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企業は社員に何を支援できる?
「近未来のワークスタイル」イベントレポート(下)

2013年03月11日



企業は社員に何を支援できる?<br />「近未来のワークスタイル」イベントレポート(下) | あしたのコミュニティーラボ
2013年2月15日(金)に開催された、これからの働き方を考えるビジネスパーソン対象のイベント「近未来のワークスタイル」。プログラム後半では、会場も一体となった、白熱のディスカッションが展開されました。引き続き、当日の模様を詳しくレポートします。

イベントレポート前編はこちらから

アナログの活動を支援するICTのあり方が重要に

後半は参加者からの発言を交えてのパネルディスカッションからスタート。最初に齋藤さんは、会場に向けて「自分のワークプレイスに満足しているかどうか」挙手を求めました。結果は、「おおむね満足」が35%、「何らかの課題あり」が65%でした。

「課題あり」とした参加者からは、「与えられている環境を使いこなせていない、工夫する余地が少ない」「デジタルが行きすぎてホワイトボードが少ないなどアナログのよさが活かされていない」という意見が寄せられました。

妹尾さんは「書きながら考える」といったアナログ的な手法とデジタル環境の両方が必要と述べ、佐々木さんも、リアルの世界の解像度に勝るディスプレイはなく、アナログの活動を支えるICTのあり方を目指すべきだと口をそろえます。

「組織とイノベーション」「個の主体性」という観点からみると、合理性を追求するデジタル環境だけでは「あてがいぶちのオフィス、あてがいぶちの働き方」から脱することはできず、アナログ環境の充実が不可欠のようです。

続けて妹尾さんは、ビジネスを進めるうえで「お金を払ってくれる顧客の近くにいないと、もはや競争には勝てない」ことを指摘しました。かつてイノベーションは生産現場で起こりましたが、これからは顧客との対話の中から生み出される、と主張します。顧客とのつながりを促すのが、たとえばソーシャルメディア。アナログの活動を支援し補完するICT環境とは、そのようなことでしょう。

コクヨグループでは渋谷で異業種・異文化の人が交流しながら働くメンバー制オフィス「Creative Lounge MOV(モヴ)」を運営していますが、最近の傾向として個人事業主のみならず企業内個人の会員も増えているそうです。これもまた、企業が一社の枠内でのイノベーションに限界を感じている証拠ではないか、と齋藤さんは感じています。
Creative Lounge MOV(写真提供:コクヨファニチャー)
ここで、「消費者と一緒に商品開発をしている方?」と齋藤さんが会場に挙手を求めました。すると、結果はゼロ。「それが必要だと思っている方?」という質問には60%ほど手が上がりました。

この結果に妹尾さんは、製薬会社の研究開発担当者が介護の経験を通じて、「今まで効能だけにとらわれていたが、口の中で溶けやすい薬をつくろう」と発想を変えた例を引きました。佐々木さんもまた、大手電機メーカーの早期退職者がベビー用品の販売業に転職し、子どもにケガをさせないおもちゃの開発に新たなやりがいを見出した例を引いて、ともに現場に出て顧客に近づくことの重要性を強調しました。

ヒストリーマップによる「経験の可視化」

齋藤さんはこれまでの議論を踏まえ、スキルのみならず行動力や創造性、人を巻き込む力といった個人の能力が求められており、それをどう育成するかという、マネジメントの方法について論点を提示しました。

知識社会ではかなりの部分、「筋肉」は「機械」に代替され、「頭脳」は「コンピュータ」に代替されるので、いかに「良質な能力」が発揮できる人材かをリクルーティングの場面で見分けることが重要、と妹尾さんは述べます。齋藤さんによれば、シリコンバレーで採用時の大前提となるのは、他人とコラボレーションできる人材であるかどうかだそうです。そのような能力は入社後に育めるものではない、と考えられているわけですね。

集団における人の巻き込み方について、佐々木さんは「経験の可視化」という方法論を紹介しました。プロジェクトを始めるとき、いきなり斬新なアイデアを出そうとアプローチしても無理。たとえば、会社の歩みと個人の歩みを重ね合わせたヒストリーマップを作成してみる。そこで、年齢差のあるスタッフが一堂に会してそれを話題にすると、「部長ってそんなにおもしろいことやってたんですか!」などと話が盛り上がるそうです。まさに、経験に対する敬意や尊敬が生まれ、知識創造への足がかりができるのでしょう。

共有された経験を「連結」するICTとは

個人の経験をその場の人たちが共有するために、ICTはどう活用できるのでしょうか。佐々木さんによれば、テキストだけでは拾いきれない情報があり、写真や動画や音声を入れ込んでデータベース化する必要があります。

しかし、個人の経験を各々が一方通行でプレゼンテーションするだけでは、新しい知恵は生まれません。経験を「共有」するだけではなく「連結」するためにはどうしたらよいのか、と齋藤さんは議論を進めます。

妹尾さんによれば、経験共有から経験連結へとレベルアップするためには、経験の中でも他人に伝えにくい暗黙知を互いに感知し合う必要があるのですが、これは並大抵のことではありません。感知能力の差や相性の差があるからです。状況の中で行為は即興的に組み立てられ、環境と相互作用しながら知識は組み立てられる。まずは暗黙知が生まれるこうした背景の理解が欠かせません。

暗黙知をICTで表現するのは難しい。ならば、リアルな人工物にラベルやシールを貼るような感覚で情報や経験を付加していくことはできないか。AR(Augmented Reality=拡張現実)といったICTの進展によって、その可能性が見えつつある、と佐々木さんは未来に期待をかけます。

「共創」「コラボ」は誰にでも可能なのか?

質疑応答では、アナログとデジタルの使い分け、融合について活発な議論が展開されました。そして会場から最後に投げかけられた大きな課題は「共創やコラボレーションの大切さはこうした場ではよく耳にするけれど、一般社会ではあまり聞かない。意識の高い人たちの間だけで議論されているのではないだろうか? 間をつなぐようなアイデアは?」というものでした。

佐々木さんがコンサルティングの経験から一つの興味深いヒントを提供してくれました。それまで現場のオペレーションを専門にしていた人たちが初めてブレーンストーミングに参加し、「こんなに楽しい打ち合わせはしたことがない」と感想を漏らしたそうです。アイデアをどんどん出す人たちだけが、必ずしも新しい知識を創造するのではない。それまで創造のプロセスに参加しなかった人たちも巻き込んでいくことによって多様な視点が生まれる。そんなワークスタイルをICTがどう支援できるのか、考えるべきなのかもしれません。


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