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アイデアソンは「いずれなくなってしまう」?──アイデアソン・サミット2017(3)

2017年04月04日



アイデアソンは「いずれなくなってしまう」?──アイデアソン・サミット2017(3) | あしたのコミュニティーラボ
多様な背景を持った人々が、1つのテーマに対してアイデアを出す「アイデアソン」。アイデアを出すプロセスを通じて、共通言語をつくり、人が育つ。さまざまな効果がある一方、ビジネスのアイデアがすぐに得られると過度な期待をされているのも事実だ。全国各地でアイデアソンを開催し、アイデアソンを広めてきた実践者たちが一堂に会した「アイデアソン・サミット2017」は、アイデアソンの課題抽出や、さまざまなセクターでのアイデアソンの有効性を、参加者同士が2日間徹底議論する場として、今回はじめて開催された。

サミットは、最後のプログラム「アイデアソン・サミットフォーラム」に移った。モデレーターは、主催者である高知大学 地域協働学部 コミュニティデザイン研究室の須藤順さん。パネリストとして株式会社富士通総研の佐々木哲也さん、そして2日間の司会進行を務めたエイチタス株式会社の原亮さんを迎えた。3名の語り合いから見えた、アイデアソンの未来像とは? 3本立ての最終回。

アイデアソンの課題を、アイデアソンで解決する!?──アイデアソン・サミット2017(1)
アイデアソンは「魔法の杖」ではない──アイデアソン・サミット2017(2)

アイデアソンの定義を、再定義する?

須藤順さん(以下、須藤) 先ほどのカンファレンスは4つのセッション(産業領域、地域課題解決、場づくり、教育)に分けましたが、それ以外の領域でもアイデアソンは活用がされはじめています。

そんななかで難しいなと思うのは、アイデアソンをやってみたいと相談を持ちかけてくる主催側の人たちに対し「アイデアソンとは何なのか」を説明することです。

佐々木哲也さん(以下、佐々木) 私の場合は「複数のアイデア発想の手法を用いながら、個人もしくはグループでアイデアを出し、チームで発表して、最後はその場でどれが一番すばらしかったかを評価する場」というふうに説明していますね。お2人の場合はどうですか?

須藤 その前提としてお話しなければならないのは、原さんとの共著で『アイデアソン! アイデアを実現する最強の方法』(徳間書店)という本を上梓しましたが、実はそのときも「アイデアソンの定義をどうするか」は一番悩んだことです。

1人の研究者の立場で考えれば、当然定義づけは大事なのですが、そのことでアイデアソンの本質とズレていきやしないか、という危惧がある。カタチがなくて、常に可変的であることを認める、あるいは、変化することを楽しみ合う文化にある──それがアイデアソンの本質ですから。

それを踏まえ、あえて定義づけするならば「多様な人が主体的に参加し、かつ、地域や社会の課題の解決に向け、新たな価値創造をしていく、そのための場がアイデアソン」──そう思っていますが、原さんはいかがですか?

エイチタス株式会社 代表 原亮氏全国各地でアイデアソンを展開するエイチタス株式会社 代表 原亮氏

原亮さん(以下、原) 僕も基本的には須藤先生と同じです。多様性がある。主体的に関わる。特定のテーマがあってそのもとに集まる。そして、アウトプットとして何かが出てくるけれど、そこに向かうためのプロセスをたどっていく。それがイコール、アイデアソン。

“何かが出てくる”は「アイデア」として出てくることもあるし、「自分の課題意識を出し切る」という面で達成されることもあります。

須藤 「主体的な人が多様に集まる」が、地域の会合などで催されるような「ワークショップ」と決定的に違うところです。かつ、アイデアソンでは「このアイデアが絶対的に正しい!」という方向で合意形成するのではなく、みんなでコミットしながら具体策を考えたい。

佐々木 それは企業や大学で行われるアイデアソンが抱える課題でもありますね。主催者と参加者双方に主体性がないということが、実際にはありえます。それは主催者が参加者を過剰にもてなしてしまったり、参加者が主催者に対して遠慮をしてしまったりなど、その場の関係性に起因することが多いです。だから僕がアイデアソンを設計するうえでは、主従関係がわからない渾然一体な状態をつくることを常に意識しています。

アイデアソンに起こりがちな、さまざまな誤解

佐々木 ただ、多様性を確保するとはいいながらも、アイデアソン慣れした固定メンバーばかりになってしまうのもある種の課題といえますが……、須藤さんはいかがお考えですか?

須藤 さっきのカンファレンスでも「参加者の行動の変化」が話題になりましたよね。ハイライト法で「☆」を獲得できなくても、自薦枠として自分のアイデアを発表するなど、前に出ることが苦じゃなくなっていく人が出てきます。そうした個人レベルで変化をもたらす点にも我々は目を向けなくてはいけません。あとはさじ加減の問題といいますか。

高知大学 地域協働学部 講師の須藤順さん高知大学 地域協働学部 講師の須藤順さん。高知大学や高知県立大学の学生らとともに今回のアイデアソン・サミット運営も担当した

それに、そうした隠れファシリテーター、ある程度メソッドやファシリテーションのことをわかっている人がチームの各テーブルに潜んでいると、簡単なコーディネートをしてくれます。どうしても人の手が足りなくなるアイデアソンの企画・運営のうえでは、彼らの存在が大きいのもまた事実です。

佐々木 あと「アイデアソンは魔法の杖になる」のと同様に、もう1つ誤解されがちなのは、アイデアソンを見たことも参加したこともない主催側の担当者から「2カ月後に開催したい!」みたいなことを言われること……。

須藤 僕は「1週間後にアイデアソンを開催したい」と言われたことがありました(笑)。2カ月とか、ましてや1週間というのは、土台、無理な話ですよね。説明していけば、どうやら普通のワークショップの企画とは違うようだと気づいてもらえるのですが。

その誤解にお答えするなら、ファシリテーターは、参加者と同等レベルの専門性を事前に仕入れておかないと対応できません。もし参加者からすでに世に出ているアイデアが出てきたら、ファシリテーションが上手にそういうアイデアを削いでいかないといけない。終わった後のフォローアップもあります。だからアイデアソンの運営は決してファシリテーター1人ではできないし、人的コストも時間もかかります。原さんもいろいろなアイデアソンを企画され、当日はファシリテーションも担当していますが。

 僕らが準備の段階で考えていることは、どんな流れで参加者同士のコミュニケーションをとってもらいたいか、あるいは、その場で表現をしてもらいたいか。事前にそれをストーリーとして描き、多数あるメソッドを後から当てはめていきます。既存のメソッドがうまくハマらない場合は、メソッド自体に改良を加えることもあります。メソッド同士のつなぎ目がすっと流れていくように、何度もシミュレーションを繰り返しますから、相応の時間は必ず要します。

富士通総研 佐々木哲也さん大学生と社会人がフラットにアイデアを出し合い、新たなアイデアを創発するあしたラボUNIVERSITYなど、あしたのコミュニティーラボでも数多くのアイデアソンを企画運営し、ファシリテーションも行う富士通総研 佐々木哲也さん

佐々木 アイデアソンは誰でもはじめられますし、僕らもやる人が増えてほしいと思っています。誰かの専売特許みたいなものにするべきではない。ただその一方で、関係者の認識がずれているなかではじめてしまうと、みんなが大変な思いをしたり、参加者に嫌な思いをさせてしまうことにもなりかねない。そうしたことを主催側の人たちに理解してもらうことも必要なのかもしれません。

アイデアソンはいずれ「なくなる」!?

須藤 さて、このサミットで最後に議論したいのは、アイデアソンのこれからのことです。過去にもいろいろなワークショップの手法が出ては消え、出ては消え……を繰り返しています。で、消えていく多くのパターンは、変な囲い込みがはじまったとき。「こういう協会に入らないとやってはならない」みたいな(笑)。

いずれは『アイデアソン』という単語は消えていくのが理想「いずれは『アイデアソン』という単語は消えていくのが理想」と原さんや須藤さんは話す

そういうふうには絶対にしたくない。だからアイデアソンは、ツールやメソッドをできるだけ公開するし、みんなで共有していきたいんです。

佐々木 それはまったく同意見ですね。

須藤 公開したところで、メソッドの組み合わせだけで絶対にアイデアソンはつくれません。シェアリングによってたくさんのヒントをもらえる状態にしておきたい。僕が大学で教えている地域協働学部でも『地域協働を、地域協働で学ぶんだよ』と学生たちに説明しています。要はそれと同じで、アイデアソンも、関わっている僕ら自身も創発的にアイデアソンの企画・運営を実践していかないと、本当の意味での価値は拡がらないのではないでしょうか。

 そうですね。僕らが目指しているのは『アイデアソン』という言葉を使わなくなる状態なんじゃないか、と思うんです。つまりこの2日間で話し合われた“アイデアソンの価値”が、事業創造、地域課題解決、教育などあらゆる領域に溶け込み、アイデアソンという言葉をわざわざ使わなくても、自然とそれと同等の行いができるようになる状態──。そのために僕ら実践者同士がもっと情報や体験をシェアリングし、いろいろなところにアイデアソンをしみこませていきたいですね。

★アイデアソン・サミット2017には、北は北海道、西は九州と全国からおよそ40名が集まった

こうして2日間の「アイデアソン・サミット2017」は終了した。最後には、神戸大学大学院システム情報学研究科の藤井信忠准教授から「次回サミットは神戸で!」との声が挙がり、サミット参加者も拍手で応じた。アイデアソン実践者たちの情報・体験のシェアリングは、ある種のエコシステムをもたらすことだろう。今後もアイデアソン実践者の動向から目が離せない。

アイデアソンの課題を、アイデアソンで解決する!?──アイデアソン・サミット2017(1)
アイデアソンは「魔法の杖」ではない──アイデアソン・サミット2017(2)


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