IoT時代のおもちゃ、”Moffバンド” はこうして生まれた ──大阪イノベーションハブ(2)
ハッカソンのアイデアを、アイデアのままで終わらせないために──大阪イノベーションハブ(3)
失敗してなんぼ。イノベーションを生み、育てる流儀とは?──大阪イノベーションハブ(4)
イノベーションのエコシステムをつくる
大阪・梅田駅北側のうめきた地区再開発の一環として2013年4月にオープンした複合施設、グランフロントおおさか。そのナレッジキャピタルタワーに、イベントスペースやミーティングスペースをもつ約600㎡の「大阪イノベーションハブ」(以下、OIH)がある。ハッカソンやワークショップ、国際会議など、昨年度だけでも約200回のイベントが開催され、約1万人が訪れた。
OIHは、テクノロジーを事業化する起業家の支援拠点として大阪市が開設。大学・研究機関、起業家、エンジェル投資家、VC(ベンチャーキャピタル)、企業をつなぎ、世界中から人材・情報・資金を吸引するイノベーションのエコシステム創出を目指している。世界市場に通用するイノベーションを大阪から発信しようというのだ。自治体がこうした拠点を設けるのは全国的にも珍しい。
「1年間やってみてわかったのは、公共の設定する場は安心して人が集まりやすいということです」と語るのは、大阪市経済戦略局理事の吉川正晃さん。
大阪市経済戦略局理事 吉川正晃さん
「首都圏では企業同士のクラスターで一定の質と量になりますが、関西圏だと公共がハブになる余地がまだ多い。関西には優れた研究機関と大学が多く、日本有数のものづくり企業の集積もあり、イノベーションの起きる要素に事欠きません。にも関わらず大阪市では企業の東京への転出が増え、経済的な地盤沈下が起きています。
そもそも日本は起業家を支援する環境に乏しく、シーズを育てるエンジェル投資や、事業化に資金提供するVCの規模はアメリカの10分の1以下。だからこそ、大阪をハブとして、人と技術と資金をつなぎグローバルなイノベーションを起こすエコシステムをつくりたいのです」
ハッカソンや国際会議を起業家支援の場に
OIH主宰の「HackOsaka」は海外の大企業やVCと日本の起業家を結ぶ役割を果たしている
具体的な取り組みとしては、これまでに、ものアプリハッカソン、シリコンバレーツアー、オープンメンタリング、国際会議などを実施した。ものアプリハッカソンは、もの(ハードウェア)とクラウドサービスなどのICT技術を融合させたIoT(Internet Of Things)の潮流をふまえている。
「参加者のなかからエンジニア、デザイナー、マーケッターなど異質なスキルを持つ人たちの混成チームを事務局サイドであらかじめ設定しておきます。ものアプリハッカソン以外にも、企業と起業家との協業促進を目的としたハッカソン、大学発アイデアソン、企業が大学生を対象にして行うハッカソンなど、多種多様なハッカソンに毎月1回以上はOIHの場を提供しています」(大阪市経済戦略局イノベーション企画担当課長代理・角 勝さん)
大阪市経済戦略局イノベーション企画担当課長代理 角 勝さん
現地集合・現地解散のシリコンバレーツアーは自費参加だが、現地のアテンドは大阪市が行う。Google社やスタンフォード大学など企業・研究機関の見学、500Startupsのようなシードアクセラレーター(起業家の卵に投資し育成するインキュベーション組織)などへのプレゼンテーションの機会を提供している。昨年は26名の学生と10名の若手起業家が参加し、5社の企業が生まれた。
オープンメンタリングセッションはビジネスプレゼンテーションの公開レッスン。起業家が自分のビジネスプランを公開の場で発表し、上場を果たした起業家や経営者のコーチが評価・指導する。「成功者が成功者を育成する」世代を超えた交流も、イノベーションを永続的に生み出す土壌づくりの1つだ。
毎年1回開催される国際会議は「HackOsaka」と称し、IoT分野の国際的な著名人を招き、世界の潮流と連動すると共に、海外の大企業やVCと日本の起業家との出会いの場を提供している。今年のHackOsakaでは、スマートウォッチのPebbleを開発し、クラウドファンディングのKickstarterで10億円を調達したエリック・ミジコフスキーさんなどが登壇した。
この他にも各種の勉強会や、起業家、VC、エンジェル投資家やメンターが集うモーニングミートアップなど、わずか1年の間に「イノベーションのエコシステム」づくりを目指す活動は急ピッチで進み、成果も次第に現れつつある。
IoT時代のおもちゃ、”Moffバンド” はこうして生まれた ──大阪イノベーションハブ(2)へ続く
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