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新しい事業機会のフロンティアは、“地域”に潜む? ──アクティブワーキング@福知山(1)

2017年07月12日



新しい事業機会のフロンティアは、“地域”に潜む? ──アクティブワーキング@福知山(1) | あしたのコミュニティーラボ
都市で働くビジネスパーソンが地方に短期滞在して、ふだんの仕事もしながら地域の産業や活動の実態に触れる「アクティブワーキング」ツアーが、京都府福知山市内で開催された。2015年に宮崎県日南市で行われた初ツアー以来、自治体としては2件目の実施となる今回、あしたラボ編集部は再びツアーに同行し、地域と参加者の期待や開催までの経緯を探ってみた。本稿では、アクティブワーキングについてあらためてご紹介するとともに、企業から見た参加の価値に焦点を当てたい。彼らはどんな期待をもって、アクティブワーキングに参加したのか。

多種多様なインタラクションが、課題を乗り越える足がかりになる? ──アクティブワーキング@福知山(2)
地域がアクティブワーキングを必要とする理由は? ──アクティブワーキング@福知山(3)

企業のバリューチェーンと地域おこしを結びつける現場

企業と地域が互いのニーズを満たすために出会う。「アクティブワーキング」とはそんな、複合的な効果をねらった事業だ。

アクティブワーキングの概念図(編集部制作)
アクティブワーキングの概念図(編集部制作)

参加対象は、主にビジネスパーソン。地域に短期滞在し、地域の魅力や課題に直に触れることができるオプショナルツアーを体験する。開催期間はおおよそ5日間程度。その間、参加・離脱のタイミングは自由だ。目的と興味に応じて、1〜2日だけでも良いし、5日間滞在して希望するツアーのみに参加し、空いた時間はコ・ワーキングスペースで日常業務を続けることもできる。よくある宿泊研修と違うのは、仕事をしながら地域の現場を体験し、新規事業のヒントなどの気づきを期待できること。つまりは新しい働き方の模索でもあるのだ。

オプショナルツアーを設計するのは自治体職員。独自の活動に取り組む地域の企業・団体・個人をピックアップし、アテンドする。ツアーを受け容れる地域の企業や人々にとっての期待は、自分たちの広報活動だけではない。自らが直面する真の課題をツアー参加者に提示すれば、外部ならではの視点でアイデアを提供してもらえるなど、新たな刺激を受けることにもなる。ビジネスチャンスも潜んでいるかもしれない。自治体にとっては、外部からの視点と接点を通じて公民連携のきっかけをつくり、地域活性化への手立てを拡充できる可能性を高める。

「地域は、新規事業創出のヒントになる」

2回目の実施となる京都府福知山市でのアクティブワーキングでは、「教育」「林業」「農業」「ジビエ」「障害者雇用」「子育て」など、この地域ならではの特長が出た多彩なテーマがオプショナルツアーのリストに並んだ。このツアーでは、地域から参加者への一方的なプレゼンに留まらず、交流しながら互いに触発されるところがポイントだが、地域の抱える課題が参加者に投げかけられた場面も少なからずあった。また、1日が終わった後に参加者同士で「振り返り会」を設けたのが初回の日南市ではなかった試み。密度の濃い体験を新鮮な記憶のうちに反芻し合って、多様で異質な視点からあらためて気づきを深めることがねらいだ。

アクティブワーキング@福知山の開催スケジュール(提供:福知山市)
アクティブワーキング@福知山の開催スケジュール(提供:福知山市)

期間中の参加者は総計18名。企業のビジネスパーソンや、独立した個人事業主などが名を連ねた。いったい、今回のアクティブワーキングにどんなことを期待していたのだろうか。

株式会社TAMの取締役で、ものづくりの現場を紹介するウェブサイト「しゃかいか!」を運営する加藤洋さんは「大企業で働く人が地域とどのような関わり方をもつのか、地域から何を学ぶのか見てみたい」と、地域と企業の化学反応そのものに関心を寄せる。「企業人が地域のなかに入ってどう資源を見つけ、どう加工して自分の仕事に結びつけるか。企業のバリューチェーンと地域おこしを結びつける現場として、アクティブワーキングは有効だと思いました」。

株式会社TAM取締役の加藤洋さん
株式会社TAM取締役の加藤洋さん

「新規事業創出の参考に」と望むのは、アサヒグループホールディングス株式会社 経営企画部門マネージャーの上籔寛士さん。「自社のリソースだけでは既存の価値を超えられません。外部とのアライアンスが必要。なかでも“地域”は可能性の高い選択肢の1つです。どんな組み方があるのかヒントを得られれば──」。

都市部に本社をもち、マスマーケットに照準を合わせる大企業にとって「地域」は今まであまり視野に入れてこなかったフロンティアに違いない。言うまでもなく日本の地域にはさまざまな課題が集約されている。課題が多いところにビジネスチャンスも潜在する。イノベーションを起こす場として、地域に関心を寄せる企業は少なくないようだ。

アサヒグループホールディングス株式会社 経営企画部門マネージャーの上籔寛士さん
アサヒグループホールディングス株式会社 経営企画部門マネージャーの上籔寛士さん

宮崎県日南市でのアクティブワーキングを報じた新聞記事を読んで、「実際に体験してみないと腹落ちしない」と参加したのは、富士通エフ・オー・エム株式会社 地域ビジネス本部関西営業部の片岡小百合さん。「地方に短期滞在しながらふだんの仕事も続ける。モバイル・ワーキングなど多様な働き方が出てきているなかで、現実味のある話なのか、確認したかった」と働き方に着目している。

富士通エフ・オー・エムの片岡小百合さん
富士通エフ・オー・エムの片岡小百合さん

ピンポイントで訪問先に興味を魅かれ、参加する人も少なくない。一羽まるごとロスのない鶏肉を使った飲食店と加工品の卸売業に携わるトリ風土研究所 代表トリ締役の宮武裕右さんは、鹿肉料理を社員食堂で出すエスペック株式会社と、同社に鹿肉を提供する“ジビエハンター”垣内忠正さんへの訪問がお目当てだ。「ジビエに関する知識がないので、これを機会に少し探りたい」と話す。

株式会社トリ風土研究所代表トリ締役の宮武裕右さん
株式会社トリ風土研究所代表トリ締役の宮武裕右さん

多くの参加者に共通する期待は、地域の実態、課題意識や対策などを知り、自分の仕事とリンクさせたうえで、どんな新しい取り組みにつなげられるか──その機会を探ることのようだ。そのためには一方的に情報を得るだけではなく、より掘り下げた質問を投げかけたり、逆に地域が提示した課題の解決につながるヒントを提供したりといったインタラクションが必要。そんな場を、意図的に設定していることに価値を見出しているのが、アクティブワーキングへの大きな参加動機と見受けられた。

地域にめいめいの期待を抱き、今回のアクティブワーキングに参加した企業のビジネスパーソンたち。では、現場ではどんなやり取りが行われたのだろうか。次回は、実際のアクティビティの様子をご紹介するとともに、そこから見出した企業にとっての価値を掘り下げていく。

多種多様なインタラクションが、課題を乗り越える足がかりになる? ──アクティブワーキング@福知山(2)へ続く
地域がアクティブワーキングを必要とする理由は? ──アクティブワーキング@福知山(3)

ふつうに仕事をしていれば、地域の魅力が見えてくる!? ──アクティブワーキング@日南(前編)
行政だけでも、地域だけでもだめ。地域課題をあぶり出すエコシステム ──アクティブワーキング@日南(後編)


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