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地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集” とは? ──イベントレポート(後編)

2015年01月29日



地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集” とは? ──イベントレポート(後編) | あしたのコミュニティーラボ
地域が持つ資源である“情報”を組み合わせ、新しい魅力を発見するための活動を行う3名の登壇者たち。東北、四国、北海道でそれぞれ行っている活動はどんな情報をどのようにつなぎ合わせ、生活者に伝えているのかを探る「地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集”とは?」。登壇者が実践する魅力的な地域プロジェクトを紹介した前編に続き、後編はモデレーターの原田さんが提示するフレームワークをもとに、参加者と登壇者が活動を加速するためのヒントを共有します。

地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集” とは? ──イベントレポート(前編)

参加者の密度の濃い声を集める「ラウンドトリップ」

後半のフリートークセッションでは、3人の登壇者が1つずつ問いを投げかけ、参加者はワークシートに答えを自由に記入してもらいました。1登壇者につき5枚のワークシートが参加者間を回遊し、モデレーターと登壇者がフリートークしている間、参加者は思いついたことをいくつでも書き込めます。この試みは、原田さんによると、今回のイベントのために確立した新しいワークショップ手法、「ラウンドトリップ」というそうです。
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モデレーター:株式会社富士通研究所 原田博一さん

話を聞きながら、同じ課題に対して、さっきまでは思いつかなかったことを書き込んで、どんどんワークシートの濃度が上がっていきます。それに対して、それぞれ登壇者は、各自どのような問いを持ち寄ったのでしょうか。
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ワークシートが回遊することで、1回限りではなく何度でも書き込めるのが「ラウンドトリップ」の特徴

高橋さんの問いは「10年後、望ましい日本の食はあるのか、ないのか?」。
『食べる通信』がめざす消費者と生産者のミクロな連結を、どうしたら日本の1次産業のマクロな再生へ接続できるのか。この難題に答えは出ていません。

本田さんの問いは「活動を一緒に行う人を巻き込めて、会社組織よりも緩やかな、でも継続性のあるチームづくりとは?」。
どうすればもっといろんな人の共感を得て、仲間を増やせるか、という現状の課題です。

木村さんの問いは「地域コンテンツをもっと活かす方法は?」。
地域に埋もれている文化財や遺跡などを、どんな視点や発想で観光振興に活かせばよいか、工夫をこらしたアイデアを提案してほしい、という課題です。

感動と共感を呼ぶデザインの力

フリートークセッションのなかで、登壇者が共通して重視していたのは「デザインの力」。函館の街をもっと魅力的にしようと活動する木村さんは、自身の活動から、デジタルアーカイブのプロジェクトでも具体的な見せ方のビジョンが明快に示されると、それが感動や共感のきっかけになり、ゆるくつながっていても多くの人が集まりやすい、と言います。

また、フォトグラファーでもある本田さんは、『食べる通信』の写真とデザインが同一人物であると聞いて「そういうつくりかたもあるのか、やられたな」と思ったそうです。それを受けて高橋さんは「(東北食べる通信の)デザイナーは本当に面倒なヤツ」と笑わせます。「気に食わないと仕事をしない。現場へ行かないと手を動かさない。まるで昔の頑固な大工のよう」。しかし高橋さんは彼のことを気に入っています。なぜなら、常に全体のコンセプトを最高に表現するデザインを出すからです。
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参加者の手から手へ、課題に対する問いが記入されていきました

木村さんも本田さんも高橋さんもその根幹にあるのは、“文脈を掴まなければ意味の表現はできない”という考え方。まさしく、明快に示されたビジョンが多くの人の感動と共感を呼ぶきっかけになるわけです。

モデレーターの原田さんからは社会問題の解決にデザインを使うことを国家戦略として掲げるデンマークで、大手デザイン会社のプレゼンテーションを聞いた時に印象的だった言葉の紹介がありました。「デザインはデコレーション(装飾)ではなくプラットフォーム(社会基盤)」。デザインという切り口から地域の課題を捉え直してみるのも、有効なアプローチの1つかもしれません。

獲得した地域の“情報”を熱に転換する

原田さんは、“情報を編集する”ステップには3段階あると、自身のフレームワークを紹介しました。
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原田さんが提唱するフレームワーク「CADシンキングモデル」(提供:富士通研究所 原田博一)

原田さんによれば経験上、うまくプロジェクトを成功に導いた時の体験を振り返ると、ある共通した流れがあったと言います。その要素を抽出したものが原田さん独自のフレームワーク「CADシンキングモデル」です。その詳しい考え方を見てみましょう。

「CADシンキングモデル」
Context Thinking:「文脈の獲得」
考えようとするテーマ(主題)に関する情報を幅広く集めて、それらの関係性や流れに気付き、意味や問いを見出す。
Art Thinking:「意味の表現」
導き出した意味や問いのなかから最も大切だと思う事柄を突き詰めて、それを多くの人に共感をもって理解されるように表現する。
Design Thinking:「解決の工夫」
共感とともに集う人々と、よりよくする・解決するためのアイデアや工夫を考えて、モノやコトへ具体化する。

原田さん自身の成功体験の振り返りから生まれたのが、この「CAD シンキングモデル」です。

このフレームワークを意識してみると、情報を組み合わせつくりあげるメッセージは大きく変わると原田さんは続けます。考え方を聞きながら、ワークシートに自分が書いたコメントを読んでみるとその段階のうち、どこに位置しているアイデアなのか、あらためて意識し、認識することができます。参加者からの想いが詰まったワークシートに寄せ書きされた課題に対するコメントについて、登壇者から感想がありました。

10年後の日本の食の姿を会場に問うた高橋さんは「いちばん多い意見は、今の若い人たちの食や農に対する価値観が変わりはじめていることが希望ではないか、と。確かにそうです。頭でっかちの都市生活に飽き飽きしている。若い母親は夏休みに子どもを自然体験ツアーに参加させる。近所づきあいに憧れる大学生が限界集落に通う。価値観の転換が少しずつ進み、頭と身体のバランスを図ろうとしている。都会の消費者と地方の生産者が、互いの不足を補完し合えるかもしれないとあらためて思いました」と、『食べる通信』の活動意義を踏まえたコメントを述べました。
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参加者からのコメントを読み込んで、登壇者ごとに“編集”を行います

現代にフィットした、会社よりも緩やかで、有機的につながる組織のあり方を課題として挙げた本田さんは「皆さんのコメントを読んで、結局のところ私自身が〈おもしろいことをやってるんだ〉という熱意を全身から発散させるべきだと感じました。そうすれば興味のある人はおのずと関わってくれる。明日からとりあえず朝起きる時間を30分早めてエネルギーを充填します。いいきっかけになりました」と話しました。

函館の街の魅力化を推進する活動をさらに推し進めたいと考える木村さんからは、悔やむコメントが。「いろんな意見に触れてふと思ったのは、せっかく広く公開するためにデジタルアーカイブ化しているのに、まだまだ“出し惜しみしているな”、と。たとえば縄文にある失われた日本の原風景、アイヌ文化からの影響……といったテーマの提案を受け、もっともっとオープンにしなければと学びました」。

地域の未来をつくるための3段階

「地域を再編集する」をテーマに行ってきたイベントもいよいよ終わりに近づいたところで、モデレーターの原田さんがさまざまなワークショップを設計するときにいつも心がけているポイントを紹介しました。それは「関わった人たちがそれぞれ、お土産を持って帰れる」ということ。今回は登壇者と参加者が自身の活動の紹介と、そのなかの課題解決に参加者からコメントを得たことが、“お土産をお互いに与える”イベントになったことは間違いありません。

さらに、原田さんは「地域の未来をつくる」ために踏まえるべきプロセスは

「①どんな視野・視点で文脈を獲得し」

「②どんな意識や問いで意味を見出し」

「③変化に対応してどんな解決の工夫をするか」

と今一度紹介しました。この3点を今回の登壇者のプレゼンにあてはめてみると、地域で抱えている課題に取り組む道筋のヒントになるはず、と原田さんは締めくくりました。

<あしたのコミュニティーラボ>では、地域にある課題を追いかけるだけではなく、ある地域の問題解決方法が横展開できるようなノウハウを引き続き具体的な事例を通してお伝えしていきたいと考えています。今後のイベントにもぜひご期待ください。
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地域をつなぎ、地域の未来をつくる“情報の再編集” とは? ──イベントレポート(前編)

関連リンク
東北食べる通信
たからのやま
せんだいメディアテーク


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