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地域をプラットフォーム化し、ポテンシャルを形にしていく試み──官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(2)

2016年11月25日



地域をプラットフォーム化し、ポテンシャルを形にしていく試み──官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(2) | あしたのコミュニティーラボ
「日本の明日が見えるまち」として、人口流出などさまざまな課題を抱える横須賀市。そんな状況を逆手にとって地域課題を解決しようと、チャレンジ精神旺盛なスタートアップICT企業の誘致・集積を図る「ヨコスカバレー」構想が盛り上がっている。吉田市長に地域の課題を聞いた前編に続き、中編では、「企業からみた横須賀の可能性」をテーマに、旧知の仲の市長と構想を練った地元のキーマン、タイムカプセル株式会社の相澤謙一郎さんと、外からの立場で地域の企業やコミュニティーと連携の可能性を探る株式会社ビーマップの中井大さんに話を聞いた。全3編の中編。

吉田雄人市長に聞く、「日本の明日が見えるまち」の未来──官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(1)
地域活性に興味を持つ若者が、なぜ横須賀に惹かれるのか?──官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(3)

「転出超過自治体ワーストワン」で奮起

横須賀中央駅のすぐ裏手。丘陵が侵食されてできた谷戸にへばりつくようにして民家が集積している。辛うじて人がすれ違える急勾配な細道と階段が迷路のように入り組んで自動車は入れない。高齢になると過酷な住環境なので移転する人が多く廃屋が目立つ。横須賀でもとりわけ空き家対策が必要な地域だ。
タイムカプセル株式会社の谷戸オフィスの様子(写真提供:タイムカプセル株式会社)
タイムカプセル株式会社の谷戸オフィスの様子(写真提供:タイムカプセル株式会社)
ここの一軒家をリノベーションして2014年からオフィスを構えているのがタイムカプセル株式会社代表取締役の相澤謙一郎さん。相澤さんは、2015年7月からスタートした、民間主導で横須賀にICT企業の誘致・集積を図る「ヨコスカバレー構想」のキーマンであり、ICTハッカソンやプログラミング講座を実現させた。
タイムカプセル株式会社 代表取締役 相澤謙一郎さん
タイムカプセル株式会社 代表取締役 相澤謙一郎さん
古事記、日本書紀にも記述がある走水(はしりみず)神社(横須賀市走水)のそばで生まれ育った相澤さんは26歳まで実家にいたが、当時勤務していた広告会社での人事異動により、埼玉県へ転勤。都内へ引っ越すことになった。東京に住んでみると、横須賀の実家まで1時間程度なのに、徐々に足が遠のき、「気がつくと正月くらいしか帰らないようになりました」。

中学時代からプログラミングをやっていた相澤さんは、2008年のiPhone発売を機に独立。都内でiPhoneアプリ開発に特化したプログラミングスクールを立ち上げた。10回で9万8,000円の受講料の講座に2年間で1,200人が集まり大成功を収める。それを元手にモバイルアプリ開発に乗り出し、300本近くを開発した。100万ダウンロードを達成したゲームアプリ「ちゃぶ台返し」の開発も行った。その後、縁があり岐阜県大垣市にある中部圏の一大IT拠点「ソフトピアジャパン」でタイムカプセルを創業した。

地元のことを忘れそうになっていた2014年、衝撃を受けたのが、横須賀市が「転出超過自治体」ワーストワンになったというニュースだった。
相澤さんはプログラミング講座で講師も務める(写真提供:タイムカプセル株式会社)
相澤さんはプログラミング講座で講師も務める(写真提供:タイムカプセル株式会社)
「あらためて横須賀を見渡してみると、大手の工場が相次いで撤退し、先輩や後輩が会社を辞めている。親父が経営する建設業も景気が悪い。これはいよいよ本格的にまずいことになってきたな、と。吉田市長とは以前からプライベートな付き合いがあり、とにかく何かやらなくちゃいけないと1年ほどの準備期間を経て立ち上げたのがヨコスカバレー構想です」

仕事を通じて地域社会につながる強さと楽しさ

ヨコスカバレー会員の1人で前職のスマホアプリ開発で相澤さんと協業し、現在は株式会社ビーマップでワイヤレス・イノベーション事業部担当部長を務める中井大さん。東京に本社を置く上場ICT企業の立場から「相澤さんとの縁でつながりができた横須賀で地元企業やコミュニティーと連携し新たな仕事を生んで売上増や税収増に役立ちたい」とヨコスカバレーに参画し、ユニットを先導するなど積極的に活動している。

中井さんは北海道の代表的観光地であるニセコ地域、蘭越町の出身。地元の高齢者にパソコンを教えたり、札幌の企業のECサイト構築を手伝うなど、学生時代から「仕事を通じて地域社会につながる強さと楽しさ」を実感してきた。前職では2011年から2年間福岡に駐在し、ICT系の雇用創出を目指す産学連携事業などに取り組んだ。現職でもインバウンド需要を促進するアプリ開発や、震災のような非常時に備えた通信網構築など、地域社会と連携した業務が多い。

「人口流出といわれながらも、全国的に見れば横須賀は40万人規模の大都市。ポテンシャルは高いと思います。何ができるか、外からの目で見据えていきたい」と意欲を燃やす。

ヨコスカバレー構想に中井さんが可能性を見出すのは、業態を問わず関係を深められる“触媒”としての機能だという。ICT企業は多様な業種と関われるが、いきなり“よそ者”が地域の飲食店や農家などと接点をもつのは難しい。そこで、地元企業とそれに協力する外部の企業や地域住民が関わるヨコスカバレーがプラットフォームになる。
株式会社ビーマップ ワイヤレス・イノベーション事業部担当部長 中井大さんは「外から見るからこその提案をしたい」と話す
株式会社ビーマップ ワイヤレス・イノベーション事業部担当部長 中井大さんは「外から見るからこその提案をしたい」と話す
「横須賀は農業や漁業も盛ん。たとえば2時間かけていたビニールハウスの管理もIoTを使えばスマホで即座に可能、といったサービスをヨコスカバレーという組織を通じて提案できるのではと考えています」(中井さん)

地元企業とも連携し1次産業の業務効率を改善できれば新たな価値創出の余地が生まれる。きれいごとの貢献活動では持続できない地域再生の道筋は、外部も巻き込んだ互恵的な関係づくりで切り拓かれるだろう。

地元、そして縁のある地域を愛する想いが、ヨコスカバレーを支え、そして盛り上げる。定例会にも平日の夜、横須賀や近隣の地域からだけでなく都内からも続々と横須賀を思う人々が集まり、ディスカッションを重ねている姿が印象的だった。

中井さんは横須賀に「よそ者もオープンに受け容れてくれる土地柄」との印象を抱く。1年を経たヨコスカバレーの活動について相澤さんは「業種を問わず関心が高まり、若い人たちのチャレンジを応援する動きが出てきたことが心強い」と確かな手応えを感じている。横須賀発のベンチャー企業を育成するインキュベーション&シェアオフィス「16(イチロク)Startups!」が地元の経営者らの出資で11月にオープンしたばかりだ。行政がつくった太鼓でよい音は鳴らせるのか。これからが正念場だ。

発足から1年、ヨコスカバレーはビジネスマンだけでなく、地域に関心をもつ学生の自主的な活動とリンクし、その活動を徐々にひろげはじめている。後編ではそんな若者たちを代表する2名に、地域としての横須賀、ヨコスカバレーの魅力と、未来に選ばれる地域になるためのヒントを聞いた。

地域活性に興味を持つ若者が、なぜ横須賀に惹かれるのか?──官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(3)へ続く
吉田雄人市長に聞く、「日本の明日が見えるまち」の未来──官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(1)


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