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企業は社員に何を支援できる?
「近未来のワークスタイル」イベントレポート(上)

2013年03月05日



企業は社員に何を支援できる?<br />「近未来のワークスタイル」イベントレポート(上) | あしたのコミュニティーラボ
ビジネスの最前線では、これからどのような「働き方」の変化が求められ、そこからどんな価値やイノベーションがもたらされるのでしょうか。モデレーターの齋藤敦子さん(コクヨ株式会社RDIセンター)、妹尾大さん(東京工業大学大学院准教授)、佐々木哲也さん(株式会社富士通総研シニアコンサルタント)を招き、2013年2月15 日(金)に開催したイベント「近未来のワークスタイル」を詳しくレポートします。昨年末の特集で反響を得た「これからの働き方」のスピンオフ企画(ビジネス編)として、ご覧ください。

企業・組織から見たワークスタイルの変化

当日会場に集まったのは、ビジネスパーソンを中心におよそ30名。平日の朝9時30分という時間帯でありながら、職場やビジネスにおける問題意識を抱えた多くの方が座席を埋めていました。

定刻になり、モデレーターを務めるコクヨ株式会社RDIセンター主幹研究員の齋藤敦子さんが、まずディスカッションの背景と目的を最初に提示しました。前提として押さえておくべきことは、私たちの働き方や暮らし方が変わりつつあること。背景の一つが、インターネットの進展や成熟社会による個人の価値観の多様化です。

齋藤敦子さん(コクヨ株式会社RDIセンター)

今回のセッションでは、理論と実践の間を行き来しながら、未来のワークスタイルをひもとき、支援環境としてのICTの可能性について議論します。

「あしたのコミュニティーラボ」では昨年末に「コミュニケーション」をキーワードに働き方の変化を探りました。そのときは一人ひとり、主に「個人」の立場からのアプローチでしたが、今回はもう少し視野を広くとって「企業」や「組織」の観点から、ワークスタイルがどのように変化していくのかを考えていきます。

創造性を発揮できるワークプレイスとは

まず齋藤さんが、近未来の働き方とそれらを支援するワークプレイスについてプレゼンテーションしました。効率性重視のクローズドな工業社会から、創造性重視のオープンな知識社会へ。社会環境の大きな変化の中で、ワークプレイスも「協業(コラボレーション)」「コ・ワーキング」「集中と交流」「知識や経験の共有」といったキーワードが重要になります。

このようなクリエイティブなプロセスそのものを実現するワークプレイスとして、シリコンバレーのEvernote社やSkype社の事例が紹介されました。そこでは、次のようにさまざまな工夫が施されています。

日常的な往来から生まれるコミュニケーション。見える会議室。ホワイトボートとしての内壁。オープンで集中と交流のバランスがよいデスク配置。オーガニックでカジュアルな雰囲気。コラボレーションサロンとしてのキッチンまわり。クオリティ・オブ・ライフを支える付帯施設‥‥‥等々。

壁一面がホワイトボードとして機能するEvernote社のオフィス
(写真提供:WORKSIGHT)

ここで注目すべきは、ICTの先端企業であるからこそ、かえってデジタル(左脳)とアナログ(右脳)の行き来にたいへん神経を遣っているところ。デジタル化が進んでもアナログ的な思考方法や空間は、創造性を発揮するためには欠かせません。また、経営者と社員の意識を合わせるためにライブ感覚を大切にしていることがわかります。まるでSNSがリアルな空間に具現化したような雰囲気をつくり、社員同士のみならず、世界中の顧客やパートナーとつながるワークプレイスを実現しているのです。

「情報処理」から「知識創造」へのパラダイムシフト

続いて東京工業大学准教授の妹尾大さんが、理論面のフレームワークを提示してくれました。妹尾さんの研究の2大ターゲットは「場」と「ワークスタイル」。人と人との文脈の共有が知識創造に影響を与え、それを促すのは働き方にほかならない、というわけです。

妹尾大さん(東京工業大学大学院准教授)

知識創造を実践するには、「刺激し合う」「アイデアを表に出す」「まとめる」「自分のものにする」というプロセスの循環が重要だそうです。こうした場面が現れやすいワークプレイスこそ、目指すべきオフィス像だと妹尾さんは指摘します。かつてオフィスに求められていたのは、働く人たちから文句が出ない「快適性」、仕事がはかどる「機能性」といった点でした。しかし今後は、「創造的」で人が育つような空間であることこそ、理想のオフィスにほかなりません。

当然、個人の働き方も変わってきます。これまでは、単発の問題解決を繰り返す情報処理的な仕事のやり方でした。あてがわれた問題に対して、マニュアルのようにあらかじめ用意されていた「形式知」を用いて計画どおりにこなせば、それでよかったわけです。

知識創造を実践する12の行動(出典:クリエイティブ・オフィス・レポートv1.0(2007))

しかしこれからは、問題の発見と解決を同時に行う知識創造パラダイムが求められます。すなわち、自分で問題を集めて発見し、意外性のある新しい産物をつくっていく。同時にそのプロセスから新しい仕事が生み出されなければならない、というわけです。

働き方を見直す前に自信を取り戻そう

コンサルタントの立場から、イノベーションの現場での組織のあり方と働き方の変化について実践面のヒントを提供してくれたのは、株式会社富士通総研産業事業部の佐々木哲也さん。

佐々木哲也さん(株式会社富士通総研シニアコンサルタント)

いま企業では、イノベーションに向けた「共創」が模索されています。消費者やNPOなど「社会」との共創や「他社」との共創。けれども、最も身近であるはずの社内での「他部門」との共創が、意外に成されていないことが多いようです。

共創に必要なのは「概念」と「実践」を行き来すること。得てして、コンセプトとビジネスモデルが曖昧なまま現場だけで突っ走るケースと、その逆に理屈ばかり先行して「仮説――検証」のプロセスが伴わないケースが見受けられます。


共創に必要とされる活動(資料提供:佐々木哲也さん)

社会や他社との共創に成功している組織は、「発注する人と請け負う人」ではなく「調達する人と形にする人」という対等な関係性、つまり一つの事業目的に対してイコールパートナーシップが築かれていることが多いそうです。

知識創造には、会社で培ってきた資産に対する敬意や、経験・ノウハウ・知識の尊重など、企業内における「相互信頼基盤」を回復する必要があります。その基盤があって初めてICTも支援環境として機能するはず。働き方を見直す前に、もう一度自分たちのよいところに自信を持ち、そのうえで、本気で挑戦したいことは何か原点に立ち戻って考えるべき、と佐々木さんは指摘しました。

3名の経験や専門に基づくプレゼンテーションをふまえ、プログラムはここから、後半のディスカッションへと進んでいきます。

後編に続く


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