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地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集” とは? ──イベントレポート(前編)

2015年01月28日



地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集” とは? ──イベントレポート(前編) | あしたのコミュニティーラボ
あしたのコミュニティーラボではこれまで地域が抱える課題に挑む、先進的な取り組みを紹介してきました。その先進的な活動を行う実践者たちは、誰にどのようなメッセージを伝えているのでしょうか。今回登壇いただいたのは、地域ならではの資産を活かすことで地域を元気にしようする3人で、情報を形にして発信する、「編集」という行為が活動に大きく関連しているのが共通点です。活動において“地域”からどんな情報を得、それを伝えているのか。ほかの地域での活動にも展開できるであろう、“編集方法”と問題意識を共有しました。前編は実践者たちが現在行っている活動と、その背景について説明します。

地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集” とは? ──イベントレポート(後編)

地域の魅力を最大化する先駆者たち

今回モデレーターを務めたのは富士通研究所の原田博一さん。まちの生い立ちを語る古い写真をコミュニケーションツールに使う「ヒストリーピン」などの活動を通じ、全国各地で地域活性化に関わるワークショップを展開しています。
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株式会社富士通研究所 原田博一さん

東北からは、今年のグッドデザイン大賞金賞を受賞したNPO法人東北開墾代表理事『東北食べる通信』編集長の高橋博之さん。都心の生活者、地域の生産者を結びつけるために、生産者の背景に流れるストーリーを取材。それを冊子にまとめ、その生産者がつくった自慢の1品とともに生活者に送付し、商品だけでなく、生産者のファンにもなってほしいと精力的な活動をしています。

特にIT企業のサテライトオフィスが集中し、熱視線が送られる徳島からは「たからのやま」の本田正浩さんが登場。数々のWebメディアの運営に関わってきた経験を生かし、自ら地域をテーマにしたWebメディアのスタッフとして地方と東京を行き来する生活に加え、高齢化した集落の高齢者向けに、タブレットの使い方などをレクチャー。ITで地方と都心を結ぶ活動を精力的に行っています。

五稜郭をはじめ、歴史色豊かな建造物が並ぶ北海道・函館の地から登壇いただいたのは、公立はこだて未来大学の木村健一教授。「せんだいメディアテーク」をはじめ、地方の特色を生かした公共建造物のコンセプト設計やビジュアル設計を行ってきた経験を生かし、現在は函館の歴史的資産を生かした観光資源の創出に携わっています。

生産者への共感力を引き出すことで、“当事者”になってもらう

最初の登壇者は、NPO法人東北開墾代表理事の高橋博之さん。2013年に立ち上げた『東北食べる通信』は、生産者を特集した月刊誌と食べものが会員に届くしくみを起点に都市の消費者と地方の生産者をつなぐアイデアが評価され、2014年グッドデザイン賞金賞を獲得しました。
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NPO法人東北開墾代表理事 高橋博之さん

ふだん食べているものの生産者の顔が1人でも思い浮かびますか? と高橋さんは問いかけます。『食べる通信』はそこにスポットを当てました。自然に向き合い、翻弄され、それでも独自の哲学で海、山、里の幸をつくり続ける生産者のストーリーがメインで、食べものを付録にしたのです。食べものがメインで生産者の情報が付録の産直宅配サービスとは正反対。定期購読者1,400人、月次解約率2%と、強固な会員に支えられています。

食べ終わってから広がる価値。それが『食べる通信』の真価です。読者限定のFacebookグループで消費者と生産者の「感謝の交流」が盛り上がります。互いにはじめて顔が見える関係になるのです。現在は、定期購読者のグループ登録率85%、Facebookへの月間総ポスト数250回・総コメント数1,500回という活発なコミュニティに成長。さらに、宮城県東松島市や四国といったそれぞれの地域の『食べる通信』がスタートするなど、その輪は全国に広がりはじめています。
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高橋さんの熱いプレゼンテーションに、多くの人が聞きいっていました

高橋さんは、生産者と読者の強固なネットワークを象徴するエピソードを紹介しました。それは、秋田の農家の田んぼが長雨でぬかるみ、機械で刈り取れず、読者にSOSを発信したら200人が駆けつけ、1.2haを15日で稲刈りしたというもの。一方で、高橋さんがプレゼン中に紹介した新聞記事「米価下落に農家悲鳴、つくるほど赤字」のような、生産農家の厳しい現状を見聞きしてもすぐ忘れるのは、しょせん他人事だから。そこに共感はありません。『食べる通信』の読者は、顔見知りになった農家の災いを自分事として受けとめ、“共感力”が生まれたことが、この活動が広まる原動力だといいます。

日本の1次産業をどうするか。あまりにも大きな問題ですが、それを少しでも自分事に引き寄せるため高橋さんは『食べる通信』を立ち上げました。

生産者の待遇は、徐々に悪化しています。時給200円を切って下がり続ける米農家賃金。2010年の厚生労働省の調査によると、1970年の1/4に減った260万人の農業人口のうち39歳以下は17.7万人と10%にも満たず、後継者問題は死活問題に直結しています。そして、これは農業だけではなく、漁業も同様。生産者の努力だけでいいのか。生命の源である食と農を守るため、良質で安全なら多少高くても買うし、援農活動にもできる限り参加する。結局のところ自分にはねかえってくる問題なのだから、消費者も傍観者ではなく当事者になる必要があるのでは? と高橋さんは問題提起します。

ITを接点に東京と地方を結びつける

株式会社たからのやま副社長兼COOの本田正浩さんは、時事通信社でウェブデザイナーやフォトグラファーを経験し、2010年にブログメディアTechWave.jpの立ち上げに参加しました。SNSやスマートフォンを活用したスタートアップベンチャーなどの取材記事を手がけるうち、次第にふくらんでいった疑問は「なぜ都市生活者に向けたビジネスばかりなのか」という点。
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株式会社たからのやま副社長兼COO 本田正浩さん

“ITの役割は離れた地域を結び合わせる”ことにもあるのではないか。そう考えた本田さんは2012年、「地域×IT」をテーマにしたオンラインメディア『finder』を立ち上げます。地域でユニークな活動をしている人物の魅力を、写真と文章で伝える人物名鑑のようなメディアとして、地域のネットワークが広がるきっかけになったり、他のメディアが次の取材先を探すのに使われるなど、地域、そして人を結びつける役割を担っています。

さらに本田さんは、メディアで地域の人たちを取り上げるだけでなく、自分たちが主体になって具体的な行動を起こしたいと考えました。そして、2013年に徳島県美波町で創業したのが「たからのやま」です。現在は地域の高齢者にスマホやタブレットを無料で教える「ITふれあいカフェ」を運営。ここでは、高齢者が製品開発の主体になるプラットフォームづくりをめざしています。メイカーズムーブメントやIoTといった流れにより、中小零細企業や個人にも新しいモノづくりの門戸が開かれたはじめた昨今、人口のボリュームゾーンである高齢者の声をマーケティングに生かすこと、あるいは高齢者自身も開発に参加することが求められているのです。

本田さんたちの活動がめざすのは、一足飛びの地域活性化ではありません。1人ひとりを元気にしていく。それを地道に繰り返す。結果として地域が元気になる。ITを接点に東京と地方を結び、発信と行動を結ぶ。それによって1人ひとりを元気にし、地域を元気にするのが本田さんたちの取り組みです。

「遊びに行きたい」と思ってもらう情報はどこに眠る?

木村健一さんは、公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科教授。観光地である函館は、いかに「遊びに行きたい」と思わせる良好な情報を伝え、来訪者にそれをサービスとして体験してもらうか、に命運がかかっています。
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公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科教授 木村健一さん

市立函館博物館や函館市中央図書館などの収蔵庫に奥深く眠っている、まだ表に出たことのない約62万点をこえる貴重な文化財資料。木村さんは、これらをデジタルアーカイブ化して観光振興に活用するプロジェクトに2003年以来、取り組んでいます。

大きな屏風絵などは何千枚にも分割して高精細に撮影しなければいけないため、デジタルアーカイブはやっと3,000点ですが、2012年から一般公開できるようになり、「函館のビール 歴史・産業・意匠」「写された幕末・明治の函館」「新島襄と幕末の函館」といった企画展・特別展で活用されました。

2014年は五稜郭築造150年祭のグラフィックデザインをさまざまなメディアを組み合わせ展開しました。なかでも目玉の試みは、ヨーロッパではよく見かけるリトファスゾイレ(円筒形掲示塔)です。デジタルアーカイブのコンテンツを円筒形掲示塔にし、史跡や街頭、観光施設に長期間、展示しています(2015年2月末まで)。つまりデジタルアーカイブを博物館から市内へ出したのです。函館の偉人に関する1級品の写真とテキストが掲載された高さ3m、直径90cmの30本のリトファスゾイレが17箇所に。1本20万円の制作費は地元の経営者たちが出資してつくられました。その形から、回り込んでその先が見たくなる、というのがポイントです。木村さんは街歩きツアーなどのイベントによるリトファスゾイレ効果で、路面電車の1日乗車券の購入者が前年度比で13%程度増えた(2014年5月分)とその効果を話しました。

少しずつだけれど、夜景のまち・函館に魅力をプラスアルファする、新しいビジュアルイメージを提供しつつある、とみる木村さんの野望は、2016年春の北海道新幹線開通に備え、南北海道全ての町にリトファスゾイレを立てることです。

魅力的な活動を行う登壇者のみなさん。それぞれの活動で、「誰に」「何を」「どう伝えるか」をしっかり形にしている様子をうかがい知ることができました。後編は今回のイベントのタイトルである“地域の再編集”をメインテーマに、高橋さん、本田さん、木村さんの活動をさらに掘り下げそのほかの活動にも活かせるポイントを見つける参加者参加型のプログラムを展開します。

地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集” とは? ──イベントレポート(後編)へ続く

関連リンク
東北食べる通信
たからのやま
せんだいメディアテーク


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