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日本の水産業にエコシステムを築く フーディソンがつくる“食の感動”(前編)

2018年04月12日



日本の水産業にエコシステムを築く フーディソンがつくる“食の感動”(前編) | あしたのコミュニティーラボ
日本近海で漁獲される魚は3,000~4,000種といわれている。多種多様であるにも関わらず、ふだんの食生活で口にする魚は、アジ、イワシ、サンマ……と限定されたものばかりではないだろうか。それは定番魚と言われる魚が、大量かつ安価に水産流通網に乗りやすいことが一因となっている。「世界の食をもっと楽しく」、そんなミッションを掲げる株式会社フーディソンは水産流通プラットフォームの再構築を図るべく、さまざまな施策に乗り出している。

その1つが飲食店向け鮮魚仕入れシステム「魚ポチ」。まったく異業種から参入した株式会社フーディソン代表取締役CEO・山本徹さんは、1人のサンマ漁師との出会いから水産業の世界へ飛び込むことになった。フーディソンが取り組む、水産業のエコシステム構築のヒントとは? 前後編でお伝えする。

水産流通の再構築による「日常のなかのおいしさの体験」とは? フーディソンがつくる“食の感動”(後編)

2つの「卸売」がある水産流通のしくみ

日本の漁業就業者の数は下降の一途をたどっている。農林水産省「平成28年漁業就業動向調査」によれば、2016年11月時点での漁業就業者数は約16万人。2015年に比べ4.0%減少している。高齢者の占める割合も高い。このまま漁業離れが加速すれば、やがて私たちが「日本産の魚を自由に食べにくくなる」ことにも直面しかねない。

そもそも水産物が水揚げされてから、私たちの家庭の食卓に運ばれるまでの流通経路は複雑な構図になっており、生産地・消費地の2段階に「卸売業者(流通業者)」を備えるような構造をしている(下図)。水揚げされた水産物は産地の卸売市場(産地卸売市場)に運ばれ、産地出荷業者によって全国の消費地卸売市場へ出荷。そこでセリにかけられるなどして、消費地の仲卸業者、あるいは小売店が購入し、消費者や飲食店のもとに届く。


水産物の一般的な流通経路(参考:水産白書)

「既存の水産流通は、社会の変化に対して適切に対処できていないという意味において、指揮者がいないオーケストラのようだった」

そう話すのは、株式会社フーディソンの代表取締役CEO・山本徹さん。いったいどういうことだろうか?

山本さんは1978年生まれの39歳。22歳のときに北海道大学工学部を卒業後、不動産デベロッパーを経て、当時老人ホームの紹介業を主事業としていたベンチャー、エス・エム・エスで医療分野進出を牽引した。自らの「起業」を目的に活動をはじめたのは33歳になった2011年のころ。

「大学卒業当時から起業することは思い描いていたんですよ。エス・エム・エスはいったん退職し、“2012年末まで”と期限を区切ってフィールドワークとして、起業のテーマ探しの旅をはじめました。世の中の課題解決をする余地があって、意味のあるビジョンを描けるテーマ、かつ、ビジネスとしても相対的に優位なポジション—それが水産でした」

サンマ漁師との出会い。なぜ水産業は儲からないのか?

水産業に関わるようになったきっかけは、フィールドワークの道中で1人のサンマ漁師と出会い「生産者の魚価(魚の価格)の話を聞かされた」こと。

産地卸売価格、消費地卸売価格、仲卸価格、小売価格と、プレイヤーが複雑に入り組んでおり、価格も何層構造にもなっていて、水産業では「生産者」の側から魚価を決められない。


株式会社フーディソン 代表取締役CEO 山本徹さん

「その方の場合は、サンマ1キロあたり10〜30円程度で卸しているということでしたね。計算すると、ひどい場合には原価率1%とかの世界です。当時水産の素人だった私はそれを額面どおり受け取っていましたが、おそらく加工用の魚でした(笑)。これをきっかけに基本的な構造に少し疑問を持ちました。そして、社会の変化とともに市場の経由率がさがっていることや、流通のしくみを知るにつれてイメージしたのが“指揮者のいないオーケストラ”でした。参加している個々人の演奏者はプロで “いい曲を奏でよう”と思ってはいても、社会の変化に対しての戦略を考えるリーダーがいないからバラバラになる。

よくよく消費者の側から考えても、せっかく四季折々の旬な魚があっても、東京では家やお店でだいたい決まった魚しか食べる機会がありません。水産流通の構造的な機能不全を知るに至り、水産流通全体の構造を“なか”から変えなければ、と考えました」

フーディソンを創業したのはそれからすぐ、2013年4月1日のこと。山本さんが事業化にあたり真っ先に着手したのは「魚屋」の開業——埼玉県日高市の「朝採れファーム 高麗郷」(農産物直売所)での魚の直売所オープンだった。

「水産流通のどの部分に参入できるのか考えるにあたり“リアルな店舗での小売”“飲食店等への卸売り”“オンライン販売(EC)”の3通りのアプローチがあると仮説を立てました。そのうちの1つのリアル店舗での小売りとして直売所に出店しました」。しかし直売所は「大失敗だった」と山本さん。開業からわずか3カ月後には撤退を意思決定している。

小売りから卸売りへのアプローチ転換で生まれた鮮魚宅配サービス

直売所失敗の理由をこう振り返る。

「横須賀の漁協さんから魚を仕入れて、朝に漁獲された魚を山間部で直売していたのですが、まったく売れませんでした。いくら新鮮な魚を並べたところで、高齢化の進むその地域の方々はどう調理していいかわからないし、食べる量も少ない……。干物・練り物のほうが売れゆきはいいほどでした。消費者の食文化とのミスマッチが起これば、過剰品質になってしまう。そんなことを改めてそのとき学びました」


フーディソンの社名の由来は「Food+Edison」。食の世界に新たなイノベーションを起こそうと、その第1弾として水産業界に絞り事業を展開している

山間部での小売からのアプローチに限界を感じはじめたさなか、山本さんは別のアプローチとして「卸売り」の道を模索していた。このとき魚屋を開業していたことが功を奏した。「起業メンバーの仲間と2人で全国の漁業協同組合に片っ端から電話をかけ、仕入れ先を募りました。ほとんどは断られましたが、幸い長崎の漁協との取引が開始できました」。

そのとき生まれたサービスが飲食店向け「魚ポチ」。話題が話題を呼び仕入れ先も拡大した。飲食店に教えてもらいながら「魚のことをまったく知らない自分たちの、目利きと相場感覚が養われた」機会となった。

「最初はFAXで受発注管理をしていましたが、それがデータベース化されていき、徐々に飲食店向け鮮魚仕入れシステム・魚ポチへと発展していきました」

複雑な業界構造により、ユーザーの選択肢が狭まっているのではないか……。ユーザーと直接関わるしくみをつくり上げ、徐々にそのビジネスを拡大していったフーディソン。後編では、水産という土壌をベースに、ユーザーに価値をより伝えていくための同社の取り組みを追った。

水産流通の再構築による「日常のなかのおいしさの体験」とは? フーディソンがつくる“食の感動”(後編)へ続く


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