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海外×テクノロジーの未来に近づく? TOAワールドツアー東京に行ってみた

2017年04月28日



海外×テクノロジーの未来に近づく? TOAワールドツアー東京に行ってみた | あしたのコミュニティーラボ
「TOA」(Tech Open Air)は、毎夏、ドイツのベルリン市街で開催されるアート&テクノロジー・カンファレンスだ。2016年のTOAでは約2万人を動員するなど、注目を集めている。このたび、そのTOAのスピンオフイベントとして、日本国内では初となる「TOAワールドツアー東京」が開催された。TOAから見えてきた創発をデザインするための場づくりとは? (以下すべて、画像提供:TOA運営事務局/撮影:Futoshi)

【特集】創発のデザイン~発散を収斂させるためのヒント~ 

2万人以上が来場するカンファレンス

特集「創発のデザイン」vol.1でお伝えしたとおり、今、国内企業、ベンチャー、スタートアップでイノベーションに強い関心を示している人材が、企業の垣根を超え、サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)のような海外発コミュニティーに進出している。ドイツ・ベルリンで毎年夏に開催される「TOA」(Tech Open Air)も、そんなコミュニティーの1つだ。

2016年のTOAには2万人以上が来場。200名以上のスピーカーセッションが行われたほか、“Open Air”の名のとおり、開放的なアウトドアスペースで200超のサテライトイベントが催された。ファウンダーやCEOの来場数は1,200名以上。投資家も450名以上が参加した。

2017年2月22日、テノハ代官山(東京・渋谷)で、そんなTOAのスピンオフイベント「TOAワールドツアー東京」が開催された(株式会社インフォバーン、TOA GmbH社が共催)。完全招待制の有料イベントにも関わらず、チケットは即完売。イノベーションというテーマに対する関心の高さがうかがえる。当日はTOAへの日本からの出展者となり得る要注目ベンチャーやプロジェクトの当事者らが一堂のうちに会した。


TOAワールドツアー東京 2017当日のダイジェスト映像 (提供:TOA運営事務局/撮影:Futoshi)

TOAファウンダー、ニコラス・ヴォイシュニックさんによるキーノートでは、現在のベルリンが発しているエネルギーについて語られた。

「ベルリンには音楽、芸術、技術などの分野からクリエイティブな人たちが集まるようになっています。国内外からの移住者も増加していて、現在は人口約320万人のうち、だいたい50万人が外国人。移住者増加を背景に、ベルリンのスタートアップへの投資額もヨーロッパの他国に比べ、年々大きくなっています」

TOAファウンダーのニコラス・ヴォイシュニックさん
TOAファウンダーのニコラス・ヴォイシュニックさん

ニコラス・ヴォイシュニックさんいわく、TOAが大事にしていることは次の3つ。

●学び
●ネットワーク
●インスピレーション

SXSWと同様に、ここが単なる商談の場ではないことを示唆している。TOAのバックグラウンドは、コミュニティー指向型のイベント。テクノロジー、音楽、芸術、科学……といったあらゆる領域の共通分母として“技術”というものを捉えている、とヴォイシュニックさん。

「さまざまな領域でトランスフォーメーション(再編)が破壊的に起こっている今、私たちは、そこにプラットフォームを提供したかったんです。すべての業界の代表者を一堂に会することで、技術がその分野にどのくらいの影響を与えるのかがわかる。もちろんそこから協業が生まれるし、政策担当者も入ってくることとなるでしょう」

東京でTOAを疑似体験

キーノート後の「ピッチイベント」では、テクノロジー、芸術、科学の各界で活躍するイノベーター、クリエイターたちがスピーカーとして登壇した。来場者は「アート&テクノロジー・カンファレンス」であるTOAをここで疑似体験できただろう。

〈ピッチイベントのプログラム〉

● ピッチ1 写真共有アプリ「EyeEm」(アイエム)——デジタル写真共有の未来
ゲン・サダカネさん登壇者:ゲン・サダカネさん(EyeEmクリエイティブ・ディレクター 兼 共同創業者)
ドイツ発、写真の売買ができるアプリ「EyeEm」が1800万人のユーザーコミュニティーから愛される理由について、日本人創業者が語った。

● ピッチ2 次なる知覚のドア——次世代VR
水口哲也さん、西川美優さん登壇者:水口哲也さん(ゲームクリエイター、レゾネア代表)
聞き手:西川美優さん(Sales Director HTC VIVE)
※ 水口さんは海外からSkypeで参加。
「アドレナリン」から「セロトニン」へ? VRゲームがこれから目指すべき方向性とは。

● ピッチ3 ILC加速器による国際リニアコライダー計画
山下了さん登壇者:山下了さん(東京大学 素粒子物理国際研究センター 特任教授)
日本で建設計画が進む世界最大の素粒子加速器(リニアコライダー)。「宇宙の創生」という大きな謎を前にして全世界の科学者を巻き込んだコラボレーションが生まれている。

● ピッチ4 インタビュー
押井守さん登壇者:押井守さん(映画監督・演出家)
聞き手:ワダヒトミさん(ライター)
デジタルアニメーションとVRにおける、作品との距離感の違いとは? VRにおいて人間はいかにして学ぶのか。

● ピッチ5 メーカーズ・トーク
中澤優子さん、宮坂貴大さん中澤優子さん(株式会社UPQ代表)×宮坂貴大さん(株式会社BONX 代表取締役CEO)
※ 進行:松葉信彦さん(ギズモード・ジャパン編集長)
ともに20代でプロダクトメーカーとして起業した2人のそれぞれの事業とその展開について。

ピッチイベントの後、来場者たちは立食パーティーとDJパフォーマンスを楽しんだ。

登壇者たちのピッチに刺激を受けた来場者たちは、思い思いに集まって興奮気味に議論を交わしていた。

Tobyさん
日本のテクノシーン黎明期からドイツのテクノをいち早く日本に紹介してきたDJのTobyさんによるパフォーマンス

自分と同じような人と話しても、イノベーションなんか生まれない

後日、今回のTOA ワールド・ツアー東京の仕掛け人であるTOA日本事務局プロデューサーの小林弘人さん(株式会社インフォバーン代表取締役 CVO)にイベントの場づくりの意図を伺った。

小林弘人さん
イベント当日、開会の挨拶をするTOA日本事務局プロデューサーの小林弘人さん(株式会社インフォバーン 代表取締役CVO)

「今回は2016年の10月にロサンゼルスで行われたTOA world tour LAのスタイルをほぼ踏襲しました。TOAはアーティスト、サイエンティスト、思想家まで含めて絶え間なくピッチが続き、ミックスされていく。現場にいて、こういうのは日本にはないなと感じました。イノベーションというのはIT業界だけで起きている話しじゃない。やっぱり「創発」や「共鳴」を起こすには、自分と同じ国籍や業界の人とだけ話してもしょうがないじゃないですか。それをぜひ日本でやりたいと思いました」

その言葉どおり、ピッチイベントのプログラムには実業家、ゲームクリエイター、研究者、映画監督、メーカーとバラバラの専門家が並んでいる。

「でも終わってみたら、それぞれが哲学をもつエキスパートなので、統一性があったように感じて──。全然違和感がなかった」と小林さん。

お互いがコラボレーションできる素地を見つける

なぜ、ベルリンだったのか? なぜTOAだったのか?

「ベルリンという街はとてもフラットです。中心がなく、コミュニケーションを誰とでも取りやすい。アメリカが多様性の象徴のように言われているけれど、ベルリンも負けていませんし、むしろアメリカよりもラジカルかもしれませんね。IoTとかブロックチェーンなどの潮流も含めて、創発は全世界で起きています。たしかにシリコンバレーは革新的だけれど、すべてがネットにつながった時代だからこそ、欧州のテック・シーンは面白いですよ。特にベルリンは日本人起業家にとってもすごくチャンスがあると思う。その世界の広さを感じてほしい」

そんなベルリンの特徴は、イベントの場づくりにどんなかたちで反映されたのだろうか。

「まず対話ありき。相手から情報をとろうとか、もしくは自分から売り込むためじゃなくて、お互いがコラボレーションできるような素地を見つけていく。そんな対話が生まれる場をつくりたかった」と小林さん。


会場の張り紙。コミカルなタッチながら「NO名刺交換ファースト」など、まず名刺交換の行列ではなく、自然な対話とそこへのコミットメントが生まれやすい場をつくろうという運営側の意図が感じられる

「本場のTOAは、ニコラスの意図が隅々に通っていると感じられて──それって雑誌と似ているなと思いました。僕は雑誌の編集長をやっていたので、今回のイベントもTOAという1冊の本を編むようにつくりました。言わば、リアルな編集です」

具体的に、イベントの場にはどんな意図を通わせたのか?

「TOAからは、ベルリンのスタートアップ・シーンやあらゆる文化への愛やリスペクトを感じます。僕が起業家イベントに行かないのは、 お金の話ししかなくて退屈だから。また、上から目線で起業家に接する投資家が多いですよね(笑)。スピーカー以外にも、今回呼んだ人たち全員を、僕は応援したいと思っています。だから、意図したのは『自分のやっていることに愛がある人たち』との『愉しい宴』。そもそも、教科書を読んでイノベーションが起こせるわけがない。苦しい道のりでも、楽しかったり、指標にする仲間やヒーローがいるから取り組めるんですよね。そういう、領域横断型でなおかつワクワクするネットワーキングの場を創らなければ、TOAじゃない」と小林さんは語る。

イベントを終えて、来場したベンチャーやプロジェクトの当事者から小林さんのもとに「興奮して夜もなかなか眠れませんでした」というような高揚した感想が複数届いたという。

「それは来場者を少人数に留めたからだと思っています。興奮がエコーのようにこだましていく会話を体験していただけたなら本望です」

今年7月にも本場ベルリンでTOAが開かれる

今年のTOAは7月12〜14日に予定されている。TOA運営事務局では日本の企業の参加を募り、オフィシャルツアーを計画している。

TOAの注目度は年々上がっており、ヨーロッパのみならず、アメリカ・アジアのファウンダーやベンチャーキャピタルも、数多く来場することが予想される。さらに、10月には日本でさらなるイベントの企画も進行中とのこと。

まだ日本では知名度こそ高くないTOAだが、この日のワールドツアー東京の盛り上がりは確かなものだった。会場では来場者同士による熱量の高いコミュニケーションがいたるところで発生していた。異なる専門性を持った人びとがポジティブな目的のもとに集まり、フラットに交流してお互いに影響を与えあう──そんな理想的な場がこの日の代官山には、はっきりと存在した。

どのような場から「創発」が生まれ、そのための場をどのように設計することが可能なのか──この刺激的な一夜から、来場者たちは多くの学びを得たことだろう。

TOAはイノベーションを生みだすプラットフォームとなるのか。今後の展開におおいに期待したい。

【特集】創発のデザイン~発散を収斂させるためのヒント~


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