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SXSWがもたらす、日本への新しい波──2年目のSXSWの現場から

2016年08月08日



SXSWがもたらす、日本への新しい波──2年目のSXSWの現場から | あしたのコミュニティーラボ
編集部の佐々木です。毎年3月に米国で開催されるSXSW。富士通では、2015年は漢方のICT化のプロジェクト出展でSXSWに初チャレンジし、今年も2回目の参加にチャレンジしてきました。今回はプロジェクト出展をしながら、他団体の出展者と会話するなかでみえてきた「大学教育としてのSXSW」「大企業のイノベーションのツールとしての“インタラクティブリサーチ”」の可能性をお伝えしたいと思います。

SXSWで存在感を増す日本エリア

オースティンにもたらす経済効果が2015年の実績で317.2百万ドルと、1つの経済圏をつくり出すSXSW。2016年は2,224のライブ、255の映像作品、1,377のテクノロジーカンファレンス、586のTrade Show出展団体を数え、延べ30万人以上の来訪者を呼び込みました。また、今年は日本からの出展団体も20を超え、視察を含めると数百人の日本人が参加したと言われています。

メインの展示会である「TradeShow」を振り返る前に、1つお伝えしたいのが、この展示会がハードウェアやデジタルガジェットの最先端が集まる場ではないことです。「TradeShow」の日本エリアはこれまで、ハードウェア関連、スタートアップやベンチャーの出展が数多くありました。しかし、地元米国やヨーロッパ、アジア各国など、他のエリアはソフトウェアに関連した出展が多く見られ、ベンチャーに限らず、IBM、SAP、HPなどのICTベンダーの参加も多いのが実際です。

SXSWのTrade Showの様子。今年は586の団体が出展した。SXSWのTrade Showの様子。今年は586の団体が出展した。
さらに、各エリアは各国の政府が支援のうえ出展しています。そう考えると、バックアップがないなか年々存在感を増し、「日本エリアがもっともおもしろかった」と言わしめる日本エリアは特殊な存在と言えるでしょう。

学生が大学、そして企業と共に世のなかを動かす時代

SXSWの日本の出展者といえば、昨年紹介した「Todai To Texas」プロジェクトが有名です。これは、東京大学関連の企業や団体がTradeShowに挑戦するプロジェクトですが、今年は昨年以上に大学生の輪が広がっていました。

指先のモーションキャプチャを行う「Ubisnap」
指先のモーションキャプチャを行う「Ubisnap

着られて洗えるセンサー服、Xenomaの「e-skin」
着られて洗えるセンサー服、Xenomaの「e-skin

「今年このプロジェクトに参加し、SXSWに参加した大学生は18名で、昨年の9名に比べると倍増しました。内訳は東大生10名 、早稲田大4名、慶應大3名、法政大1名と、東大に限らず挑戦したいと手を挙げる学生が拡がりました」と東大4年生の城啓介さんは話します。

昨年、城さんはカスタマイズキーボード「Trickey」を引っ提げてTradeShowに挑戦、国内外なメディアの取材を受けたことが自身にとって大きな刺激になったそう。今年は出展に加えてプロジェクトの運営側にも回ることになったと話します。
160726_sxsw_04音や声を入れることのできる容器「OTOPOT
また、富士通でも、KMD:慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科や神戸大学と共同で開発したプロダクトを出展しました。

神戸大学大学院修士1年の今村駿太さんは2015年秋の神戸大学が富士通と共同で開催したアイデアソンを組み入れたプログラム参加を皮切りに、神戸ITフェスティバルなどを経て今回TradeShowに臨みました。
160726_sxsw_05神戸大学 准教授 藤井信忠氏
このプログラムを富士通と共同企画し、SXSWにも学生と共に参加した神戸大学の准教授・藤井信忠さんは、「大学は今後新しいものを生み出すイノベーションのハブとして機能すべき」と語ります。神戸では今年、SXSWの神戸版ともいえるプロジェクトを企画していると言います。現場でその熱を感じることで、また神戸に新たな風が吹くに違いありません。

Todai To Texasも神戸大学も、実際にブースを訪れるととにかく熱く、ものすごいエネルギーを感じます。大学生がSXSWに授業の一環として受動的に取り組んでいる、そんな雰囲気はみじんも感じず、新たなイノベーションを起こそうと夢中になっているスタートアップと同じような必死さが感じ取れる瞬間が多々あり、大学がこのような場に来ることの意義を深く感じました。

インタラクティブリサーチで市場性を見極める

今年、TradeShowの日本ブースでさらに顕著になったのが、SONYやPanasonic、富士通などの日本企業による出展です。
160726_sxsw_06電源不要の施錠センサー「JO」
大企業とスタートアップの共同事業開発や、クライアントの技術を活用した新規事業の立案などを手掛ける「QUANTUM」の井上裕太氏は、Panasonicのエナジーハーベスティング技術を活用したプロジェクト「Unleash」を立ち上げ、今回TradeShowに2つのプロダクトを出展しました。
160726_sxsw_07QUANTUMの井上裕太氏
環境発電を活用したメンテナンスがいらないIoTガジェットを、SXSWを通じ広く世のなかに提案することで、「プロダクトだけでなくPanasonicのような企業の保有する技術の新しいマーケットを切り拓こうと出展を決意した」と話します。
160726_sxsw_08チャージレススマートボタン「eny」
知恵と度胸、行動力さえあればいくらでも自分たちのプロダクトを知ってもらうことができ、そこからさまざまなフィードバックを得られるのがSXSWという場です。

いくつかの出展企業に聞くと、「どうしても今すぐ売って欲しいと言われてプロトタイプを1台譲った」「米国市場で展開する際の課題について説明された」「ここでしか聞けないようなアドバイスを受けることができた」など、定量的で一方通行の調査からは得られない市場の反応を得ていることを強く感じました。

私はこのように「新製品やプロトタイプを奨励する展示会に開発途中や販売直前・直後の商品を展示することで市場の声を直接獲得し、商品開発やマーケティングに即座に反映するプロセス」を、「インタラクティブリサーチ」と呼んでいます。

この「インタラクティブリサーチ」は、IoTのような動きが早く、かつ成功事例が確立しづらい未成熟な市場では有効な手法だと考えており、この手法を採用する企業が来年以降も増えるだろうと考えています。

その一方、完成した商品でないものの方が時に喜ばれ、フィードバックを受けて革新的なプロダクトに生まれ変わるようなことが可能なのは、インディー精神が根底に流れるSXSWだからこそとも言えるでしょう。

まとめ・来年どうなる?

昨年、今年と2年連続で参加しながらも、コンテンツ量、スピードの早さに圧倒されてばかりで、すべてを把握できたとは到底言えないことと、予測することも難しいのがSXSWという場だと感じています。

しかしその一方で、日本の大学や企業によるアプローチは間違いなく進化・加速すると言えます。大学のプロジェクトの一環としてSXSWを目指す動きや、SXSWで世界同時発売をするような企業も増えていくでしょう。もしかしたら複数の大学・企業による共創プロジェクトなどもさらに増える可能性もあります。

2017年も引き続き、SXSWから目が離せません。
展示会のようす


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