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地域活性に興味を持つ若者が、なぜ横須賀に惹かれるのか?――官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(3)

2016年11月25日



地域活性に興味を持つ若者が、なぜ横須賀に惹かれるのか?――官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(3) | あしたのコミュニティーラボ
地域再生は未来を担う若者たちのコミットなくしてあり得ない。2013年に「転出超過自治体ワーストワン」という不名誉な称号を得た横須賀市が立ち上げたチャレンジ精神旺盛なスタートアップICT企業の誘致・集積を図る「ヨコスカバレー」構想は、地域に関心を持つ学生の活動が活発で、行政や民間企業との距離も近づき、大きなうねりとなりつつある。今回はまちづくりプランを競うコンペを主催する「スカペンコ」や横須賀を盛り上げる若者団体「Sukable」を立ち上げた2人の若者を軸に、ヨコスカバレー構想の未来を探る。全3編の最終回。

吉田雄人市長に聞く、「日本の明日が見えるまち」の未来――官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(1)
地域をプラットフォーム化し、ポテンシャルを形にしていく試み――官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(2)

横須賀にはワクワクしている若者が多い

民間主導で横須賀にICT企業の誘致・集積を図る「ヨコスカバレー構想」に「若者ユニット」が発足し、2016年10月11日の第7回定例会で報告された。

成蹊大学 法学部4年 竹岡力さん
成蹊大学 法学部4年 竹岡力さん

成蹊大学法学部4年の竹岡力さんは地元の学生団体「スカペンコ」の代表で、2年前から政策コンペを開催している。主に高校生と大学生がまちづくりプランを競い合い、優勝したチームがアイデアを市長に直接提案できるコンペだ。

第1回で優勝した女子高生6人組のチームは横須賀名物「ヨコスカネイビーバーガー」をもじって「ヨコスカネイビーパーカー」をつくり、フリーマーケットやイベント広場で1,000着の販売を達成した。「海軍カレーやネイビーバーガーが観光ツールとして対外的に定着しているけれど、“いつのまにカレーのまちになったの?”“食べたことないのにネイビーバーガーが有名に……”と市民が置いてけぼりになっている、というのが彼女たちの問題意識。そこで市民発信のファッションツールをフックとして地元への愛着を持ってもらおう、という思いから、彼女たち自身でデザインしたパーカーをつくりました」と竹岡さん。

竹岡さんの地元は、横須賀市南部のハイランドという住宅街。子どもの頃から近所の人たちが父親代わりのように世話を焼いてくれた原体験が根強い。だから地域の行事に参加するのはごくふつうのことで、最近では町内会の最年少役員も務めている。

「地域の人たちに育てられた分、今度は自分が地域に還元する立場になりたい」気持ちが自然に湧いてきたという。

竹岡さんはこの10月からヨコスカバレーの定例会に参加しはじめた(写真中央)
竹岡さんはこの10月からヨコスカバレーの定例会に参加しはじめた(写真中央)

竹岡さんは「ピンと来た身近なテーマに夢中になったりして、横須賀にはワクワクしている若者が多い」と感じている。

「ワクワクしている若者を人情の厚い大人たちがあたたかく見守り、応援してくれます。それを横で見ていた若者が自分も何かできるんじゃないかと刺激される。そんな好循環が回っている気がします。ヨコスカバレー構想にもそういう土地柄が感じられます」(竹岡さん)

若者の力をもっと発揮できるまちにしたい

慶應義塾大学システムデザインマネジメント研究科修士課程2年の竹田和広さんは一般社団法人ウィルドア 共同代表理事でもあり、授業企画やキャリア教育サポートなど、学生と地域を結びつける活動に携わっている。近隣の藤沢市在住だが、高校生と地元の企業人が出会うワークショップの開催をきっかけに横須賀に関わりはじめた。そのなかでさまざまな若者たちと出会い「若者の力をもっと発揮できるまちにしたい」と、今年の3月から、竹岡さんとともに若者が中心になって横須賀を盛り上げる団体「Sukable」を立ち上げ、ヨコスカバレーとも連携している。

慶應義塾大学システムデザインマネジメント研究科 修士課程2年 竹田和広さん
慶應義塾大学システムデザインマネジメント研究科 修士課程2年 竹田和広さん

第2回政策コンペでは、谷戸地域の空き家に若者たちの交流拠点をつくり、“若者が主役になれる街”条例を制定するアイデアを考えた竹田さんのチームが優勝し、プランを市長に提案した。「Sukableでその実現を目指します。まずは若者たちをつないで、コミュニティーを築いてから拠点づくりをしたい。空き家のリノベーションをしている方と相談しながら進めていくつもりです」と竹田さん。

「風通しが良く、行政との距離が近い」と竹田さんは横須賀の印象を語る。「2カ月足らずで市長に会えて驚きました。相澤さんのような、横須賀のこれからをつくろうとしている社会人の方々との出会いのスピードが早い」。地元の藤沢でも地域活動をしているが、こんなスピード感で市長までたどりつけないという。

竹田さんの地域に関わる原点は、高校時代に参加した青年会議所主催の神奈川ハイスクール議会。勉強一本槍の進学校に通っていた竹田さんは、商業高校や工業高校の学生たちが卓越したコミュニケーション力で地域の人たちにインタビューする様子を見て「そっちのほうが楽しそうだし、カッコいい」と憧れた。「地域の役に立つ活動は最もわかりやすく自分の力を発揮できて承認欲求が満たせるので、ハマってしまう人が増えているのではないでしょうか」。

地域を活性化させるのは、一度外に出て戻ってきた人

竹田さんは横須賀市内の私立高校でキャリア教育のプログラムに携わっている。

「教育の点でも横須賀がいいのは、すべての課題が詰まっているところ。農業も林業も漁業もあり、都市化した結果の地域コミュニティーの薄さもあるかと思えば、その逆の昔ながらの密着しすぎた人間関係もあり、米海軍基地から国際問題も見えます。学生時代に横須賀の現状を知れば何かしら自分の関心事が見えてくるはず。地域との接点から自分なりの課題意識をもち社会に出ていけます。そんなモデルを横須賀でつくれれば、おもしろいまちになると思うんです」

「自分でパッションを持って人々を動かせる、竹岡くん(写真右)みたいな人間が地域には必要なんですよ」と竹田さん(写真左)は言う
「自分でパッションを持って人々を動かせる、竹岡くん(写真右)みたいな人間が地域には必要なんですよ」と竹田さん(写真左)は言う

教育関係の民間企業に就職が決まっている竹岡さんの勤務地は横須賀ではない。地域のために活動していた学生が、就職となると地元を離れざるをえないのが横須賀の実情だ。しかし竹田さんは、「ビジネスの経験を積んで戻って来てほしい」と竹岡さんに期待し、「いずれSukableが稼げるようになったら連れ帰すつもり」と笑う。「どの地域を見ても活性化を牽引するのは一度外へ出て広い視野を身につけてきた人。だから帰って来れる場所を用意しておくのが理想です」。

谷戸地域にオフィスを構え実質的にヨコスカバレー第1号企業となったタイムカプセル株式会社の相澤謙一郎さんも「横須賀には地域に関心をもつ若者がたくさんいます。そんな若者たちの雇用の受皿となれるよう会社を成長軌道に乗せたい」と意気込む。阪神タイガースや楽天イーグルスの公式アプリ開発などで実績を積んできた。「スマホアプリという身近なICT領域で誰もが知っている会社が横須賀にある。そういうキャッチーな存在になることが目標です」。

高い多様性を巻き込んで一大ムーブメントに

今後のヨコスカバレーの活動について、相澤さんは「僕らが取り組むべきことの1つは地域の垣根を取り払うこと」と展望する。「近隣同士が広域連携すればインバウンドの新たな需要を取り込めるに違いありません。横須賀には1万5,000人のアメリカ人が生活しています。英語圏の人に親しみやすい横須賀や横浜を拠点に鎌倉、逗子、葉山、三浦あたりを巡る連泊の旅を提案できるわけです。海も山もあって食べものが美味しく、観光地としてのポテンシャルは高い」。

そのために、情報ツールとしてスマートフォンアプリやWebサイトは必須だ。ヨコスカバレーに参画するICT企業がビジネスとして関われる余地は大いにある。

今年も予定されている「3市連携ハッカソン」は鎌倉市、横浜市金沢区、横須賀市の3地域でそれぞれ独自に開催し最後に優勝チームが集まって競う。広域連携の芽もヨコスカバレーをきっかけに民間主導で出はじめているようだ。

行政は一歩後ろに引いてバックアップを続ける。ヨコスカバレー事務局を担う公益財団法人横須賀市産業振興財団常務理事の堀込孝繁さんは「6次産業化とICTを掛け合わせた可能性を、横須賀でフィールドワークしたいという投げかけも東京の情報産業から来ています。さまざまな連携を探りながら、1人でも2人でも相澤さんのように横須賀に事業所を構える人たちが出てきてほしい」と話す。

横須賀市役所 経済部企業誘致・工業振興課の曽我文雄さんも「1年が経過し端的な手応えの1つは、会員が増えていること。みなさんの関心の高さが伺われます。土台づくりから事業化へと今後は進むはず。そうなれば、バレー構想の活動にも拍車がかかり、地域経済も活性化する」と期待をかける。

ヨコスカバレー立ち上げ時の行政側の事務局担当だった、横須賀市役所 曽我文雄さん(写真左)と、現在ヨコスカバレーの行政側の事務局のトップとして活動を支援する公益財団法人横須賀市産業振興財団 堀込孝繁さん(写真右)
ヨコスカバレー立ち上げ時の行政側の事務局担当だった、横須賀市役所 曽我文雄さん(写真左)と、現在ヨコスカバレーの行政側の事務局のトップとして活動を支援する公益財団法人横須賀市産業振興財団 堀込孝繁さん(写真右)

横須賀は東海岸が東京湾の内湾と外湾に接し、西海岸は相模湾に面する。相澤さんによれば「地域によって文化が違う」多様性の高いまちだ。「金沢区と接する追浜あたりは横浜の影響が強いし、西海岸は逗子や葉山など湘南文化圏に紐づいています」。それだけに情報が行き渡りづらい側面もある。

ヨコスカバレーの活動を継続することで「横須賀におもしろいことをやっている人たちがいることを、ICTと直接関係のない業種の方々にも広く知ってもらい、シニア層も若者も巻き込んだ大きなムーブメントにしていきたい」と相澤さんは力を込めた。

吉田雄人市長に聞く、「日本の明日が見えるまち」の未来――官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(1)
地域をプラットフォーム化し、ポテンシャルを形にしていく試み――官民共同で進む横須賀市「ヨコスカバレー」構想(2)


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