなどによって企業の壁を超えて個人がつながれるようになった現在、個人の趣味や意識は企業に反映される可能性がある。だからこそ、もっとゆるやかに、もっとしなやかに、という意識を持ち、日々を過ごすことが必要ではないか。

日々のあらゆる生活から新しい発想を得ること。つまりそれは、働くことだけを一様に考えるのではありません。江口さんは、働くことを生きることと捉え、自分自身がどのように生きたいか、そしてそのためにどういった働く環境をつくり出すかを各々が考えていくことがこれからの時代に必要ではないか、とプレゼンテーションを結びました。

それを受けて西村さんは、次のような問題提起をしました。「そうはいっても、個人と法人は拠って立つ基盤が違うので、江口さんのその考え方は企業の中で現実味を持つのだろうか」。

企業で働く小古さんは、生きるように働くということはあり得るし、やっていかなければいけない、と言います。セクショナリズムは組織の論理で、それを打ち破るには個人だろうと企業だろうと変わらないという考えを持つべきだ、というわけです。一方、齋藤さんは、日本の会社には長時間の儀式的な会議などのムダがまだ残っていて、生産性の観点からも抜本的な働き方の見直しが必要である場合が多いことを指摘しました。

目的を達成したら組み替えられる組織

トークセッションを通じて、登壇者のみなさんはそれぞれ感じたことを次のように発表しました。

西村さん 「日本企業には『組織の自己保存のための仕事』が多いのかもしれない。そのために多様性を発揮しにくくなっている状態があるのではないか、と今日の話を聞いてあらためて思った。目的を達成するたびに組織を一回ほどいて、また新しく組み替えるような働き方ができればよいのだけれど」

小古さん 「企業そのものを組み替えるというのは難しいけれど、『部』や『課』の中で目的がぼやけてしまうので、新しい組織が生まれないという現実はあると思う。欧米で進んでいるプロジェクト制への対応ができれば、企業活動もリフレッシュできるのではないか」

齋藤さん 「『非同質的なチーム』がクリエイティブには不可欠。これまでのような組織対組織だと固い関係にしかなれず、提案を採用する・しないというだけの付き合いになってしまう。個人ベースだとおもしろい人はたくさんいるのだから、企業人だろうがフリーランスだろうが『意思をもって何事かを成し遂げたい』という外部の人とどれだけつながれるかがカギだと思う」

江口さん 「企業への就職以外にも、起業やフリーランスなど多様な選択肢が個人としてあり得る。そのなかで自分がどう生きたいのかをしっかり考えることが大事。企業は企業で、自社の業務が社会に対してどのようなインパクトを与え得るのか、そして社員が生き生きと働ける場をつくり、そのエネルギーを会社に還元するしくみをどうつくるかを問い直す必要がある」

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コミュニケーションをテーマとしてスタートした本イベントは、議論が深まるにつれて、チームという新しい単位での働き方、もう一方で働くことの本質論へとシフトしていきました。

4回のミニワークショップでディスカッション

今回のトークセッションでは、各プレゼンテーションが終わる都度(計4回)、適宜メンバーを組み替えて数分間のミニワークショップが行われました。齋藤さんのいう「非同質のチーム」が即席ながらできあがったわけです。参加者同士、自由に意見を交換し合い、理解を深め、情報を共有している姿が目立ちました。トークセッション終了後は、閉場まで時間に余裕のある自由散会だったということもあり、あちこちで話の輪が咲きました。繰り返しになりますが、あらためて、新しい働き方への関心の高さを浮き彫りにした光景といえるでしょう。

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参加者アンケートには、さまざまな回答が残されていたので、少しご紹介しましょう。たとえば、「新しい働き方には不向きな職種もある」「工場のおじさんやスーパーのパートのおばさんは、今日の話をどう受け止めればよいのか」といった声は、別次元からこの問題を考えるきっかけを提供してくれそうです。また、全体的には「働き方以前に、自分が果たしたいことや目的が何なのかを先に考えないといけないと感じた。その目的にはどういう働き方が必要なのか、を決めればよいのではないか」といった本質を見据えた前向きな意見が多く見られました。登壇者のさまざまな問題提起が、その場にいた一人ひとりに新しい問いを引き起こし、明日からの働き方を考えるヒントを与えてくれたようです。

「あしたのコミュニティーラボ」では、今後もさまざまな特集をテーマとするイベントを開催していきますので、これからもご注目ください!

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