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平井県知事が描く、これからの地域モデルとは?──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(3)

2017年08月08日



平井県知事が描く、これからの地域モデルとは?──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(3) | あしたのコミュニティーラボ
人口が日本一少ない県だからこそ実現しやすい「住民自治による地方創生モデル」の構築を目指してスタートした、鳥取県と日本財団の共同プロジェクト。最終稿となる本稿では、鳥取県・平井伸治知事にご登場いただき、「自立的で持続可能な地方創生」について総括いただいた。なぜ5年間で総額30億円という大規模な助成を決断したのか。助成の先に見据える、理想の地域モデルとは? 

鳥取県にみる“住民自治”の潜在力──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(1)
「鳥取県×日本財団」共同プロジェクトの挑戦──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(2)

「周回遅れのトップランナー」が社会的投資を実験

(1)の冒頭で、智頭町の取り組みを自立的で持続可能な住民自治の先行事例として紹介した。〈県民とともに進める地方創生〉を標榜し、県民総参加による取り組みを進める鳥取県・平井伸治知事は、その智頭町をシンボルとして顕彰しつつ「周回遅れのトップランナー」と鳥取県を形容する。

「鳥取県では戦後日本の発展から取り残されがちだった影響が、人口減少や産業の衰退、中山間地の潜在力の低下といったかたちで現れ続けていました。しかし、いまやそうした大きな課題はどの地域にも横たわっています。鳥取県は地域課題の解決にむけて、他の地域よりずっと昔から取り組んできたのです。その反面、自然の豊かさ、支え合いの絆の強さ、子育てのしやすさといった大都市では消えてしまった人間らしい暮らしの基本条件が残っていて、オルタナティブな選択肢の最先端にもなりはじめているのです」

鳥取県・平井伸治知事
鳥取県・平井伸治知事

日本財団との共同プロジェクトを「社会的な投資」と平井知事は捉えている。「投資であるからにはいずれリターンが必要です。そのためには持続可能なビジネスモデルを地域で成立させなければいけません。日本財団さんと伴走して検証しながら、開きかけている地域の扉を全開にするお手伝いをします」。

地域モデルの基盤となるのは、「支え合いの絆の強さ」といった都会にはない特性だ。鳥取県では今年1月23日に大雪が降り、智頭町を中心に大渋滞が発生し、多くの人が長時間のあいだ自動車の中に閉じ込められた。その際に、大内集落の人たちはコミュニティセンターを開放して子どもの遊び場やトイレを提供し、吹雪のなか1台1台に炊き出しのおにぎりと味噌汁を配った。

鳥取県の山間部は雪の多い地域として知られる。今年初頭には、2度の大雪災害に見舞われた(提供:鳥取県)
鳥取県の山間部は雪の多い地域として知られる。今年初頭には、2度の大雪災害に見舞われた(提供:鳥取県)

「感謝の手紙が多く来ました。見ず知らずの人たちの窮地を前にして、自分たちが力を合わせれば事態を乗り切れる──経済効率性はないかもしれませんが、社会的には合理的な行為です。たぶん東京や大阪では難しく、鳥取だからこそできたことでしょう。この先に地域モデルの方向性があります」と平井知事。

共同プロジェクトが支援する「持続可能なビジネスモデル」の一例として平井知事は、今年1月に開所したNPO法人運営の障がい者就労支援施設「Studio-E」(鳥取市雲山)を挙げる。大型の商業印刷機を導入し、それまで外注していた製本を内製化することで削減した経費を賃上げに回した。Skypeを使った在宅勤務を可能にするなどオフィスもクリエイティブに整え直した。「障害者の工賃向上と理想的な職場環境のモデルとして意義深い挑戦です。比較的低コストで実験してから軌道に乗せられるのが地方の強み」と平井知事は期待をかける。

活力と安心が調和した先に、持続可能な未来が拓かれる

X軸を「活力」、Y軸を「安心」とすると、この2軸が適度に調和し、ベクトルはなだらかに右肩上がり。これが平井知事の描く地域づくりの理想像だ。

「大都市部はたしかに活力軸が非常に強い。けれども安心軸に欠けるところがあるかもしれません。収入はそこそこでも豊かな自然のなかで子どもが健やかに育つ。いざとなったら近所の人が新鮮で美味しい野菜をおすそわけしてくれる。これは、昔の日本に確かにあった持続可能な地域社会モデルの1つです。なぜ日本財団さんが鳥取を社会実験のフィールドに選んだのか。私なりに考えるに、日本が本来もっていたしたたかな魅力を、人口最小県だからこそ最大限に取り戻せるかもしれない、ということなのではないでしょうか」

平井知事は大学卒業後に自治省に入省。さらにその後は鳥取県総務部長、副知事などを経て、2007年に鳥取県知事選挙に出馬し初当選。現在まで3期を務めている
平井知事は大学卒業後に自治省に入省。さらにその後は鳥取県総務部長、副知事などを経て、2007年に鳥取県知事選挙に出馬し初当選。現在まで3期を務めている

県中央部の湯梨浜町・松崎はさびれた温泉街だ。しかし最近では、風光明媚な湖畔や湯の町風情に魅かれた若者が都会から移住し、シェアハウスや塾を開いている。2016年10月21日午後2時7分に最大震度6弱の鳥取県中部地震が発生したとき、商店街にいた高齢者を安全な駐車場まで誘導したのは移住者の若者たちだった。

古くからの地域住民と新しい移住者が融合してコミュニティーの活力と安心を取り戻す。これを平井知事は「人口の再構成」と呼び「鳥取のみならず日本のあらゆる地域で求められている課題」と指摘した。智頭町の寺谷誠一郎町長が掲げる「いざというときに身寄りのないお年寄りを誰が助けるか集落のなかで決めておく」という、きめ細かい福祉策とも呼応している。

現実を見据えない拡大志向の成長を夢見たり、助成金の獲得だけを目的としたその場しのぎの施策が繰り返されたりするのなら、「地方創生」は絵に描いた餅に終わるだろう。そうではなく、独立独歩の住民自治によって現状に見合った活力と安心を調和できれば、ゆるやかに持続可能な未来を拓いていけるに違いない。鳥取県と日本財団の共同プロジェクトにはその希望が託されている。

鳥取県にみる“住民自治”の潜在力──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(1)
「鳥取県×日本財団」共同プロジェクトの挑戦──鳥取県発・自立的で持続可能な地方創生とは(2)


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