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新技術を実証し、横瀬が未来型ビジネスの発信地となる?──横瀬町の「よこらぼ」がまちにもたらすもの(後編)

2018年02月07日



新技術を実証し、横瀬が未来型ビジネスの発信地となる?──横瀬町の「よこらぼ」がまちにもたらすもの(後編) | あしたのコミュニティーラボ
民間から事業を募集し自治体が支援する、埼玉県横瀬町の官民連携プラットフォーム「よこらぼ」。前編では「官」の立場で横瀬町役場の話を伺った。後編では「民」の視点で、共創の推進役はどのようにあるべきなのか、そのヒントを探る。「逆360度」動画「SwipeVideo(スワイプビデオ)」とドローンのプロパイロット養成事業の事例について話を伺った。

「官が民に合わせる」ことで共創が加速する?──横瀬町の「よこらぼ」がまちにもたらすもの(前編)

世界中に広めたい新技術を本気の自治体と一緒に実証する

「よこらぼ」で採択された案件の1つ「SwipeVideo(スワイプビデオ)」。

2017年1月に創業したベンチャー、AMATERAS JAPAN株式会社が開発した特許申請技術の実証実験プロジェクトだ。SwipeVideoとは、撮影対象を360度の全方位視点から閲覧できるクラウド型Web動画システム。写したい人やオブジェを中心として、複数台のカメラを円形に配置して撮影すると、スマートフォンなどのデバイスで、スワイプするだけで360度あらゆるアングルからの動画が見られる。自分を中心に周囲の風景を見られる360度動画とは逆の発想だ。

スポーツ、エンタテインメント、ハウツーなどさまざまな分野の市場に展開可能なこの新技術の実証実験の場として、AMATERAS JAPAN代表取締役CEOの下城伸也さんは横瀬町を選んだ。そのきっかけは、ベンチャーと大企業の連携が目的のピッチイベント「Morning Pitch」に登壇した際、SwipeVideoの可能性に魅かれた西武鉄道株式会社の人から「よこらぼ」を紹介されたこと。

「町役場でのプレゼンのとき、ぜひ一緒にやりたいと思いました。こんなに本気で地方創生に取り組まれている自治体を見たことがなかったからです。私たちの技術は世界中の人に使ってもらいたい。その前段階の実証実験として、横瀬町のみなさんの役に立ち、経済的にも効果を生めるかどうか試す機会を得られたのは、とてもありがたいことです」と下城さんは話す。


AMATELUS JAPAN株式会社 代表取締役CEOの下城伸也さん

取材当日、横瀬町のピラティスインストラクター内田亜矢子さんを招いて、あしがくぼ笑楽校(廃校になった旧芦ヶ久保小学校)の教室で実証実験が行われた。


被写体を360°取り囲むかたちでスマートフォンを並べて撮影し、その場で再生して確認することができる

撮影された動画を見た内田さんは「レッスンを受ける生徒さんよりも、インストラクターのほうに役立つかもしれません。いろんな方向から事細かに自分のエクササイズを見られると、後ろから見た姿勢や筋肉の動き方などマニアックな部分もチェックできますから」と感想を述べた。

「ものすごく勉強になりました」と下城さん。「ウェブにヨガやピラティスの動画はけっこう上がっていて、それらはすべて1視点なので、習うひとにはこれで十分なのかな、と実は諦めかけていたんです。プロフェッショナルには多視点が必要、ということがはじめてわかり、あらためて可能性を感じました」。

あしがくぼ笑楽校の木造校舎はコスプレイヤーの女性たちの撮影にもよく使われている。そのコスプレイヤーたちにも協力をあおぎ、SwipeVideoの実証実験をした。ところがこちらは期待に反して大外れ。なぜなら彼女たちが欲しいのはベストショット、つまり“奇跡の1枚”の静止画であり、多方向から撮られた動画は要らないのだ。「これはこれでやってみなければわからなかったので良かったです」と下城さんは笑う。

ポイントは「民」に合わせる柔軟さ

ドローン(正式名はUAV——Unmanned Aerial Vehicle——無人航空機)のプロパイロット養成事業を展開するFreaksGarage(フリークスガレージ)の中村一徳さんは、広大な飛行練習場を求めて2015年に東京から秩父に転居した。秩父市大滝で技能検定講習をしていたが、知人に「よこらぼ」を紹介されて応募し、ドローンのプロパイロット養成事業として採択された。あしがくぼ笑楽校の体育館を使って初級の技能検定講習を実施している。2拠点目の飛行練習場だ。

「体育館や校庭をお借りできるのは助かります。体育館は風の影響を受けないので初級者には安全ですし、大滝では雨が降ると講習できません。また、電車で行けるアクセスも便利です。なんと言っても横瀬町の良さは官と民の温度差が小さいところ。無理かな、と思うことでも一度はきちんと聞いてくださる。企業というのは、いつなんどき急な仕事が発生するかわかりません。そんなとき、たとえば体育館の使用についても、調整して便宜を図っていただけたりする。その柔軟さはすごいなと思います」と中村さんは話している。


FreaksGrageの中村一徳さん

FreaksGrageの技能検定講習は初級・中級・上級・プロの4段階。中村さんによれば、初級は2日間のコースで100%の合格率、中級も2日間で8〜9割の合格率、上級になると途端に合格率10%と難しくなる。上級卒業者だけがプロを目指して飛行技術を磨ける。とりあえず飛ばせるようになるためには中級までが必要だが、ドローンというのは事故のニュースも目立つように、きちんとした知識と技能で操縦しないと、けっこう危険なツールだという。

「事故の原因はほとんど知識・経験不足による操縦ミスです。機体は3種類ほどの電波を使って飛ばすので、まず電波の勉強をしないといけません。高圧線のそばを飛べないものもあれば、群衆が一斉にスマートフォンで撮影しSNSに上げたせいで落ちた事例もあります。太陽フレアの強さによっても電波障害が起きるし、バッテリーの知識も必要。たとえばダムのドローン撮影などは、上昇気流に妨げられ、コンクリート内の鉄筋で電波が飛び、谷なので夕方にはGPSがロストするなど、上級レベルなんですよ」と中村さんは教えてくれた。


「体育館のなかは風もなく邪魔な電波も飛んでいないので、初心者の講習には最適です」と中村さん

現在ドローンの操縦に公的な認定資格はなく、民間業界のライセンス発行に任せられている。それだけにフリークスガレージのような、的確なカリキュラムを完備したプロパイロット養成事業者の役割は大きい。今後の産業に多大な貢献をするであろう優良なドローン操縦技術の発信地になることは、先のSwipeVideo同様、横瀬町の知名度向上に寄与するし「深夜に畑の四隅を飛ばせば獣害対策になるかも」(横瀬町役場の田端さん)といった実際的なメリットもある。

田舎と都会の“いいとこ取り”でまちに多様性を

横瀬町の富田能成町長は「よこらぼ」ウェブサイトのメッセージで「“よこらぼ”が目指すのは、地方創生につながる新しい公共サービスや未来型ビジネスのインキュベーター(孵卵器)です」と述べている。その大きな目的を達成するには、横瀬町で走り出しているプロジェクトが経済効果を生んで、事業者にも町民にも受益をもたらし、持続可能なビジネスとして展開されなければならない。

いまはその第一歩を踏み出した段階だ。「横瀬は活性化しつつあります。その結果、町のいろんな表情が出てくると思う。それをしっかり見極めて、町のなかに多様性をつくりたい。いろんなライフスタイル、働き方があっていいのです。田舎と都会、両方の“いいとこ取り”をできるのが横瀬の強みですから、そこを活かせば多様性が生まれるはず」と富田町長はまちの将来像を語る。


富田能成 横瀬町長(写真右)と、横瀬町役場まち経営課の田端将伸さん(写真左)

多様性へのアプローチを象徴するプロジェクトの1つが「横瀬クリエイティビティー・クラス」だろう。クリエイターは場所を選ばずに仕事ができる職種だ。多様性と親和性が高い。「クリエイターが集うまち」という将来像も富田町長は視野に入れている。中村さんは「横瀬クリエイティビティー・クラス」の成果発表を見て刺激を受け、中学生や高校生を対象とした「親子ドローン教室をやってみたい」と話していた。田端さんのいう「案件が案件を呼ぶ好循環」を生むことが、官民共創の推進エンジンをフル回転させるコツかもしれない。

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