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ステークホルダー全員が方向性を再確認する“場”へ──EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platform(後編)

2014年12月03日



ステークホルダー全員が方向性を再確認する“場”へ──EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platform(後編) | あしたのコミュニティーラボ
単に場をつくっただけでは、最初は活性化しても、徐々に廃れてしまう。そんな危機感を持ち、その「場」を起点にコラボレーションを進めたいと考えている企業に必要な考え方とはどんなものなのか。「外向きの仕事」づくりを志向するベネッセ「EdTech Lab (β) by Benesse」に続き、後編では顧客の課題をともに解決しようと「場」をつくった、富士通デザイン「HAB-YU platform」の担当者に話を聞いた。

起業? 支援? 大企業が場をつくる理由──EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platform (前編)

“改善型提案”から“からんだ糸をほぐし結い直す”仕事へ

外部との共創を加速するオープンなプラットフォーム。そうした場づくりにおいてEdTech Lab (β) by Benesseと共通するのが、富士通デザイン株式会社が今年の9月にオープンした「HAB-YU platform(ハブ・ユー・プラットフォーム)」(東京都港区)だ。
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明るくオープンな雰囲気をもつHAB-YU platformの様子

ソフトウェア&サービスデザイン事業部の平野隆さんによれば、HAB-YU platformを開設した理由の1つは「モノのスペックに応じたデザイン開発から、コト自体を生み出すサービスデザイン領域へのシフトが必要」と考えたからだ。
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富士通デザイン株式会社 ソフトウェア&サービスデザイン事業部デザインディレクター 平野隆さん

どういうことか。これまでは最終的に「モノ」へ落とし込むデザインの仕事とは、顧客の差し迫った現場の課題を解決することだった。たとえば「もっと集客できるショールームにするためにこのスペースをこう変更しました」といったような。

だが、そうした改善型の提案では解決できない大きな問題に顧客である企業も行政も今や直面している。実は、顧客自身にも課題の本質がつかめていなかったりして、何とかしなければいけないとは思っているが、どうすればよいのかわからないモヤモヤした状態で立ち止まっていることが少なくない。

「からんだ糸をお客さまと一緒に解きほぐし、突き詰めて考え、答えを引き出して、曖昧だった未来像やコンセプトに明確な形を与えていく。そうした〈コトづくり〉のニーズに応えることが役割の1つ」と平野さんは考えている。

「ほどく→結う→価値にする」。これが顧客との共創プロセスであり、HAB-YU platformのネーミングは、人(Human)地域(Area)企業(Business)(=HAB)を多種多様な方法で「結う」(=YU)という活動を表している。
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エントランス横。HAB-YU platformの役割が図示されている

たとえば流通業界共通の課題に「リアル店舗の未来像」がある。ネット通販が進展するとリアル店舗の存在意義が問われざるをえない。書店、ドラッグストア、ブランドショップなど、それぞれのフィールドにおいて知恵を総動員し、リアル店舗の10年後の姿を探る。そのような試みも展開できる共創の場がHAB-YU platformだ。

場を起点に、コラボレーションを数珠つなぎにしていく

HAB-YU platformがあるのは六本木のアークヒルズサウスタワー。森ビル株式会社が展開するアークヒルズエリアは、最先端企業の集積地でありながら都市型レジデンスも数多い。こうした立地を活かして、アークヒルズの入居企業や地域コミュニティとのコラボレーションもHAB-YU platformの活動では視野に入れている。

「森ビルさんのネットワークを通じ、今まで富士通としては接点のなかったチャネルで新しい共創プロジェクトを立ち上げたり、互いのネットワークを活用し都市部と全国地域を結ぶ新たなビジネスの創出を目指したり、アークヒルズにあるからこそ可能なアウトプットを生み出していきたい」と、ソフトウェア&サービスデザイン事業部の高嶋大介さんは語る。
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富士通デザイン株式会社 ソフトウェア&サービスデザイン事業部 チーフデザイナー 高嶋大介さん

ワークショップや対話を通じたアイデア形成のみならず、エンジニアやデザイナーが関わりプロトタイプにまで落とし込む。研究開発から検証実験、具体化まで一貫して行うプラットフォームとしてHAB-YU platformという場はある。

「ICTだけでは克服できないし、狭義のデザインだけでは解決できない問題も社会にはたくさんあります。でも、それらをすべてひっくるめてグランドデザインすることが僕らの仕事だと考えていて、制度やルール、そして場をつくることだったり、他の企業や自治体、大学などとの連携が欠かせません」と高嶋さん。

さらに、顧客や提携先など外部との共創の場になると同時に、社内における共創の場としてもHAB-YU platformを実験的に使ってみたい、と平野さんは語る。

「新しい製品やサービスを考案するための社内横断的なプロジェクトは以前からたくさんあるのですが、そうした活動は得てして、いつのまにか立ち消えになるケースが多い。なかなか集まれる機会と場所がなく、なんとなく延び延びになっているうちに自然消滅してしまうからです。たとえば週に1日、HAB-YU platformを社内横断的に使えるコ・ワーキングのためのサードプレイスとして開放するなど、これまでと違うワークスタイルのできる場としても機能させたいと考えています」

目指す方向性が一致していたらOK、余裕のある意思決定

EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platformは、ともに大企業のなかから生まれた「イノベーションを促進する場」だ。成功体験の呪縛や縦割り組織、前例主義の踏襲などの弊害によって、とかく日本の大企業からはスピード感のあるイノベーションが生まれにくい、と言われ続けて久しい。しかし、過去の延長線上ではない新たな価値を生み出さなければ、未来はつくれない。

大きな組織の内部に「未来が生まれる場所」を充填するには、どうしたらよいのか。そうした場づくりには、どのような仕掛けが必要なのだろうか。

EdTech Lab (β) by Benesseの森安さんは「部署の垣根を越えて行動しても、目的とする方向が望ましければ良しとする余裕のある意思決定」が不可欠と指摘する。EdTech Lab (β) by Benesseは開設当初、ベネッセコーポレーションデジタル戦略推進部に属していた。だが今はベネッセホールディングスに位置づけられている。

事業会社から持株会社に移すことによって、すぐに利益を生む事業を展開しなければならない本体とは少し離れたところに、幅広い可能性を探る場として位置づけたわけだ。こうした仕掛けも「余裕のある意思決定」の表れだろう。
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また、HAB-YU platformの平野さんは「大手の製造業には、そもそもエンジニアや研究者、コンサルタント、デザイナーなど、さまざまなプロフェッショナルがいて、多様なリソースをうまく展開すれば新しいコトを起こせる可能性が高い」と語る。

また、全国の自治体や企業とのネットワークがあり、地域ごとに現場の状況や課題を事細かに把握しているのが日本の大企業だ。外資系企業にはないこうしたアドバンテージを活用すれば十分にイノベーションのタネを掘り起こせるが、そのためには、他企業と連携する組織インフラや、ファンディングなど金銭的な支援のプロセスまで考慮した仕掛けが必要、と平野さんは考えている。

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人材、資金、インフラ、ノウハウなど大企業ならではの豊富なリソースを活かして外部の多様なプレーヤーを巻き込み、未来をつくり出す。EdTech Lab (β) by Benesse やHAB-YU platformのような大企業発のイノベーション拠点にかかる期待は大きい。

起業? 支援? 大企業が場をつくる理由──EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platform (前編)


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