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「プロジェクト」は、富士通がさまざまなパートナーとチャレンジしていく、共創を探求する場です。

まちに、未来を、インストール。──No Maps@札幌 潜入レポート

2017年12月08日



まちに、未来を、インストール。──No Maps@札幌 潜入レポート | あしたのコミュニティーラボ
あしたのコミュニティーラボ編集部の浜田です。2017年10月5〜15日の11日間、北海道札幌市内の中心部でSapporo Creative Convention「No Maps(ノーマップス)」が開催されました。テクノロジーやアイデアで、未来の社会を切り拓く——そんな志を持つ人たちがこの地に集い交わります。あしたラボ編集部はNo Maps会期中の札幌市へ……。この地にどんな「創発の場」が生まれようとしているのか、体験してみました。

5つの事業で構成されたNo Mapsイベント群

「まちに、未来を、インストール。」──そんなスローガンのもと、Sapporo Creative Convention「No Maps(ノーマップス)」が札幌市街地で開催されました。会期中は、「新しい価値観/文化/社会の姿」を提案するビジネスコンテンツをテーマに、Conference(会議)、Exhibition(展示)、Event(興行)、Meet-up(交流)、Experiment(実験)という5つの事業(プログラム)で構成された種々雑多なイベントが催され、札幌のまちを彩りました。

〈No Mapsで実施された5つの事業の柱〉
Conference(会議) 情報の受発信や議論、創発などの場
Exhibition(展示) 次代の技術やサービスなどの展示・発見の場
Event(興行) 新たなコンテンツ、新たな技術・サービスの体験の場
Meet-up(交流) ネットワーキングの場
Experiment(実験) 技術やサービスの社会的な実証実験の場

会場の地図
会場の地図(提供 No Maps 2017 OFFICIAL GUIDE BOOK)

No Mapsの会場となったのは、札幌市内の38施設です。札幌駅南口界隈、札幌の繁華街として知られるすすきの駅周辺に、特に多くのイベント会場が密集。会場の各所でアーティストによる音楽イベント、映画祭等々のイベントが催されていました。

なかでもJR札幌駅から乗り入れ可能で、地下鉄のさっぽろ駅〜大通駅間をつなぐ、総延長680mの「札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)」会場では、「No Maps Trade Show 2017」が開催されました──。

チ・カ・ホのようす
札幌駅前通地下歩行空間「チ・カ・ホ」。チ・カ・ホでは「No Maps Trade Show 2017」のほか、イベントステージ、ARや大型サイネージを使った体験ゾーンに人が集まっていました

オール北海道で挑んだ、わがまちの Creative Convention

No Mapsは実行委員会形式で運営されており、委員・顧問には北海道を代表する民間企業、官公庁、大学などが参画。パートナーにも地元の主要メディア、教育機関、民間企業などが加わり、「オール北海道体制」で取り組んでいるといいます。

実行委員会で事務局長を務める廣瀬岳史さんは、北海道北広島市に生まれてからずっと北海道に住まわれ、民間シンクタンクの職員として地元の地域活性に注力されてきた人物です。廣瀬さんは産業振興のための地域ブランド「札幌スタイル」という事業に携わっていた折、事務局のオファーを受けました。「民間と行政の間にバランスよく立ち、両者の意識を翻訳して伝えることで物事を推進していくという方法を、札幌スタイル事業推進のなかで学んでいたので、多様性を詰め込んだNo Mapsのようなイベントでも活かせると思いました」(廣瀬さん)

まずは、No Mapsはどのような経緯から誕生したのかをうかがいました。

「来年で命名から150年が経つ北海道は、これまで官公庁による公共事業で切り拓いてきた歴史を持っています。すなわち官がお金を出し、民がそれを使って開拓する──そんな歴史があるのだと思います。しかしその反面、公共事業に対する依存体質がどことなくあって、北海道は民よりも官が主導になることが多かった。No Mapsも、その実施の背景には、札幌市がコンテンツ産業活性化を目的に、2006年から現在に至るまで実行委員会を組織して運営してきた『札幌国際短編映画祭』があります。」(廣瀬さん)

廣瀬岳史さん
No Maps実行委員会事務局長の廣瀬岳史さん

「ただ、短編映画というコンテンツに限定した事業だけでは、なかなか産業振興につながっていかないという現実がありました。10年経った今、それを見直そうという話が持ち上がりました。他方で、経済産業省北海道経済産業局で、2015年から“ドゥーチエ・プロジェクト”を始動させていました。これは北海道の活性化を目的とした有識者会議のようなものだったのですが、そのメンバーにNo Maps実行委員会委員長の伊藤博之さんや、副委員長の小島紳次郎さんが名を連ねていた。お2人はSXSWのことも当然ご存じで、これら2つの流れから、北海道でSXSWのようなイベントができないかとNo Mapsの話が持ち上がりました」(廣瀬さん)

ポイントはローカルのプレイヤーを巻き込んでいるところ

廣瀬さんのお話はまた後ほど……。再びTrade Show会場です。

Trade Showの会期は前期出展(7〜10日)と後期出展(11〜15日)に区切られています。あしたラボ編集部は後期出展を拝見しました。Trade Showの後期出展に参加されたのは8企業。富士通グループからも、スポーツスクール事業者向け情報配信サービス「スマホdeコーチ」、FUJITSU UX CLUBの面々がTrade Showに出展しています。

「展示を見ていても、学生さんやスタートアップがおもしろいコンテンツやサービスを出していたりする。地場の大学や企業とコラボレーションして、盛り上げたいですね」(FUJITSU UX CLUB・岡田一志さん)。「サービスを広めていくためには、やはり認知が必要。No Mapsのような場はユーザーテストもできるため、事業者としても参加することの効果は大きい」(株式会社富士通九州システムサービス・一丸経人さん)。

FUJITSU UX CLUBの皆さん

株式会社富士通九州システムサービス(FQSS)の皆さん
新たなキャンプ体験を提供する「AMBIENTONE Project」、ミュージックシェアアプリ「MuFo」などを出展したFUJITSU UX CLUBの皆さん(上)と、スポーツスクールのコミュニケーションツール「スマホdeコーチ」、アプリコンテストから生まれた「防災減災アプリ」などを出展した株式会社富士通九州システムサービス(FQSS)の皆さん

ところ変わって、札幌駅南口から徒歩5分のところにある会議研修施設「ACU-Y」会場。ここでもTrade Show が開催されていました。出展団体には「078(ゼロ・ナナ・ハチ)」実行委員会の皆様も。No Mapsの柱の1つに据えられた「Experiment(実験)」を目的の1つに置いているのは078も同じ。078実行委員の舟橋健雄さんは「北海道は広大で社会実験もしやすいと思いますし、なかでも200万都市札幌でやっていることの意義は大きい」と話します。

では078の実行委員から見たNo Mapsの印象は?

「私も展示会を切り盛りしながら、いろいろなところに出向いていますが、カンファレンスに力を入れていることが印象的。カンファレンスの数はしぼりつつも、とても丁寧につくっており、かつ、地元ローカルのプレイヤー──アカデミックな方から、自治体の方まで──をしっかりと巻き込んでいます。我々としても参考になる部分は多いです」(舟橋さん)

舟橋健雄さん
078kobeの出展ブース。株式会社神戸デジタル・ラボ広報室長で078実行委員の舟橋健雄さんに応対いただきました。なお次回の「078」は2018年4月27〜29日の3日間に開催されます

「札幌にいるからこそ感」を生み出すミートアップ

ACU-Y会場と道路を挟んで向かい側にあるのが、姉妹施設である「ACU-A」会場です。ここではさまざまなイシューのもとで開かれるカンファレンスに、人が集まります。そして、カンファレンスが終わった後には、登壇者や参加者の交流を目的としたミートアップイベントが連日開催されていました。

イベントのようす
ACU-A会場で夕刻から開かれたミートアップイベント。こちらの会場では毎回30〜40名が集まるのだとか

私も舟橋さんと一緒にミートアップに参加させていただき、いい出会いに恵まれました。舟橋さんも「ミートアップは078で取り入れたいポイントのひとつ」と話しており、多様な人たちが交わりあう場には、欠かせない要素なのかもしれません。登壇者の方や、わざわざ目的のカンファレンスのためだけに札幌に来られた参加者とお話をしているうちに──「せっかく札幌にいるから、ここから一緒に新しいことを生み出そう」というような──一種の仲間意識が醸成され、こうした共体験からコミュニティーが加速するのだろうな、と実感しました。

このほか「まちに、未来を、インストール。」のスローガンどおり、No Mapsには未来を感じさせるコンテンツが随所に組み込まれていました。なかでも未来を感じたのは札幌市街地で行われた「車の自動運転」です。

会期中、No Maps、札幌市、NTT、NTTデータ、群馬大学による共同実験として、No Mapsをフィールドに、公道を自動走行するパフォーマンスが実施されました。残念ながら、実際の現場を見ることはかないませんでしたが、自動走行車を目撃した方々は興奮気味に「5年後、10年後に“今は自動走行が当たり前だけど、俺は日本初の都市部公道での自動走行を札幌で目撃した”と言えるような場面に出会えた」とおっしゃっていたのが印象的でした。

自動走行の模様
自動走行の模様(提供 No Maps実行委員会)
「未来を感じ、触れられる場所」。それが、ここ札幌にあるのです。事務局長の廣瀬さんも次のように話します。

「特に大事にしたいのは、Meet-up(交流)とExperiment(実験)です。Conference(会議)、Exhibition(展示)、Event(興行)によって集まった人たちがコミュニケーションを取ったり、新しい価値に触れたりすることを最大の目的としています。とはいえ、ミートアップの設計にしてもTrade Showの仕掛け方にしても、まだまだ改善の余地がある。次年度以降の課題です」(廣瀬さん)

地の利はあっても、クリエイティビティは失いたくない

「No Mapsは、その発足の経緯もあって、行政・民間が一体となる運営体制が最初からとれていた」と話す廣瀬さんですが、行政・民間連携ともう1つ、No Mapsの強みは、広大な大地を持つ北海道の「地の利」です。おいしい「食文化」もあれば、農業のような「産業」もある。「観光資源」も「土地」も豊富です。先述した「自動走行車」のほかに、No Mapsでは日本初となるスマートサイクルシェアサービス「Mobike」の実証実験も行われましたが、これらも行政のバックアップと、広々とした土地があるからこそできることではないでしょうか。

それでも廣瀬さんは「札幌市だけに限定せずに、道内全体に取り組みを伝え、必要な土地にマッチングしていくことはこれから」としたうえで「北海道のもつ素材のよさや資源に甘んじず、もっと付加価値を高めたい」と話します。都会で暮らしていれば、北海道の「地の利」はうらやましくも感じますが、廣瀬さんは「それゆえにクリエイティビティが失われ、行政への依存体質になるようではいけない」と自らを鼓舞していました。

河原あずさん、タムラカイさんと
取材中たまたま遭遇したNo Mapsでアンバサダーを務めるFC POPの2人(河原あずさん:東京カルチャーカルチャー〈左〉、タムラカイさん:富士通デザイン〈右〉。お2人は同じアンバサダーである西村真理子さんとともに、さまざまな場所に出没。廣瀬さんは「発信力のある彼らがSNSなどでNo Mapsを広く知らせてくれた」と、アンバサダーによるイベントのブランディングについての効果も話してくれました

ずっと北海道の地域活性に注力してきたものの、地元・北海道に「やる気がある人がいても点にしかならない」という課題を感じていたという廣瀬さん。No Mapsという壮大な“場”をきっかけに、北海道が地域の人たちにとってより暮らしやすく、より生きやすい場になるため──廣瀬さんは“地図なき領域を開拓”し続けます。

※No Maps=アメリカのSF作家、ウィリアム・ギブスンを追った同名ドキュメンタリー映画に由来。その名称には「地図なき領域を開拓する」という意味が込められている。


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