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「鳥取県×日本財団」共同プロジェクトの挑戦──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(2)

2017年08月08日



「鳥取県×日本財団」共同プロジェクトの挑戦──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(2) | あしたのコミュニティーラボ
人口が日本一少ない県だからこそ実現しやすい「住民自治による地方創生モデル」の構築を目指して、鳥取県と日本財団の共同プロジェクトが2016年からはじまっている。5年間で総額30億円という大規模な助成を想定するこの社会実験は、自立的で持続性の高い取り組みに対して支援を行う。鳥取県と日本財団、それぞれの共同プロジェクトにかける意気込みはどんなものなのか。支援を受けることになった取り組みの1つである「もちがせコミュニティまちづくり」を例に、住民による自治力の向上で地域を活気づける道筋を探ってみたい。

鳥取県にみる“住民自治”の潜在力──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(1)
平井県知事が描く、これからの地域モデルとは?──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(3)

地域全体との共同事業は日本財団でも初の試み

(1)で紹介したとおり、かねてより住民が主体となった地域おこしが活発な鳥取県。

2015年11月には鳥取県と日本財団が協定を締結し、翌年から共同プロジェクトを本格スタートさせている。このプロジェクトの枠組みのなかで「県民一人ひとりが参加する地方創生のモデルとなるプログラムづくり」を助成していくという。

プロジェクトの概要(提供:鳥取県)
プロジェクトの概要(提供:鳥取県)

日本財団が鳥取県と共同プロジェクトをはじめたねらいについて、日本財団鳥取事務所所長・木田悟史さんは次のように語る。

「これまで福祉や貧困などの社会課題の解決に向けて、イシューごとに地域と連携したことはありました。しかし、単独イシューではなく地域単位でステークホルダーの方々とともに事業を形成するのははじめての試み。だから日本財団としても、ある意味チャレンジなのです。人口減少や高齢化を背景とした多様な地域課題に対し、実態の伴う手段を見出す取り組みをはじめています」

日本財団・鳥取事務所所長の木田悟史さん
日本財団・鳥取事務所所長の木田悟史さん

日本財団は聴覚障害者を支援する「手話パフォーマンス甲子園」で以前から鳥取県と連携の実績があった。対して鳥取県側は経営品質管理を導入して行政改革を成し遂げ、人口最少県(およそ56万8,700人/2017年3月現在)であることを逆に利点として、先駆的な施策を速やかに実践してきた。それらの取り組みを牽引してきた平井伸治知事のリーダーシップも今回の共同プロジェクト実現の要因といえる。小規模だからこそ社会実験のフィールドとしてふさわしく、成果も見えやすい。

5年間で総額30億円という大規模な助成を想定し「日本一のボランティア先進県へ」を標榜している。この意図は「社会動態がどう変化しても自活可能な住民の自治力を高めるきっかけ」(木田さん)をつくること。そのためには、助成金の拠出が終わっても活動を継続できるような案件を支援しなければならない。

たとえば、(1)で先行事例として紹介した、智頭町の「百人委員会」のような案件は行政への“要望”ではなく“提案”を住民主導でかたちにしている。このような、地域経済を循環できる可能性の高い活動や事業を支援してこそ、助成金は未来への投資となり、真価を発揮できる、というのが日本財団の考えだ。

年齢、属性……多様な声が意思決定に反映されているか

そうした視点で「この1年間県内をめぐり、わかってきた」ことが木田さんにはある。「独立独歩の自活が大切という問題意識を共有できるのは、たいてい若い女性や子育て中のお母さんなどがメンバーに入っている自治組織です。県内で住民自治の組織は100以上立ち上がっていますが、その大半は主要メンバーが50代以上の男性。なかでも旧来型の自治組織では、行政への要望や依存が強くなりがちです。女性や若い人をはじめ、多様な声が意思決定のプロセスに反映されているかどうか。そこが1つのカギではないかと思います」

たとえば、県の西南端に位置する日南町多里。まだ案件化されていないが、ワークショップを4回実施し、プロジェクトが3つほど生まれそうだという。「中学生からお婆さんまで、年齢も属性も多様な人が集まっていました。“何がしたいですか?”と問いかけなくても、勝手にワイワイガヤガヤ話し合いがはじまり、どんどんいろんな意見が出てくる」と木田さん。そんな日南町多里のような地域に、木田さんは可能性を感じている。

一方、鳥取県側でこのプロジェクトを担当する福田隆さん(共生社会プロジェクト推進室室長)によれば、今後は助成金申請書の受理方法も変える予定だという。これは、申請案件を少しでも持続可能な方向へ促すため。

「申請書提出に先立つ事前相談を必須にするつもりです。日本財団さんから助言いただき、採算性の見直しや他地域への横展開の可能性など、さまざまな側面から申請者と共に検討して事業の精度を高めたい」と福田さん。同室課長補佐の岩田朗さんも「地域課題に取り組むNPO法人も県内に多いです。これを機会に日本財団さんの外からの目を活用して視野を広げ、持続的に活動できる組織が増えてほしい」と話す。

(写真左から)鳥取県共生社会プロジェクト推進室の福田隆さん、岩田朗さん
(写真左から)鳥取県共生社会プロジェクト推進室の福田隆さん、岩田朗さん

地域と学生が連携して起業する成功モデルを

では、支援の対象となる「自立的で持続可能性の高い事業」とは、具体的にどのような取り組みを指すのか。

たとえば2016年6月に発足した「もちがせコミュニティまちづくり」。鳥取市用瀬町(もちがせちょう)は県東南部に位置し、道の脇を流れる清らかな小川のせせらぎが印象的なまちだ。

鳥取県東南部にある用瀬町。2004年11月に鳥取市へ編入合併されている
鳥取県東南部にある用瀬町。2004年11月に鳥取市へ編入合併されている

「もちがせコミュニテイまちづくり」は、元行政マンと関西にネットワークのある地元の有志2人、それに加えて公立鳥取環境大学の学生が立ち上げた任意団体。ノウハウとリソースをもつ年配の地域住民と、アイデアとパワーあふれる若き“よそ者”がタッグを組んで地域を盛り上げようとしている。

もちがせコミュニティまちづくり事務局長の岩田直樹さんは、岐阜県出身で公立鳥取環境大学経営学部4年生。1年生のときサークル「起業部」を立ち上げ「学んだ知識を実践したい」と屋台イベントや商品開発などを手がけるうち、「用瀬で起業してみないか」と地元の有志2人から誘われた。

もちがせコミュニティまちづくり事務局長の岩田直樹さん
もちがせコミュニティまちづくり事務局長の岩田直樹さん

県外や海外との交流を増やすことで地域に活力を取り戻すビジョンと「僕のやりたかったことが重なって」、岩田さんは住まいを中心市街地から用瀬に移した。2017年からは、空き家を活用して“体験型民泊”を提供する事業「週末住人の家」を本格的にはじめている。「用意されない体験」がキーワードと岩田さん。

「山歩きで拾った素材で工作し用瀬駅を飾り付けたり、干支の動物を地元の窯で焼いたり──自分なりの楽しみ方で用瀬の良さを体験できるメニューです。空き家を借りた1日限定の駄菓子屋オープンのトライアル企画では地元の子どもたちと家族が集まって大盛況でした。豊かな自然に親しみ、オープンでのんびりした住民と触れ合う体験を通じて、用瀬好きのリピーターを増やしたい。インバウンド観光客や、県の大学生向けワーキングホリデー事業の受け皿にもなります」

「週末住人の家」というキャッチーなネーミングのコンセプトは、地域の魅力を体感してもらい固定ファンを増やす敷居の低い入口となり、多面展開の可能性が高い。8月には2軒目の空き家を活用した民泊施設が開く。「今は用瀬町だけですが、ほかの地区や周辺地域、さらに県全体へと拡げていき、地域と学生が連携して起業した成功モデルをつくり上げたい」と意欲を燃やす岩田さんは「5年から10年は本気で取り組むつもり」と卒業後の進路に決めている。

カフェ「川のhotori用瀬」は、古民家を改修して約1年前にオープン。「もちがせコミュニティまちづくり」メンバーの協力も得ながら、いまでは特産品の販売や地域でのコミュニケーションスペースとして活用され、地域の多世代交流拠点となりつつある
カフェ「川のhotori用瀬」は、古民家を改修して約1年前にオープン。「もちがせコミュニティまちづくり」メンバーの協力も得ながら、いまでは特産品の販売や地域でのコミュニケーションスペースとして活用され、地域の多世代交流拠点となりつつある

鳥取県から巻き起こる「自立的で持続可能な地方創生」。そのDNAは日本財団との共同プロジェクトを通じ、また新しいかたちで花開くことだろう。最終回となる(3)では、鳥取県・平井伸治知事にご登場いただき、「自立的で持続可能な地方創生」について総括いただいた。

平井県知事が描く、これからの地域モデルとは?──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(3)へ続く
鳥取県にみる“住民自治”の潜在力──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(1)


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