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関係人口を増やす!? フェロー活動でわかった創出プロセス ──富山県南砺市でのフェロー活動報告

2018年08月01日



関係人口を増やす!? フェロー活動でわかった創出プロセス ──富山県南砺市でのフェロー活動報告 | あしたのコミュニティーラボ
あしたのコミュニティーラボ編集部の江波龍一です。普段はAIなど最先端技術を活用した新規事業の創出や、お客様の事業をデジタル化するコンサルティングに従事しております。 今回、富山県南砺市様の地方創生事業に携わらせていただきました。地方創生といえば、これまで「移住・定住者を増やす」ことが大きな目的に置かれていました。しかし日本全体が人口減少傾向にあるなか、地域が移住・定住者を増やすことのみを目的としていては、地域人口の奪い合いにより消耗していくだけ。「継続性を持って地域と関わりを持ちたい、けれど移住・定住のハードルは高い」と考える人が「観光以上、定住未満」ともいえる「関係人口」の考え方に共感しているようです。いわば地方創生の切り札ともなる関係人口ですが、実際にはどのように増やせばよいのか、わからないという自治体関係者は多いようです。関係人口創出を事業として展開する富山県南砺市の「応援市民制度」の事例から、関係人口を増やすヒントになる4つのステップをご紹介します。

南砺市の関係人口創出事業「応援市民制度」とは?

一般社団法人Code for Japanが主催するプログラムに「地域フィールドラボ」(旧コーポレートフェローシップ制度)という制度があります。

これは民間企業に勤める会社員が、約3カ月間、フェロー(特別研究員)として自治体内部に籍を置き、一緒に地域の課題解決を図る官民連携の共創プログラムです。2017年度には8の民間企業、12の自治体が参加しました。

私はこの制度を活用して2017年11月から2018年1月の間、富山県南砺市が地域応援事業として展開する「南砺市応援市民制度」(以下、応援市民制度)における「応援市民の拡大」に努めてきました。

応援市民制度とは、南砺市外の在住者でありながらも、南砺市のことを好きで関係性を継続したい方を「応援市民」として登録募集する制度のこと。わかりやすくいえば「2つ目の住民票を持ってもらう」ということで、単なるファンクラブ的な活動ではなく、「実際の応援活動が前提となっている」という点が最大の特徴です。「応援活動」は「都会で南砺市のPRをする」「南砺市まで足を運んで祭りなどのイベントの手伝いをする」等々、「南砺市の魅力を広め、地域をさらに元気にしていくこと」であれば、どんな分野の活動でも構わないとされています。

南砺市による地域応援事業実施の流れ(画像提供:南砺市役所)
南砺市による地域応援事業実施の流れ(画像提供:南砺市役所)

2017年8月に応援市民制度の運用が開始されてから、順調に応援市民の登録者数は増大してきました。さまざまな応援活動が実施されるようになるなかで、南砺市では「応援市民制度をさらによくするためにはどうしたらよいか?」という課題を持っており、それが私のフェロー活動のテーマとなりました。

新たな「応援市民制度2.0」に向けたブラッシュアップを行ううえで、フェロー着任当初、私は「初期段階の仮説」として次の点を考慮しました。

・現状の応援活動は単なるボランティア活動との区別が難しい。
・応援活動のインセンティブ(動機づけ)を強める必要がある。
・新たなインセンティブを導入した新制度を企画する。

しかし、この仮説の検証のため、応援市民・南砺市民・南砺市役所職員といったステークホルダーにインタビューやヒアリングを繰り返し実施していくうち、また別の視点が見えてきました。なぜならば、地元有志の方々が南砺市外の人の力を継続的に借り、一緒になって地元課題の解決にあたっているしくみが、すでにいくつか実現されていたのです。

そこで私は「インセンティブを導入した新制度づくり」から「市民有志による活動を“下支え”するしくみづくり」へと方針変更。これを南砺市の田中幹夫市長に提案しました。

2017年11月、田中幹夫市長(右)の定例記者会見ではコーポレートフェローシップ制度の活用による民間人材受入が発表された。写真左は筆者
2017年11月、田中幹夫市長(右)の定例記者会見ではコーポレートフェローシップ制度の活用による民間人材受入が発表された。写真左は筆者

応援活動に寄与する新の「インセンティブ」は何か?

「市民有志による活動」とは何だったのか? ここではその一例として、南砺市利賀地区にある合掌造りで有名な世界遺産「五箇山」のエピソードを紹介します。

五箇山では、都心にある大企業の従業員が年4回のボランティア活動に毎年訪れています。このスキームを創り上げ運営しているのが、五箇山で土産店を営んでいる荒井崇浩さんです。

荒井さんは私によるインタビューで、次のように述べていました。

「まずは、地域との接点づくりが重要なんですよ。その接点づくりのためには、最初に南砺市を認知してもらう必要がありますが、幸い、世界遺産・五箇山がある点で認知の段階をクリアしやすい。南砺市は他地域よりも優位かも知れません」

五箇山にある合掌造りの集落群
五箇山にある合掌造りの集落群は世界遺産に登録される。写真は「相倉合掌造り集落」の夏の風景(画像提供:南砺市観光協会)

もう1つ、荒井さんの言葉で印象にのこっているのが、次の言葉でした。

「地域との共同作業では、ゴールを達成するよりも、そのプロセスにおいて「誰と一緒にやるのか?」「楽しいのか?」が重要になる場合もあります」

この言葉が「応援市民のインセンティブの強化が必要」という初期仮説を見直すきっかけとなりました。

初期仮説で想定したインセンティブは、お金やモノといったダイレクトなものでしたが、荒井さんは地域との関係性を継続していくために「誰と一緒にやるのか?」「楽しいのか?」といった要素こそが、インセンティブとして作用する、と考えています。それらのインセンティブが1つでも欠けると、動かない人々がいるということです。

関係人口創出の源泉にあるのは「地元人の誇り」

私はこのほかにも、南砺市民の有志の方々へのインタビューを繰り返しました。

「お金でお礼ができない分、ボランティアの人と一緒に働き、楽しい経験を共有することを強く意識しています。そうするとイベントと関係ない日でも、家族や友達をつれて利賀に遊びに来てくれるようになるのです」(南砺市利賀地区の地域おこし協力隊・中嶋絵梨子さんと、Code for Nantoの谷内千尋さんの話)

「応援を呼びかける前に“自分は何をしたいのか、何者であるか”を理解してもらえないと応援は決してされない。応援を呼びかける前に、先ずは地域の人々それぞれが各自の人生の中で、なお後世に繋げていきたいと思う文化に育てなくてはならない」(伝統産業「城端蒔絵」の16代目・小原好喬さんの話)

ワークショップ
住民インタビューや地元大学生、市役所職員との意見交換を経てまとめた仮説検証の内容は報告会で発表。意見調整のためのワークショップも行った

これらのインタビューを通じて、私は関係人口を継続的に創出していくためには、次の「4つのステップ」があることに気付きました。

【Step1】その土地に関心を持ってもらう
まずはその土地のことを知ってもらう必要がある。

【Step2】足を運んでもらう
知ってもらったあと、実際に足を運んでもらう。これは観光目的でもよい。

【Step3】その土地を好きになってもらう
実際に足を運んでその土地の食や空気を五感で感じ、自分と合うようであればその土地を好きになる人が出てくる。

【Step4】そこに住む人を好きになってもらう
その土地を好きになると、別の観光地や別の食を目的に何度か足を運んでくれるようになる。そうしたなかで地元人との出会いが増え、その土地に住む人自体を好きになり、より継続的な関係へと発展することで関係人口になる。

4つのステップをこのまま実践するといっても、ステップごとにさまざまなやり方があり、かつ、地域に応じて最適なやり方も異なると思います。

ただし共通するポイントは「関係の源泉にあるのは、地元人の誇り」ということです。地元の人間が伝統の意義を認識し、誇りと自信をもっていないと、仮に他の地域の人を惹きつける観光資源をもっていたとしても、それが世界遺産に認定されることはないでしょう。そして世界遺産を保有していたとしても決して継続的な「関係」にまでは至らないと思います。

国も2018年度総務省案件「関係人口創出事業」といった施策で関係人口を盛り上げようとしています。こうした国の施策の流れにうまく乗ることも大切ですが、地域の人が自分ゴトとして考えて行動をしないかぎり、関係人口創出は決して成功しないのではないでしょうか。


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