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SXSWを理由に、企業がゆるく集まりはじめているワケ ──特集「創発のデザイン〜発散を収斂させるためのヒント〜」vol.1

2017年04月06日



SXSWを理由に、企業がゆるく集まりはじめているワケ ──特集「創発のデザイン〜発散を収斂させるためのヒント〜」vol.1 | あしたのコミュニティーラボ
今年もアメリカ・テキサス州オースティンで開催された「サウス・バイ・サウスウエスト」(SXSW/会期は2017年3月10〜19日)。これに先立ち、日本国内では2017年1・2月にかけてSXSW関係者・出展者が集うミートアップイベント「Japan@SXSW Meetup」が開催された。彼らは、なぜSXSWに魅了されるのか──。2月10日に開催された「Japan@SXSW Meetup in Kansai」の主催者で、出展企業の1つでもある「Wonder LAB Osaka」の福井崇之さん(パナソニック株式会社・全社CTO室)を訪ね、SXSWを機にコミュニティーを形成することの目論みを探った。あしたのコミュニティーラボ編集部が、SXSW参加者など“外向き”な企業・団体の動向を通じてイノベーション創発までの可能性を考える特集「創発のデザイン」の第1回としてお届けする。

東西2拠点でミートアップイベントを開催

サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)は、毎年3月アメリカ合衆国テキサス州オースティンで開催される。1987年に音楽祭(SXSWミュージック)としてはじまり、徐々に規模を拡大。1994年からは映画祭(SXSWフィルム)を同時開催するようになり、1998年にはSXSWインタラクティブがスタートした。Trade Show(展示会)には大手企業からIT系スタートアップ、ベンチャーまでが一堂に会し、最近は日本からの出展企業・出展者も増えてきている。

日本国内でも注目が集まるなか、このたび関東・関西の両会場で「Japan@SXSW Meetup」と題したイベントが開催された。

〈Japan@SXSW Meetupの概要〉
●Japan@SXSW 2017 新年Meetup & 出展社ショーケース
開催日:1月24日 会場:FUJITSU Knowledge Integration Base PLY(東京・蒲田)
主催:SXSW Japan事務局 協力:富士通株式会社

●Japan@SXSW Meetup in Kansai
開催日:2月10日 会場:Panasonic「Wonder LAB Osaka」(大阪・門真)
主催:Wonder LAB Osaka (パナソニック株式会社)

これまでにもSXSW ASIA Representative(株式会社ASADA)の主催で、東京都内にあるDMM.make(2015年)、Sony-Creative Lounge(2016年)でミートアップイベントが開催されてきた。2017年は、まず富士通の協力のもと、FUJITSU Knowledge Integration Base PLY(東京・蒲田)でSXSW 2017 新年Meetup & 出展社ショーケース(以下、関東大会)が催された。

SXSW 2017 新年Meetup & 出展社ショーケース(@PLY)。FC POPの2人が会場を盛り上げた
SXSW 2017 新年Meetup & 出展社ショーケース(@PLY)。FC POPの2人が会場を盛り上げた

プログラムは過去のSXSW出展者・参加者による「SXSWおすすめセッション」「トレードショーにまつわるTips」などにはじまり、その合間には今年SXSWに出展を予定する企業・個人による出展品紹介が実況中継された。

関東大会で司会進行を担当したのは、“ネットとリアルをつなぐ”をコンセプトにしたソーシャル飲食店「東京カルチャーカルチャー」を拠点に“イベント屋”として活動する、ニフティ株式会社の河原あずさん。そして、富士通デザイン株式会社に在籍しながら“グラフィックカタリスト”として活動するタムラカイさんの2人だ。2人は「FC POP」という名のユニットを結成し、数々の国内イベントを盛り上げている。

この場に集まったのは、大企業からスタートアップまで、業界もさまざまなビジネスパーソン100名以上。このうち、SXSWに出展・参加するのは1〜2割ほど(参加者の挙手による自己申告より)とのことだが、場のキャパシティを大きく上回る参加者数が、日本における注目度の高さをうかがわせる。さらに、「FC POP」の2人による巧みな進行と、紹介されるユニークなサービスの数々により、会場は2時間半の間、終始熱気に包まれていた。

FUJITSU Knowledge Integration Base PLY(東京・蒲田)には、100名を優に超える来場者が集まり、終始賑わいを見せた
FUJITSU Knowledge Integration Base PLY(東京・蒲田)には、100名を優に超える来場者が集まり、終始賑わいを見せた

対する関西は、大喜利でミートアップ

一方、SXSWにまつわる大規模イベントが関西圏で開催されたのは今回がはじめて。Japan@SXSW Meetup in Kansai(以下、関西大会)を主催したのは「Wonder LAB Osaka」──パナソニック株式会社が2016年に開設したばかりの共創空間──だ。

関西大会も、関東大会に負けず劣らず、実にユニークなイベントだった。SXSW ASIA Representativeのオードリー木村さんらを交えたパネルディスカッションの後は、 SXSWの楽しみ方をみんなで考える大喜利が──。大阪の大喜利マスターとともに参加者数名が登壇。モデレーターから与えられたお題に対する回答を披露するたびに、やんやの喝采を浴びた。

参加者による「大喜利」が行われ、絶えず笑い声が起こっていた
参加者による「大喜利」が行われ、絶えず笑い声が起こっていた

「大喜利はコミュニケーションの障壁を下げるんです」

そう話すのは、Wonder LAB Osaka内で“Experience Specialist”の肩書きで運営に携わる、福井崇之さん(パナソニック株式会社・全社CTO室)。関西大会のイベントではモデレーターも務めた。

パナソニック株式会社 全社CTO室 福井崇之さん
パナソニック株式会社 全社CTO室 福井崇之さん

事実、大喜利によってステージ登壇者と来場者、あるいは来場者同士のコミュニケーションの障壁が下がり、まるで時間を経るごとに個々のつながりが増幅していくようだった。そもそも大喜利とは、演劇でその日の興行の最後の一幕を意味する「大切(おおぎり)」にちなんだ言葉。「喜利」は「客も喜び演者も利を得る」という意味の当て字とされる。イベントの盛り上がりもさることながら、ミートアップイベント本来の目的を大喜利が果たすこととなった。

アイデアを孵化させるために、高速でフィードバックを集める

そもそも、Wonder LAB Osakaは「社外パートナーも含めた多様な人々と一緒に、新たな価値を創造するプレイフルな共創空間」をコンセプトに、2016年に創設された。プロトタイピングができる「SiSaku室」やテクノショーケース、イベントスペース、プレゼン&セミナールームのほか、最新のパナソニック製品を使用できるセルフキッチンや決済のできるカフェ、ショップなども併設されている。

イベント当日のWonder Lab Osakaの様子。外から見ても盛り上がりがよくわかる
イベント当日のWonder Lab Osakaの様子。外から見ても盛り上がりがよくわかる

施設に入ると、まず社内有志のプロトタイピングやハッカソン等で生まれた新しいプロダクトの種(試作品)が多数展示されているのが目につく。ここへ訪れた人たちは試作品やサービスに触れ、新たな気づきを感じることだろう。さらに、見覚えのない技術やサービスを体験することもできる。パナソニックにとっては、貴重な実証実験(ユーザーテスト)のフィールドだ。

福井さんいわく、ここで触れられるものは「まだ世のなかには出せない未完成なサービスや技術」ばかり。その“未完成なアイデア”のフィードバックを高速で集め、改善し、社会実装に向かうためのイノベーション創発装置こそがWonder LAB Osakaなのだ。頻繁にイベントが行われ、創設1年足らずながら社内外の人たちが絶えず交流し賑わう様子は、そのサイクルがうまく回りはじめた証左と言えるだろう。

Wonder LAB Osakaでは至るところに試作品が展示されている。思い思いに足を止め、話に花を咲かせている来場者の姿が印象的だったWonder LAB Osakaでは至るところに試作品が展示されている。思い思いに足を止め、話に花を咲かせている来場者の姿が印象的だった

求めるのは“異質”なネットワーク

「Wonder LAB Osakaはパナソニックの“出島”のようなもの」

福井さんはそう話す。出島は江戸時代、長崎につくられた人工島。鎖国体制が敷かれるなか、幕府は出島に海外との貿易拠点を置いた。

「実際に当社が鎖国をしているわけではありませんが、社員のマインドセットはどうしても鎖国状態になってしまいます。当社もSXSWでは市街中心部に「Panasonic House」として大々的に出展しますが、それとは別にWonder LAB OsakaとしてTrade Show会場に出展する予定。でもそれはWonder LAB Osakaと同様、“コミュニティー”という切り口でしか考えていません。“Ready to be Hacked”(ハックされる準備はできている)とか言いながら、いっそ手ぶらで行ってみようかとまで思っている(笑)。でも、それがWonder LAB Osakaの精神を表していると思います」(福井さん)

最近のSXSWの傾向について、これまでたびたびSXSWを探訪してきた富士通総研・佐々木哲也さんは「出展者や参加者のねらいとは裏腹に、日本のなかでより新商品の発表や商談の場としての印象だけが強くなっているように感じる」と話す。すなわち、自社のビジネスを広める場としての側面だ。

「(Wonder LAB Osakaのコミュニティーに)どんな人を呼ぶべきか、どんな人たちに振り向いてもらうべきか。先陣を切ってそうした目利きをするのが、われわれWonder LAB Osakaの役割だと思っています」(福井さん)

(写真右から)富士通総研 佐々木哲也さん、パナソニック株式会社 福井崇之さん、あしたのコミュニティーラボ編集部 武田さん
(写真右から)富士通総研 佐々木哲也さん、パナソニック株式会社 福井崇之さん、あしたのコミュニティーラボ編集部 武田英裕さん

「SXSWにしても、ミートアップのイベントにしても、Wonder LAB Osakaにしても、社内で培ったコミュニティーとはまったく“異質”なタイプが集まってくる。そういう人たちとネットワークを築けば、その方々が見ている、その先のコミュニティーともつながっていくでしょう」(福井さん)

SXSWという場のもとに形成されはじめた、日本企業によるどこかゆるめの、だけど盛り上がりを感じさせるコミュニティー。SXSW自体の注目度もさることながら、自ら場を持ち、共創を見据える富士通やパナソニックのような大企業の動きが、よい意味で参加企業に熱量の高さをもたらす1つの要因となっているようだ。そしてまた、彼らはその先に、自社だけでは得られない、“異質なつながり”から起こるイノベーションの萌芽を描いている。今後、このコミュニティーからどのような物事が飛び出すのか、引き続き注目していきたい。

SXSWと同様に、アート&テクノロジー・カンファレンスとしてイノベーターから注目されるイベントがある。欧州最大のイノベーション・フェス「Tech Open Air(TOA)」だ。会場のあるドイツ・ベルリン市街には、2016年、2万人以上が世界中から集まった。次回は、日本ではじめて開催された「TOA ワールドツアー」の模様をお伝えする。

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