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中小企業活性化の秘策は学生にあり? ──“産学官金”連携による「知財活用アイデアプレゼン全国大会」(1)

2015年02月05日



中小企業活性化の秘策は学生にあり? ──“産学官金”連携による「知財活用アイデアプレゼン全国大会」(1) | あしたのコミュニティーラボ
2014年12月6日、東京・中野で「知財活用アイデアプレゼン全国大会」が開催された。富士通株式会社が開放特許技術を提示し、それをもとに学生がビジネス化に向けたアイデアを競い合うイベントだ。今回は3回にわたり、この取り組みの意義について探った。まずは、大会優勝チームである埼玉大学の学生と、彼らの活動をサポートしてきた「さいたま市産業創造財団」の鈴木一生さんに話を伺った。

知財戦略は地域を救う? ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(2)
地域活性化のカギは、誰も無理しない体制づくり ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(3)

学生のアイデアで地域にビジネスを創出する

「知財活用アイデアプレゼン全国大会」は、全国の大学が、富士通が有する知的財産(特許)を活用したビジネスの“アイデア”を競い合うイベントだ。全国大会には10のエリアから、それぞれ地区大会を勝ち抜いてきた、専修大学、横浜市立大学、埼玉大学、駒澤大学、千葉工業大学、東京情報大学、嘉悦大学、東京都立産業技術高等専門学校、青森大学、大阪府立大学(発表順)が参加した。
chizai1-1寸劇を取り入れるなど、各チームが趣向をこらしたプレゼンを行った
中間プレゼン大会やブラッシュアップ会などを経て、11月の地区大会を勝ち抜いた面々が集い、自分たちの商品アイデアを15分間のプレゼンテーションにまとめて発表した。約80社の中小企業が聴講し、実際のビジネスとして展開したいアイデアがあれば、賞の優劣にかかわらず、主催者を通じてマッチングをしてもらうことが可能。それが、本イベントの大きな特徴だ。学生のアイデアをもとにビジネスにつなげることで、中小企業を活性化しようというねらいがある。単なるプレゼン発表大会でなく、すべてアイデアがビジネスになるかもしれないと、学生たちも緊張した面持ちだ。

最優秀賞を受賞したのは、埼玉大学経済学部・吉田智也准教授ゼミの在籍メンバー4名による「ゆるちゃろいど」。
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最優秀賞を獲得した「ゆるちゃろいど」チーム(左3人目から5人目、一人飛ばして7人目)

スマートフォンに接続しているときには緊急用充電器、非接続時はBluetoothによってスマートフォンの置き忘れを音を出して知らせる、置き忘れ防止器として利用できるキャラクターグッズで、富士通の「マスコットロボット技術」が活用されている。埼玉県深谷市のご当地キャラ「ふっかちゃん」を皮切りに、他エリアのご当地キャラや企業・大学のキャラクターなど、複数のキャラクターで広げていくことを想定。ライセンス料のかからないご当地キャラの場合、それに相当する売上高の4%を地域に還元する「地域貢献料」という制度も盛り込まれ、キャッシュフローがきちんと設計された企画の完成度が高く評価された。

転換点となった、企業訪問

話は2014年5月14日にさかのぼる。この日、優勝チームを輩出した埼玉大学では、吉田ゼミを含む3つのゼミから、地区大会に進む7チームが結成された。

結成当初こそ、学生ゆえにビジネス経験がなく、どのチームも意見がうまくまとまっていなかったというが、そんな学生たちに気づきを与えたプログラムがある。それが、さいたま市内の中小企業に自分たちのプレゼンテーションを見てもらう「企業訪問」だった。全国大会で優勝した「ゆるちゃろいど」チームの大塚愛真さんも、そのときのことが最も印象深いと話す。
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埼玉大学 経済学部 大塚愛真さん

「私たちが考えたアイデアに対して『そんなので売れるの?』『根拠はどこにあるの?』と厳しい意見をいただいたことが転換点でした。自分たちの売り出したいことばかりに夢中になり、お客さまが何をほしがっているのかまで考えていなかったと気づかされました」

そこから大塚さんたちの本気度も高まった。埼玉大学7チームのメンターとして、アドバイスをしてきた公益財団法人さいたま市産業創造財団(以下、さいたま財団)の鈴木一生さんも、「ゆるちゃろいど」チーム含め、学生の様子を振り返って、次のように話す。
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公益財団法人さいたま市産業創造財団 鈴木一生さん

「一般的に怠慢・無知・傲慢というのがまだ成長していない子どもの特徴。私たち大人も、ときにそうした思考になってしまう。そのような『子ども脳』から脱却させるため、企業訪問やティーチングを行い、厳しい指摘も含め多様な意見に触れる機会をつくりました。もちろん学生自身の努力もありますが、その甲斐あって彼女たちが優勝することができた。大会を終えた学生たちの声を聞いても、みんなが成長を実感できているようでうれしかったです」

下請け型から、自社ブランドで勝負できる企業に

見事、全国優勝を果たした「ゆるちゃろいど」チームだが、実現すべきゴールはまだ先にある。今後、さいたま財団では大会で出たアイデアの商品化に向けて奔走していくのだ。一方で、知財をもとにした学生のアイデアに対する中小企業の反応は、どのようなものなのだろうか。

「なかには『本当にできるの?』と疑問を持つ企業もあります。しかし私たちは今回のイベント以外にも、埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)とも協力して、知財活用のプラットフォームをつくり、ライセンス企業と地元中小企業のマッチングを行っています。そうした活動を知ってもらうという課題はありますが、参加いただいている企業からはおもしろいアイデアが出ていると好感触です」

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鈴木さんいわく、県内の中小企業のなかには、いわゆる「下請け型」から脱却したいものの、商品企画が弱かったり、販路が確保できなかったりする企業が多く、自社の新ブランドや新事業を展開したいというニーズはあるという。

「活動を通して、そうした企業を良い意味で“刺激”していくことが私たちの役割。知財活用はプロダクトアウト(つくり手視点)になりがちだけれど、一般的なニーズをくみ取ることができるという点で、今回のように学生を巻き込む取り組みは最適なんです。若い人の視点からそれらのニーズを汲み取り、そのニーズがつくり手の意欲と合わされば、もっとおもしろいものが生み出せるでしょう」

「知財活用アイデアプレゼン全国大会」はゴールではなく通過点。学生のアイデアを実ビジネス化し成功させて下請け型を脱却し、自社ブランドで勝負できる中小企業にすることが本当のねらいだ。次回は、「知財活用アイデアプレゼン全国大会」の仕掛け人、富士通ビジネス開発部の吾妻勝浩部長に地域活性化における知財戦略の可能性について伺う。

知財戦略は地域を救う? ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(2)へ続く
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