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若者&地域の参画で達成する地域内“志金”循環モデル構想──コミュニティ・ユース・バンク momo(後編)

2017年12月18日



若者&地域の参画で達成する地域内“志金”循環モデル構想──コミュニティ・ユース・バンク momo(後編) | あしたのコミュニティーラボ
コミュニティ・ユース・バンクmomoは2005年の設立以来、541名から約4,800万円超の出資金を集め、62の事業に対し融資を実行してきた。近ごろその活動には、地域金融機関、地方行政も大きな関心を示している。後編ではmomoによる融資審査の様子とともに、次世代の担い手であるボランティアスタッフ「momoレンジャー」にも話を聞いた。NPOバンク参画者の思い、そしてmomo代表の木村さんの話から見えてきた「地域内“志金”循環モデル構想」とは?(TOP画像提供:コミュニティ・ユース・バンクmomo)

地域の共助を生み出す、名古屋発「お金の地産地消」のしくみづくり──コミュニティ・ユース・バンク momo(前編)

地域金融機関も関心を寄せるNPOバンクの融資審査

現在、コミュニティ・ユース・バンクmomo(以下、momo)による融資先の募集は、年に3回(2カ月の募集+2カ月の審査、計4カ月間)行われている。審査を担当するのは、momoの代表理事(木村真樹さん)以下、理事・監事・顧問ら約20名で構成される融資審査委員会。総会で選ばれた理事が、正会員(出資者)の代表として運営責任を担っている。

2カ月の融資審査は、書類選考、面談、訪問調査、最終審査というプロセス。融資申込先の3〜5割がこの審査を通過し、融資が決定する。

「審査は過去・現在・未来をバランスよく見ています。momoではこの3つを88のチェック項目に落とし込み、融資審査委員会による申込者との面談を行っています。ただ、これで細かな点数を付けようというよりは、オブザーバーも合わせれば30名近くもいる審査に関わるメンバーが同じまなざしを持つためのツールという位置づけです」(momo代表理事・木村真樹さん)

近ごろは、地域金融機関の職員も融資審査委員会のオブザーバーとして参加している。これはmomoがこれまで「62の事業に1億4,000万円超の融資を貸し倒れなくやってきた」という1つの実績を、地域金融機関が注目している証左といえるだろう。

木村さんは続ける。

「面談後の委員会による審査の内容も、一般的な金融機関で行われるような堅苦しいものではありません。ふせんを用意して、ポジティブ・ネガティブ、双方の意見を全員参加で書いていく。それを一覧化することで、対象事業への30名分のまなざしがまたあらわになっていく。これが貸し倒れにならない秘訣の1つだと思っています。たった1時間の審査会ですが、凝縮された1時間です」

木村真樹さん
コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事・木村真樹さん

momoと地域金融機関との協業がはじまったのは2012年頃のこと。そのきっかけは日本政策金融公庫との協調融資が実現したことだった。

「momoの(融資)上限額は500万円。平均すれば200~300万円の資金をmomoの志金のしくみのなかで融資します。もちろん、融資金額にも限度があります。一方、その数百万という金額で地域や社会を本当に変えていくのは難しい。このしくみを梃子(てこ)に、どうやって地域金融機関を巻き込みながら変えていくのか──それがあるときからの本丸になりました」

社会起業とは「守りたい人がいるから、守るために動く」こと

融資というお金による支援のほかに、momoでは人による融資先への支援も行っている。そんな、出資者と融資先をつなぐ重要な役割を担っているのがボランティアスタッフ「momoレンジャー」だ。年齢構成は20~30代が主軸。常時10~20名のメンバーが参加している。彼らのふだんの活動は民間企業、官公庁、NPO勤務から、学生まで多岐にわたり、ここでの活動をNPOへの就職や社会起業へとつなげる人も多いという。

名古屋市立大学・人文社会学部現代社会学科3年で「労働社会学」を専攻する古井千景さんは、そんなmomoレンジャーの1人。2016年、大学2年になったばかりの千景さんは、momoが開催する「白書を読む会」(『お金の地産池消白書2014』を読む会)に偶然参加した。

「こういう視点で地域を見るというのは、それまでに考えたことがなかったんです」

古井さんはその場で木村さんに志願し、momoレンジャーになった。「労働社会学というのも、大学に入る前は全然興味がない分野でした。でもmomoレンジャーの活動などで『地域』が身近なテーマになり、かつ、地域が変わっていくということは経済的な側面でも見なければいけないと実感するようになり、労働・雇用から地域を見てみたいと思いました」

古井千景さん
momoレンジャーの古井千景さん。ふだんは学業のかたわら、特定非営利活動法人「えなここ」の学生スタッフとして、ローカルメディアの運営にも携わっている

momoレンジャーは週末や学校の放課後、就業後の時間を使って融資先を訪問するという。Webサイトやメールマガジンによる情報発信や、融資決定後に出資者に向けて開かれるお披露目イベント、融資完済記念イベントの企画・運営(場づくり)なども主たる活動だ。

「NPOという言葉はもちろん知っていましたが、高校の公民の教科者に1〜2行で少し出てくるくらい。表層的なものでしかありませんでした。でも実際にNPOの方と会ってみると、事業者の問題意識や「こういう人たちを助けたい!」という使命感など、各人の思いが事業に詰まっています。そうした方々に伴走するなかで、リアルなNPOを感じられました」

古井さんは大学の知人との会話のなかで「時折、学生起業の話も持ち上がる」と話し、こう続ける。

「これまで“社会起業”、“起業家”という言葉には、何か壮大なことをする人、というようなイメージを抱いていました。しかしmomoの融資先の方々と接するなかで感じることは、気づいた人が気づいたことをやる、守りたい人がいるから守るために何かをする、実現したいことがあるから実現したいことをする──実際はそんなシンプルなことが活動の源泉なのでは、ということです。その反面、そうした方々は、その分野では専門家でも、ビジネス化や人・資金の調達、広報といったことになると、途端に上手に立ち回れなくなる。それがもったいないと思うし、そうした部分を支援できるしくみがあればよいと思っています。私もいま、そういう方々を中間支援的に支える仕事にとても興味があるんです」

地域内“志金”循環モデル構想で実現する「お金の地産地消」

地域金融、そして若者たちを巻き込みながら発展するmomoの地域金融。前編の冒頭にも触れた通り「日本の地域金融機関の預貸率(金融機関の預金に対する貸出金の割合)が低い」という問題を抱えるが、木村さんはこう話す。

「たしかに平均すれば地域金融機関の預貸率は低いのかもしれません。しかし預貸率が高い(地域や企業にお金を回している)信用金庫や信用組合も存在します。そうしたところは、NPOだから融資をしようというよりも、地域でお金をまわす覚悟とか意欲に溢れているし、本業をまっとうに遂行するなかでNPOや社会起業家に出会っているんです。預貸率を劇的に改善させようということ以前に“地域のために”や“地域とともに”といった理念を掲げている地域金融機関が、momoの存在や働きかけをきっかけに、本来のミッションを自問自答する──そんなプロセスを内包していくことが必要なのかもしれません」

さらに木村さんは地域金融のしくみをさらに発展させるべく「地域内“志金”循環モデル構想」を描いているという。

古井さんと木村さん
momoレンジャーの古井さんと木村さん

「返済が必要な“融資”という資金支援だけでは、すべての望みに応えることはできません。どうしても融資という手段が合わない事業に対して支援するしくみが、公益財団法人あいちコミュニティ財団です。財団では、地域課題&先行事例の『調査』、解決策の『検討&ブラッシュアップ』、解決策に必要な『お金と人の募集』の3段階を『ホップ→ステップ→ジャンプ』プロセスとしてNPOを支援します。いわゆるスタートアップに助成を行い、事業が発展したらNPOバンク、さらには地域金融機関で融資という支援をする。事業のステージに合わせ、地域のお金が社会の問題解決にまわる──事業化のステップアップするしくみがこれから必要だと考えています」

さらに木村さんは財団設立、そして循環モデル構想の狙いをこう続ける。

「すべての問題解決のゴールが事業化とは限りません。事業化のステップアップで財源を得られたとしても、本当に深刻な問題に対しては、税金で手当を講じなければいけない。だから財団が“行政”ともつながり、制度化を目指す。税金の投入が難しい部分を“社会実験”するのを、寄付で行えるようにすることで、地域のお金が地域のために使われる、本当の循環モデルができあがるのだと思います」

公益財団法人あいちコミュニティ財団
momoとともに中核を担うのは、2013年4月に木村さんらが立ち上げた「公益財団法人あいちコミュニティ財団」。同財団は、momoの「出資→融資」という枠組みとは別に、税制優遇も受けられる「寄付→助成」というかたちで資金集め&提供を行っている(画像提供:コミュニティ・ユース・バンクmomo)

木村さんは「地域内“志金”循環モデル構想」を実現するための具体的な設計図として「Theory of Change 2020」も打ち出してる。Theory of Change とは「変革の方法論」と言われ、大きな目的のために自分たちがどんな変化やインパクトを生み出すのか、具体的な数値や内容を記載していくものだ。

momoのTheory of Changeでは、momoの活動目的を以下の3つと設定し、それぞれを事業・結果・成果・影響の視点で見つめ、具体的な目標にまで落とし込んでいる。

「地域内“志金”循環モデル構想」の実現に向けた Theory of Change 2020 における目的
1. 地域の課題解決に本気で取り組む事業者を増やす
2. 「わたしのお金が地元で生かされている」という実感を育む
3. 地域のお金の流れを再デザインする
Theory of Change 2020

「社会的な取り組みは、総論では賛同者を集めやすいのですが、自分の持っているお金・時間を投じるかどうかの段階になると、そこまでの温度感じゃなくなったりするじゃないですか。だから3~5年後の未来、とりわけ“自分たち”じゃなく “地域や社会”のありたい姿を描くのが大事なんです」

金融改革の風を「地域」が実感できるのは、もう少し先のことなのかもしれない。しかし、国による改革の恩恵を、ただ口を開けて待っていたのでは、地域金融は抜本的には変わらないであろう。木村さんが若者たちと、そして地域金融機関や行政とともに担おうとしている「お金の地産地消」は、「このまちが好き」という有志らによるボトムアップの社会変革といえる。

最後に木村さんはこう話す。

「余計なお世話をしているのかもしれない、と時折思うことがあります。ある地域金融機関の役員さんは『momoのようなNPOバンクがある地域は、自分たちにとって恥だよね』とおっしゃっていた。momoがやっていることは、本来的に自分たち金融機関の役割だというわけです。だから、momoのようなことをやらなくてもいい社会の実現というのが、自分たちの目指すべきところ。このしくみがもっと社会のなかに溶け込んでいる状態をなんとかつくっていきたいんです」

momoでは、メールマガジン『momoレポート』、momoレンジャーによるWebマガジン『momo通信』、毎年度に成果報告書を発行するなど、積極的な情報公開を行っています。さらには3年ごとに、地域金融の諸問題やデータ、先駆的事例を網羅した『お金の地産地消白書』を発行しています。

その最新版『お金の地産地消白書2017』制作のためのクラウドファンディングが現在進行中です。支援はこちらからどうぞ!(2017年12月29日まで)
https://camp-fire.jp/projects/view/50955

地域の共助を生み出す、名古屋発「お金の地産地消」のしくみづくり──コミュニティ・ユース・バンク momo(前編)


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