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企業が『MAKERS』から学ぶこと イベントレポート(上)

2013年03月27日



企業が『MAKERS』から学ぶこと イベントレポート(上) | あしたのコミュニティーラボ
クリス・アンダーソン『MAKERS』(NHK出版)の思想は、もはやものづくりが限られた人たちだけの特別なものではなく、一般の人たちにも身近になりつつあることを暗示しています。では、苦境に立つといわれる日本のものづくりは、『MAKERS』にどんなヒントを見出すことができるのでしょうか。3月13日(水)夜に行われたイベントの模様を、前後編でレポートします。

ウェブのビジネスモデルが、ハードウェアにも

19時、渋谷・道玄坂にある「FabCafe」。
風が強く、イベント開始時にはあいにくの雨も降り始めましたが、悪天候を感じさせないほどたくさんの参加者が会場に詰めかけました。

インターネット文化の伝道者、クリス・アンダーソンが昨年発表した『MAKERS』。この本で語られるメイカームーブメントが、日本ではどのようにものづくりに活かされるのか。それを考えることが今回のトークセッションの目的です。

冒頭のプレゼンテーションを行ったのは、NHK出版の書籍編集者で『MAKERS』も担当した松島倫明さん。本イベントのモデレーターとして、最初にメイカームーブメントの概要を紹介しました。

松島倫明松島倫明さん(NHK出版 学芸図書編集部・『MAKERS』担当編集者)

クリス・アンダーソンによれば、メイカームーブメントは第三次産業革命です。18世紀イギリスの産業革命が第一次なら、第二次はPCとプリンタによって一般の人でもDTP(デスクトップパブリッシング)が可能になり、さらにはウェブによって誰もがオンラインでアイデアを公開できるようになった。このように「創造のツール」と「流通のツール」が民主化されたことの延長線上に、今まさに第三次産業革命が起きようとしています。松島さんは四つのキーワードでメイカームーブメントの要点を整理してくれました。

第一にラピッド・プロトタイピング。 3Dプリンタ、CNC装置、レーザーカッター、3Dスキャナといったデジタル工作機器が安価でコンパクトになったことで、誰もが簡単に素早く試作品をつくれるようになりました。

第二にオープン・オーガニゼーション。ウェブを通じて製造・流通行程のサプライチェーンを活用すれば、一個人が製造業に参入できます。アイデアとクレジットカードさえあれば、工場を持たなくても自宅のベッドルームでものづくりが始められる時代がやってきている、というわけです。

第三にクラウド・ファンディング。ものづくりで最大のネックになる先行投資の資金がウェブのファンディングサイトで調達できるようになりました。そのアイデアをよいと思った不特定多数の人が投資するので、資金調達のプロセス自体が市場調査になり、口コミ効果による広告宣伝にもつながります。

第四にオープンソース・ハードウェア。ソフトウェアと同じようにハードウェアも「フリー」になる日は遠くないかもしれません。設計製造のデジタル情報を無料でシェアし共創することでイノベーションが加速し、それを活用してつくった「もの」は有料で販売する。そんなビジネスモデルを実現できます。

このようにメイカームーブメントの大きな可能性とは、これまで築き上げられてきたウェブのビジネスモデルがハードウェアにも適用できるようになることだ、と松島さんはまとめました。

『MAKERS』著者クリス・アンダーソン(提供:松島倫明さん)『MAKERS』著者 クリス・アンダーソン(提供:松島倫明さん)

社会的課題を解決するものづくりの場として

続いて「FabLab Shibuya(ファブラボ渋谷)」を運営する梅澤陽明さんが、メイカーズムーブメントの拠点であるファブラボの実態を紹介し、そこでどんな新しい創造性が生まれる可能性があるのか、ひもといていきました。

梅澤陽明梅澤陽明さん(FabLab Shibuyaファブリケーター)

梅澤さんによればファブラボとは「みんなの研究室」。図書館に本を読みに来るように、ものをつくりに来る場所です。10年前にMIT(マサチューセッツ工科大学)から広がった活動で、現在20か国以上、240か所にあり、年間2倍の勢いで増え続けています。日本では2011年5月に鎌倉、つくばの2拠点が活動を開始し、2012年11月から渋谷がスタートしました。3Dプリンタやレーザーカッターなど共通の工作機械を備え、ほぼあらゆるものをつくるためのオープンな市民工房とその国際的ネットワークを持つ場所。それがファブラボです。

世界のFablab拠点マップ世界のFablab拠点マップ

「つくる」場だけではなく、ウェブを通じて世界のファブラボとディスカッションをしたりデジタルデータをシェアし共創したりと、「つながる」場であることがファブラボの特徴。重視する三つのキーワードは「learn」「make」「share」――学んで、つくり、みんなで共有します。

梅澤さんは、iPadのアプリと連動して3Dプリンタで出力したアクセサリーや、古いミシンに新機能を付け加えたり、家の壁や床をレーザーカッターでつくるなど、ファブラボ渋谷での活動を紹介してくれました。

10万人に届く商品をつくるのがこれまでの「メーカー」なら、1万人に届く商品をつくるのがこれからの「メイカー」だと梅澤さんは考えます。

100を102にスペックアップするのではなく、0から1を生み出す。そんな活動が世界のファブラボでは増えています。インドの農村の少年がネットにつながりたい一心でファブラボに通い、エンジニアたちと知識を共有してつくったWi-Fiアンテナ、天気をログして効率的に農作物を栽培するためのウェザーデータロガー、停電の多い地区での人力発電機などがその一例として挙げられました。

日本でもこうした社会的課題を解決するビジネスとしてのものづくりが増えてほしい、と梅澤さんは願っています。その想いを実現するためのプロトタイピングの場がファブラボにほかなりません。ここをインフラとして教育、まちづくり、製品試作、研究開発、町工場活性化などさまざまなプロジェクトが進行しています。一時の流行に終わるのではなく、メイカーズムーブメントが文化として定着することがファブラボにかかわる人たち共通の望みです。

自分だけのノートづくりで“Fab”初体験

fab体験iPadに描いたイラストがノートに刻印される

今回の会場であるFabCafeにはレーザーカッターが備え付けてあり、一般の方でも自由に利用できるサービスがあります。そこで、参加者の中から希望する3名が選ばれ、実際に「Fab」を体験しました。まず、それぞれがiPadでイラストや模様を描きます。そして、登壇者の一人、萩原富三郎さんが勤務する株式会社良品計画に提供していただいたノートの表紙に、それらのイラストをレーザーカッターで刻印すると、自分だけのオリジナルノートが制作できる、というわけです。会場は、その様子に興味津々といった様子でした。

Fabを体験した参加者とノートFabを体験した参加者とオリジナルのノート

この制作時間を利用して、会場はアイスブレイクに突入。ここまでのセッションを聞いて、参加者が周囲の人と感想を語り合います。

このとき、参加者全員にノートがプレゼントされました。先ほどの無印良品のノートを、事前にFabLab Shibuyaでレーザーカッター刻印したという特製ノートです。しかも、梅澤さんによると「一部、当たりがあります」とのこと。“当たり”のノートには、表紙をめくったページに、本日の参加者のニックネーム(登録名)、登壇者らの名前のデザインが刻印されています。「今日イベントに参加したことが記念になるように」という、梅澤さんのアイデアが形になった、文字どおりの記念品です。

あしたのコミュニティーラボが刻印されたノート表紙の「あしたのコミュニティーラボ」だけでなく、参加者のニックネームが刻印された”当たり”のノート

会場では「外れた」「当たった」という声が至るところで上がり、アイスブレイクはかつてない盛り上がりを見せました。休憩時間を迎えても、ほとんどの人たちが自席についたまま会話に熱中していたほどです。

座談会の様子

後編につづく


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