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子育てからはじめる、困りごとの”シェアリング”──UR都市機構×AsMama連携プロジェクト(前編)

2017年12月20日



子育てからはじめる、困りごとの”シェアリング”──UR都市機構×AsMama連携プロジェクト(前編) | あしたのコミュニティーラボ
「共助」という、多様な人々が混じり合うことで持続可能なしくみをつくりあげていこうとする動きが全国に広がっている。今回は、2016年12月からはじまった、独立行政法人 都市再生機構(以下、UR都市機構)と株式会社AsMama(アズママ、以下AsMama)による連携事業を例に、現場で行われている試行錯誤を深掘りしていこう。共助による子育て支援は、団地暮らしの方々に、そして社会にどんな変化をもたらすのか。UR都市機構、AsMamaの両社に話を伺った。前後編でお伝えする。

共助による助け合い・頼り合いが社会にもたらすもの──UR都市機構×AsMama連携プロジェクト(後編)

子育て世帯が「いざ困ったとき」にお互いが助け合える関係づくり

港北ニュータウン メゾンふじのき台(神奈川県横浜市都筑区、1989年3月〜1990年4月に順次竣工)は、横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター南駅」から徒歩7分ほどのところにある、戸数456の大規模団地だ。

この日、団地の一角にある集会所でイベントが催された。イベントタイトルは「子育て交流会~赤ちゃんから使える アロマ保湿クリーム作り~」。参加しているのは主に、団地やその近郊エリアに住む、乳幼児を持つお母さんたちである。子どもの同伴ももちろんOK。妊娠中でも、小学生の子どもがいても、単に「子育て世帯を応援したい!」という人でも参加することができる。この日は初参加となるお母さんたちが多かった。

イベントの運営メンバー
お揃いのオレンジ色のTシャツに身を包んでいるのがイベントの運営メンバー。参加者による自己紹介、困りごと相談、さらには子どもを相手にしたゲーム大会など、終始アットホームな雰囲気のなかで会が進行した

およそ1時間半のイベントは毎回2つのパートに分けられている。今回、前半はアロマ保湿クリーム作りの体験型ワークショップ。横浜市在住の日本メディカルアロマテラピー協会認定講師を迎え、エッセンシャルオイルの入ったアロマ保湿クリーム作りをみんなで体験した。

こうした企画はあくまで参加のためのフックになるもので、イベントの主題は後半に組み込まれるお母さん同士の交流だ。「たとえばある日、下のお子さんが熱を出してしまい、誰か面倒を見てほしい。でも頼れる人がまわりにいない……。そんなふうに、いざ困ったときに近くに住んでいる方同士で助け合える関係づくりを私たちは作りたいんです。そのきっかけとして、このイベントを開催しています」。AsMamaから参加する運営メンバーが、イベントの趣旨を参加者へ説明する。

進む少子高齢化──目指すはミクストコミュニティー形成

2009年9月に創業。「ソーシャルエンパワーメントの創出/社会を構成するすべての人や企業や団体等が頼ること・頼られることを通じて本来の能力を発揮でき、それぞれが理想とする経済的、社会的、精神的豊かさの実現を創出する」──。そんなビジョンを掲げるベンチャー企業であるAsMamaが、約1,700団地・74万戸のUR賃貸住宅を管理する独立行政法人 都市再生機構(以下、UR都市機構)との連携事業を発表したのは、2016年12月のことである。

1950年代中盤、都市部を中心にUR賃貸住宅、かつての公団住宅が大量供給されると同時に、大勢のファミリー世帯が各地にある団地に入居した。それから数十年が過ぎた現在、団地にお住まいの方の少子高齢化が進み、それが「コミュニティーの分断を招いている」と同社ウェルフェア総合戦略部企画課長の諸隈慎一さんは話す。

「UR賃貸住宅での少子高齢化は、これから全国平均を超えるペースで進んでいく恐れがあります。我々はUR賃貸住宅にお住まいの皆様に、より快適に、そしてより長く暮らしていただくため、少子高齢化にかかる大問題と向き合う必要があります。近年、高齢者から子育て世代まで、さまざまな世代をつなげる “ミクストコミュニティー”づくりを目指し、また医療福祉施設の充実や居住環境の整備など、さまざまなトライアルを繰り返しています」(諸隈さん)

諸隈慎一
UR都市機構 ウェルフェア総合戦略部企画課長の諸隈慎一さん

そうしたトライアルのなかで、特にその必要性に気づいたのが「若者世帯・子育て世帯を含む、さまざまな年代の方々の関係づくり」つまり「ミクストコミュニティーづくりの推進」だった。

URは、2016年9月にメゾンふじきの台を想定した「子育て支援サービスの提供、地域における共助の推進、および地域のコミュニティー形成に資する一体的な取り組み」に関する事業者を募集。その結果、AsMamaの事業が選ばれた。

「UR賃貸住宅には、幅広い世代の方々がお住まいで、それぞれのライフスタイルで暮らしていらっしゃいます。多世代の方々が自然と知り合いになる、顔見知りになる、あるいはそこから関係を深める……ということが難しいものになっています。そんななかAsMamaさんのご提案は、共助という言葉に集約されている通り、子育て世代だけに限らず、多世代の方々にそのきっかけを与えるものだと感じました。将来、ここでの実績をUR賃貸住宅に広く展開できれば、と考えています」(諸隈さん)

この取り組みの実施期間は、2017年1月25日から、2019年12月まで(予定)。取り組み内容は、以下の3つで構成されている。

1.子育て世代・多世代交流イベントの開催
2.地域子育て支援者「ママサポーター」募集説明会・子育て支援者勉強会の開催
3.専用コミュニティーサイトの設営・運営(後編にて詳述)

2017年1月から始まったメゾンふじのき台での交流イベントはこれまで30回超を重ねてきた。今後のイベントは、防災すごろく、スノードームづくりなど、バリエーションに富んでおり、それらの企画は、AsMamaが中心となって立案・提案している。

アロマ保湿クリーム作り
この日のメイン企画となった「アロマ保湿クリーム作り」。毎回定員は20組ほど。過去には「リラックスヨガ」のワークショップもあり「普通は子どもをどこかに預けなくてはいけないヨガも、この交流イベントでは子どもを見てもらえるので、子ども連れで参加できる」と参加者から好評だったという

伝える・つなげる・頼られる──ママサポーターの役割

イベント告知といった居住者への働きかけのほかにも「地域の自治会の皆さんに対する理解促進に努めてきた」と話すのは、AsMama事業推進部兼経営補佐室の村上陽祐さん。

「この事業は、私たちが得意としている子育て世代の交流からスタートさせていますが、UR都市機構さんの掲げる“ミクストコミュニティー”という大きなテーマを実現させるためのものです。そのため、地域の方への理解を深め、地元自治会、周辺にお住まいのシニアの方にも参加を呼びかけています。11月には乳幼児からおじいちゃん、おばあちゃんまで楽しめるミニ運動会も企画しました。長い時間をかけて育まれてきた港北ニュータウンという場所のコミュニティーを阻害することのないよう、今あるコミュニティーの特性を十分に理解したうえで、お互いが補完し合えるようなイメージで活動することを意識しています」(AsMama事業推進部の村上さん)

村上陽祐
AsMama事業推進部兼経営補佐室の村上陽祐さん

イベントを切り盛りする運営メンバーは皆「地域子育て支援者」であり、「ママサポーター」(通称・ママサポ)と呼ばれている。ママサポ希望者は志望動機を明記した応募フォームと本人確認書類等を提出後、Skypeによる面談と基礎研修(約3時間)によって合否が判断され、さらにその後、託児等の実践研修(10時間+α)を受けることで資格が取得できる。

主な活動内容は以下の3つ。交流イベントを通じてママサポーターになる人も大勢おり、活動支援金が支給されるのも大きな特徴。「アロマ保湿クリーム作り」の講師もママサポーターだ。

ママサポーターの活動
ママサポーターの活動(AsMamaのホームページより)。交流イベントをきっかけに参画するママサポーターも多数。村上さんらAsMama社員も研修を通じて資格取得したママサポだ

イベントに参加していたママサポーター2人にも話を聞いた。

「きっかけは、最寄り駅の1駅先でAsMamaの交流イベントが開かれていたこと。子連れで参加できるのが一番うれしくて、1年くらい通っているうち『そろそろママサポ、どうですか』と誘われました(笑)」(ママサポーター・菅原さん)

AsMamaがママサポータープロジェクトを本格始動させたのは、2011年3月のこと。ママサポのなかには数年間活動している人もいれば、まだ活動開始から日の浅い人もいる。「新しい人は熱意があって活動的。仲間がどんどん増えると盛り上がるしやる気も保てる」と、同じくママサポーターの中野さんは話す。

彼女たち、ママサポとして活動しているメンバーがその場にいることで、初参加者にとっての敷居が下がると同時に、同じママとしての体験談から「共助」そのものの価値を伝えられることにもなる。

「自分がふだん暮らすマンションで、具体的にどんなことで助け合いをしたか……。そうした経験談を自己紹介やイベント中の会話のなかでシェアしてあげることで、ちょっとでも“頼り合う”ことの敷居が下がるといいですね」(ママサポーター・中野さん)

ママサポーター
ママサポーターとしてイベントに参加する中野さん(左)、菅原さん(右)

地域交流イベントのもとで、ママサポーターという“ソフトウェア”が団地コミュニティーに組み込まれ、そこから草の根的に「共助による子育て支援」をうながしていく──。それがUR都市機構とAsMama連携事業の本懐なのである。

後編ではAsMama代表の甲田恵子さんにもお会いし、「共助による子育て支援」に欠かせないインターネットサービス「子育てシェア」の誕生秘話について迫ってみた。

共助による助け合い・頼り合いが社会にもたらすもの──UR都市機構×AsMama連携プロジェクト(後編)へ続く


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