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地域の共助を生み出す、名古屋発「お金の地産地消」のしくみづくり──コミュニティ・ユース・バンク momo(前編)

2017年12月18日



地域の共助を生み出す、名古屋発「お金の地産地消」のしくみづくり──コミュニティ・ユース・バンク momo(前編) | あしたのコミュニティーラボ
いまだ日本ではNPOや社会起業家に対する金融機関の融資は実行されにくい。とりわけ地域のなかでお金をまわすしくみをつくるためには、地方銀行や、信用金庫や信用組合といった地域金融機関の存在がカギとなる。そうしたなかでいま注目されているのがNPOバンクだ。東海地方初のNPOバンクとして2005年に始動した「コミュニティ・ユース・バンクmomo」もそんなNPOバンクの1つ。金融機関との協調融資も推し進める人物の1人で、「お金の地産地消」を掲げながら名古屋を拠点に活動するmomo代表理事の木村真樹さんに、これからの地域金融による「共助」のかたちについて話を伺った。前後編でお送りする。

若者&地域の参画で達成する地域内“志金”循環モデル構想──コミュニティ・ユース・バンク momo(後編)

配当はゼロ、社会的リターンによる出資→融資のしくみ

コミュニティ・ユース・バンクmomo(以下momo)の話に入る前に、近年の地域金融の状況を振り返るところからはじめよう。

地域金融というトピックで近ごろ問題視されがちなのが「預貸率の低下」だ。

預貸率とは金融機関の預金に対する貸出金の割合のこと。預貸率が低いということはすなわち「個人・法人への融資が少ない」状態であり、預貸率が上がれば、個人・法人に対する融資が社会にも還元される状態に近づくこととなる。とりわけ、この預貸率の低下が顕著とされているのが信用金庫・信用組合で、20年ほど前には全国平均70%超だったのが、現在は50%ほどに推移している。

また、いま日本では「金融行政改革」が巻き起こっている。呼び水となったのは、2015年7月に森信親氏が金融庁長官に就任したこと。森長官就任以来、金融機関の透明性強化や成長性を見た事業への融資強化など、金融行政全般で抜本的な改革案が力強く打ち出されている。

そうした追い風を背中に受け、金融機関のさらなる改革が期待されるが、その改革の風は「地域」が実感できるレベルにまで及んでいるとは言い難い。実際、2012年の日本政策金融公庫の調査(*1)によると、NPO法人の約25%が収入500万円未満となっており、事業収入、助成金に限らず、活動を継続するための資金は大きな課題となっている。なかでもNPOや社会起業家による「ソーシャルビジネス」の成長を下支えする、地域金融のしくみ構築がいま、ソーシャルセクターのあいだで待ち望まれている。(*1:NPO法人の経営状況に関する実態調査)

それらを背景に注目されているのが「NPOバンク」だ。NPOバンクとは、地域社会や福祉・環境保全の事業に、市民が自発的に出資した資金を融資するしくみのこと。日本には15団体存在する、と言われている(2017年11月現在)。

「融資の対象となるのは“豊かな未来を実感できる地域社会をつくる事業”です」

木村真樹さん
コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事・木村真樹さん

そう話すのは、東海地方初のNPOバンクとして2005年に設立したmomoの代表理事・木村真樹さん。

「ソーシャル界隈の事業者は、事業をはじめようにも、なかなか既存の金融機関で融資を受けることが叶いません。NPOバンクはそうした人のためにある、新しい地域金融のしくみなんです」

momoの融資対象は、個人、任意団体、NPO法人、社団法人、財団法人、有限会社、株式会社、生活協同組合など、法人形態は問われない。融資の原資は「正会員」からの出資で、momoの活動趣旨に賛同した正会員(出資者)から1口1円(個人は1万口、法人は5万口から)の出資を募る。なお正会員の出資、そして事業者への融資に使われるこれらのお金のことを、momoでは“志金”(しきん)と呼んでいる。

momoへの参加形態は上記のような正会員(出資)のほか、Webマガジン『momo通信』を応援する情報会員、マンスリーサポーター制度(momoたね基金)への寄付に大別されるが、基本的にmomoが集めた出資金は運営資金に使われることはない。そしてなにより出資者への「配当」がない。

momoの志金のしくみ
momoの志金のしくみ。融資後の返済期間は最長3年、融資金額は最大500万円が原則。(画像提供:コミュニティ・ユース・バンクmomo)

「『それじゃ出資じゃないじゃん』と不思議がられることもありますが、既存の金融機関にお金を預けても、そのお金が何に使われているのかは見えませんから、出資者は金利や配当といった経済的リターンではなく、自分のお金が地域のどこに生かされているのか見える──そんな社会的リターンに重きを置いており、その数は着実に増えています」

たとえば、田舎生活体験プログラムを提供するNPO法人「こうじびら山の家」(岐阜県郡上市明宝地区)は、momoの融資先の第1号である。

こうじびら山の家
こうじびら山の家(画像提供:コミュニティ・ユース・バンクmomo)

こうじびら山の家の代表理事・北村周さんは学生時代、郡上に通い続けたのをきっかけに移住。過疎化するまちの実状に触れるうち「田舎暮らしのおもしろさを伝える新しい仕事をつくりたい」と、150万円の融資を元手に2008年から事業をスタートさせた。

「高齢化率が高い集落で彼(北村さん)が事業を起こしたことによって、確実に人が来るようになったと聞いています。その変化により、最初はヨソ者の存在にいぶかしがっていた地元のおじいちゃん・おばあちゃんたちが『ヨソ者でもあんなにできるのなら自分たちも……』と、地元でNPOがいくつか立ち上がっている。地元の人たちの意識・行動に火をつけている、そんな物語も、社会的リターンかもしれません」

もとは地銀勤務──「地域のため」の実感を取り戻すために

木村さんは1977年生まれの40歳。大学を卒業した2001年は、90年代に始まった就職氷河期のまっただ中だった。

「本当は新聞記者になりたかったけれど、それは叶わず……。やりたい仕事に就けなかったのなら、地元のために働きたいと思った」

その原動力は「母子家庭であることが大きかった」と木村さんは振り返る。

「おんぼろのアパートで母親と2人で過ごしました。そして、高校受験のときには母親が入院した。受験真っただなかの2月を1人で過ごし、ものすごく不安で……。幸い、母はその後退院したし、高校受験にも成功したけれど、人生につまずくことの怖さをそのときに感じました。いま、この時代にもつまずく怖さが社会にははびこっているし、それをなんとかしたい──その思いが、いまも昔も原動力になっていると思います」

木村さん
地銀に勤めている間に「どこで」ではなく「誰と働くかが重要」と思うようになってきたと木村さん

そして、木村さんは地元・名古屋の地方銀行へ就職した。配属された支店では出納や預金、融資などを担当したが、わずか1年半で退職することとなる。

「いわゆる貸し渋り・貸しはがしがとても大きな問題となった時代で、融資を担当していても“地域のため”という実感が持てなくなってしまった。そうした不況下で金融機関に勤めているなかで、居心地の悪さみたいなものも感じ、30歳くらいまでにはこれだ!と思えることを見つけたいと思った」

62の事業に1億4,000万円超の融資を実行、貸し倒れはゼロ

そうして「自分の引き出しを増やしたい」との思いから、地銀に勤めつつ業務外の時間を使いNPOの活動に携わるようになった。その後、地銀を辞めた木村さんは「3年で地元に帰る」と母親に約束し、活動拠点を東京へ移した。国際環境NGO「A SEED JAPAN」の事務局長、そして一般社団法人APバンク(ap bank)の運営事務局スタッフを歴任することとなる。

なかでもap bankでの経験は、後に地元・名古屋でのNPOバンク設立を大きく後押しした。日本初のNPOバンク・未来バンク事業組合の設立者であり、全国NPOバンク連絡会では理事長を務めている田中優(ゆう)氏らから、木村さんはNPOバンクの融資審査のことなどの薫陶を受けた。

「僕が地銀で行ってきたような融資審査は誰にでもできる。ものすごく極端にいえば、決算書の数字、過去の実績といった情報をシステムに入力していけば、融資可能かどうかが判断される──それだけのものでした。しかしNPOバンクでは、融資対象となる事業の未来をしっかりと見据えています。となれば、ふだんの生活で信用できない人にお金は貸せないのと同じで、僕ら融資担当者は“人”を見るしかありません。この方と信頼関係を丁寧に紡いでいけるかどうか、それがNPOバンクの融資審査の肝です」

このしくみを地元にも──。木村さんは名古屋に戻り、2005年3月にNPOの必要性を訴えるセミナーを開催。ここでNPO職員、学生など「普通の若者たち」という12名の仲間を集め、同年10月23日、momoを設立した。団体名はミヒャエル・エンデの『モモ』にちなんで。「地域で暮らす若者たちが、子や孫の代まで、このまちでずっと暮らしていけるように」との想いを込めた。

「団体名に『ユース』と入れているように、若者たちがまちの未来の意思決定をしていけるしくみをつくりたいと考えました。創立メンバーは、そんな思いに共感してくれた有志たちです」

その後、出資金を集め、設立2年目には貸金業登録を達成した。2007年からいよいよ融資をスタートさせた。

融資金額と融資件数(累計)
金額、件数はいずれも累計。数値は2017年12月12日現在(データ提供:コミュニティ・ユース・バンクmomo)

それからおよそ10年。62名による484万円の出資からスタートした“志金”のしくみは、現在まで541名(個人509名・団体32)から4,794万円の出資金を集めるまでに成長している。また、愛知・岐阜を中心に、これまで62の事業に対し、1億4,604万円(2017年12月12日までの累積)の融資を実行。これまで貸し倒れは、ただの一度もないという。

541名から約4,800万円の出資金を集め、62の事業に対し融資を実行したmomoの地域金融のしくみ。その活動は、地域金融機関、地方行政、そして次世代の担い手を巻き込みながら、ますます発展している。後編ではmomoの融資審査の内容とその参画者、そして木村さんが思い描く「地域内“志金”循環モデル構想」に迫ってみたい。

若者&地域の参画で達成する地域内“志金”循環モデル構想──コミュニティ・ユース・バンク momo(後編)へ続く


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