Cases
社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

正のフィードバックループをどう起こす? 神戸発のサービス「RALLY」と「SeekAt」に学ぶ

2017年08月30日



正のフィードバックループをどう起こす? 神戸発のサービス「RALLY」と「SeekAt」に学ぶ | あしたのコミュニティーラボ
特集「創発のデザイン〜発散を収斂させるためのヒント〜」では、国内企業のさまざまな動向に迫ってきた。それらはいずれも、会社や地域という枠のなかだけに留まることなく、外向きに機会を拡げるアクションからはじまる傾向にあった。なかでもオースティンで毎年開催されるSXSWは、外向きアクションを起こすための絶好の機会となっているようだ。 そうして外で得たものを、どのようなかたちで自社の新規事業・社会実装へとフィードバックしていくのか。自社サービスへの実装に取り組む事例として、いずれも神戸市に拠点を置きながらSXSW2017へ出展した企業(株式会社フェイスクリエイツ株式会社神戸デジタル・ラボ)に話を伺った。

世界進出に向けたテストマーケティングとして──「RALLY」

神戸市中央区に本社を置く株式会社フェイスクリエイツ。同社は近年、誰でも簡単にモバイルスタンプラリーをつくれるサービス「RALLY」(ラリー)をリリースした。

RALLYのサービス概要はこうだ。

イベント企画者はユーザー登録後、RALLYのサービス上であらかじめ複数のスポットの位置情報(GPS)を登録しておく。さらにテンプレートとパターンを選択しながらデザイン設定すれば、それだけで簡単にスタンプラリーを作成できる。最短5分での作成が可能だという。

スマホで遊べるスタンプラリーを最短5分で作成可能(提供:株式会社フェイスクリエイツ)
スマホで遊べるスタンプラリーを最短5分で作成可能(提供:株式会社フェイスクリエイツ)

ユーザーはブラウザでアクセスするだけで参加が可能で、事前登録されたスポットを巡りながら数々のスタンプを獲得していく。ちなみに位置情報のほかQRコードでスタンプを押すことも可能。無料で作成ができるFreeプランではスタンプラリーのデータを14日間保存可能。参加者250名、スポット数12箇所までならこのFreeプランのなかで利用できる。

「システム開発、アプリケーション開発はどうしてもそれなりのコスト、スキルが伴い、ITを使うことを諦めてしまうお客様も多い。RALLYは小規模ならお金もかからないし、デザインやプログラミングのスキルがなくても、誰でも簡単にスタンプラリーを作成できるんです」

そう話すのは、同社代表取締役の大山雄輝さん。

RALLYは国内リリース後、観光施設、展示会、商店街など、すでにさまざまなシーンで活用されている。最近では、奈良県生駒市の子育て支援施策や、関西国際空港で実施された「関空旅博2017」のデルタ航空の企業ブース回遊などでRALLYを活用したスタンプラリーが実施された。

フェイスクリエイツ代表取締役の大山雄輝さん(右)。写真左は、入社2年目の雑賀雪姫さん。SXSWにも帯同した雑賀さんいわく「当社では『自分で考える、自分で決める』ということを常に求められ、そういうふうにして働いている先輩方がすごくカッコイイと思う」
フェイスクリエイツ代表取締役の大山雄輝さん(右)。写真左は、入社2年目の雑賀雪姫さん。SXSWにも帯同した雑賀さんいわく「当社では『自分で考える、自分で決める』ということを常に求められ、そういうふうにして働いている先輩方がすごくカッコイイと思う」

そうしたなかで大山さんらはRALLYを引っ提げ、SXSW2017のTrade Showに出展した。

「狙いは世界進出です。当然2020年に向けた訪日観光客に対するアプローチも考えています。スタンプラリーという文化は日本独特のもので、海外ではあまり知られていない。SXSWへの出展は海外市場を見据えた“テストマーケティング”の意味合いが強く、会期中の僕らはサービスの売り込みなんてまったくしていない。ただただスタンプラリーをやって帰ってきた感じでした(笑)」

SXSW2017では来場者が日本ブースを巡ってスタンプを集め、RALLY特設ブースのくじ引きで日本酒やお菓子といった景品が当たるスタンプラリーを企画した。ともすれば、ロボットやウェアラブルデバイスといった最先端テクノロジーが集まるSXSWには似つかわしくない企画だが、海外の人たちの反応はすこぶるよかったという。「なかでもアジア圏の人たちはスタンプラリーというものに対して、超がつくほど好意的でした」と大山さん。多国籍が集まるSXSWだからこそできたテストマーケティングだっただろう。

「RALLYは、僕たちが考え、僕たちが行動し、僕たちが結果を得ていく——そんなチャレンジなんです。神戸ではIT系ベンチャーがグローバルにサービスを展開させようとしているケースがまだまだ少なく、結果的に世界を目指す学生たちが東京へと出ていってしまう。東京に行かなくても、シリコンバレーに行かなくても……はたまた、どこかから大きな投資を受けなくても世界を目指せるということを示していきたい」

地図アプリの課題は万国共通?——ナビアプリ「SeekAt」

フェイスクリエイツと同様に、SXSW2017の Trade Showに出展したのが、同じく神戸市中央区に本社を置く株式会社神戸デジタル・ラボ。同社は阪神淡路大震災のあった1995年に設立されたIT企業だ。

SXSWに出展したのは「SeekAt」(シークアット)。まちなかでスマホをかざすだけで、今いる地点から目的地がどちらの方向にあるのかガイドしてくれるナビアプリだが、サービスの特徴はそれだけではない。

実際にSeekAtの画面をのぞいてみよう。画面には施設情報だけではなく、オレンジ色のボールが弾んでいる場所がある。これはTwitterから位置情報付きのツイートデータの頻出度を拾った「人気スポット」で、ボールが高く弾んでいるほど「人気の高いエリア」であることを表しているという。さらにスクリーンに表示されていないところに人気スポットがあるときには、その方角からシャボン玉が飛んできて、そちらにスマホをかざすと、そこでボールが高く弾んでいる場所(人気スポット)を発見できる。

SeekAtはなにがどの方角にあるのか、という直感的な情報を教えてくれる
SeekAtはなにがどの方角にあるのか、という直感的な情報を教えてくれる

スマホの地図アプリを使っていたら、東西南北がわからなくなり、いつのまにかまったく違う方向に向かっていた——そんな経験は誰にでもあるだろう。SeekAtは「ざっくりと方向だけを直感的に示してくれるから、逆にわかりやすい」という、ある種、地図アプリの特徴を逆手に取ったアイデアだといえる。

SXSW2017に出展してみたところ「そうした地図アプリの課題は万国共通であることはわかった」と、同社の取締役兼先端技術開発部長の山口和泰さん。

株式会社神戸デジタル・ラボ 取締役兼先端技術開発部長の山口和泰さん
株式会社神戸デジタル・ラボ 取締役兼先端技術開発部長の山口和泰さん

「だからこそSeekAtは日本のみならず、世界を狙えるアプリ。特にアメリカなんかは、工事現場やスーパーマーケットなど規模からして日本と違っていて『どこにいま作業員がいるのか』『どこで商品が安売りしているのか』など、使われるシーンにもさまざまな可能性を秘めている」と続ける。

さらに山口さんは「もともとの開発経緯は観光分野の課題解決のため。消費機会をつくることが目的だった」と話す。

「消費機会を増やすためには人々の滞在時間を延ばさなければいけない。そのために重要なのが“周遊”です。人々を周遊させるための情報を提供するという着想からSeekAtのアイデアが生まれました。将来的にはTwitterの位置情報のみならず、さまざまなタイプの投稿データをFacebookやInstagramからも拾ってこられるようにして、もっとサービスを発展させていきたいです」

実験装置「078」から拡大する面的コミュニティー

今年5月に神戸市で開催された「078」でも「RALLY」と「SeekAt」を使ったイベントがそれぞれ企画された。

会場の1つ、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)のトレードショー展示ブースでは「RALLY」を使ったスタンプラリーを実施。企画・運営を担当したのは神戸電子専門学校の生徒たち。実践的なインターンシッププログラムを体験した。

078当日の「RALLY」ブースの様子。企画・運営は神戸電子専門学校の生徒たちが担当した(提供:株式会社フェイスクリエイツ)
078当日の「RALLY」ブースの様子。企画・運営は神戸電子専門学校の生徒たちが担当した(提供:株式会社フェイスクリエイツ)

一方の「SeekAt」は、神戸市内の観光名所・施設情報をナビするだけに留まらず、SeekAt上に時間別で表示される「078」アイコンをゲットするとノベルティがもらえる特別企画が盛り込まれた。こちらは情報を捕獲するというゲーム性を取り入れたことで参加者の反応もよく、「新しい行動変容の可能性も見出せた」という。

そもそも078というイベント自体が、神戸で社会実装を実現する壮大な実験装置だと考えることができる。

神戸デジタル・ラボでは078当日、「SeekAt」以外にウェアラブルアプリのデモ展示なども行っていた(提供:078実行委員会)
神戸デジタル・ラボでは078当日、「SeekAt」以外にウェアラブルアプリのデモ展示なども行っていた(提供:078実行委員会)

株式会社神戸デジタル・ラボの広報室長で078実行委員でもある舟橋健雄さんも次のように話す。

「(社会)実装したいと思う側と、してもいいと思う側の両方が神戸にはそろっていて、特に『してもいいよ』という側は公の存在——行政、あるいは地域の人たち——でなければならない。その点、神戸はもともとコンパクトシティなのでサイズ的にもやりやすさがあるし、震災という共通体験をベースに持っているからこそ多様でゆるやかなつながり、まとまりがあります。何もない砂漠の田舎町だったオースティンでSXSWができたのと同じく、神戸、ひいては西日本エリアまで面的なコミュニティーが拡大すると思う」(舟橋さん)

「実験の場」としての神戸の魅力を語る舟橋健雄さん(株式会社神戸デジタル・ラボ広報室長、078実行委員)
「実験の場」としての神戸の魅力を語る舟橋健雄さん(株式会社神戸デジタル・ラボ広報室長、078実行委員)

SXSW——6th streetで見た「まずはやってみようというノリ」

SXSWに参加したフェイスクリエイツの大山さんには、オースティンで過ごして感じたことがあったという。

SXSWというと、最新鋭のテクノロジーが集まる場だと思われがちだが、それはある種の誤解である。大山さんは「もともとSXSWは音楽イベントとしてはじまった。新しいものが生まれやすい土壌の根本には『音楽』がある」と考える。実際、SXSWの会期中、メインストリート「6th street」周辺にはさまざまなジャンルのライブイベントやストリートミュージシャンが集まった。

「たとえば、近くにいたパンクスがやっていた音楽が格好いいから、それに乗せてラップを歌ってみようみたいな……。そんなことが日常的に行われているんです。音楽によって培われたそのカルチャーが着実にテクノロジーのほうでも受け継がれていて、たとえばTwitterにしても『単に新しいサービスがありますよ』ということだけじゃなく『これをどう使えばおもしろいか』とみんなが考えてくれる。RALLYに期待したのもそういうことで、実際に使ってもらい、おもしろがってもらえれば、新しい今までにない価値を生み出せるかもしれない」(大山さん)

SXSWの「新しいものが生まれる文化」は“音楽”が培ったのではないか、と語る大山さん
SXSWの「新しいものが生まれる文化」は“音楽”が培ったのではないか、と語る大山さん

実際にSXSWをきっかけにして海外からRALLYについての問い合わせが複数届いているという。

「自分のアイデアと隣の人の持っているアイデアを組み合わせたら、どんな価値が生まれるのか——まずはやってみようというノリは、SXSW独特のものだったと思います」(大山さん)

不完全かもしれないけれど、まずはやってみる——これこそがクロスメディアイベント「078」が目指している「実験を尊ぶ文化」にほかならない。発散と収斂が無限に起こるフィードバックループは、きっとこうしたコミュニティーでこそ巻き起こるはずだ。

【特集】創発のデザイン~発散を収斂させるためのヒント~


いいね!を押して
Facebookページをフォロー

あしたラボの最新情報をお届けします。

Twitterであしたラボ(@ashita_lab)をフォローしよう!

皆さんの感想をお聞かせください!





  • facebook
  •  twitter
  • USTREAM
  • RSS

Copyright 2017 あしたのコミュニティーラボ