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知財戦略は地域を救う? ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(2)

2015年02月06日



知財戦略は地域を救う? ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(2) | あしたのコミュニティーラボ
「知財活用アイデアプレゼン全国大会」に特許技術を提示した富士通株式会社。2004年から約10年間にわたり、知財活用の可能性を模索してきた同社ビジネス開発部の吾妻勝浩部長に積極的な特許活用など、知財戦略が生み出す地域活性化の可能性について、話を伺った。

中小企業活性化の秘策は学生にあり? ──“産学官金”連携による「知財活用アイデアプレゼン全国大会」(1)
地域活性化のカギは、誰も無理しない体制づくり ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(3)

知財活用事業が生んだ“産学官金”連携

今回のイベントで提示された富士通の特許技術は「マスコットロボット技術」のほかにも「車載型ペットロボット」「高指向性マイク技術」「防盗用インクパック」「FP Codeサービス」「光触媒チタンアパタイト」「電子郵便受け技術」などさまざまだ。

たとえば「FP Codeサービス」は、印刷物のデザインを損ねることなく、QRコードのように写真などからWebコンテンツを誘導できる技術。どんな場面でどんなものに「FP Code」を埋め込めば日常にひそむ課題を解決できるのか、地区大会や全国大会でもいくつかのチームが商品アイデアを発表した。

優勝をねらいプレゼンをする学生と、そのアイデアをもとに実ビジネス化の種を探す中小企業。全国大会会場は両者の熱い想いが渦巻いている。一方で、富士通が特許のライセンサー(許諾者)として参加する意義はどこにあるのか。このイベントの意義について、同社ビジネス開発部の吾妻勝浩部長は、そのステークホルダーの多様性に触れ次のように語った。
chizai1-1富士通株式会社ビジネス開発部 吾妻勝浩部長
「まずご理解いただきたいのは、この取り組みが金融機関も巻き込んだ『産学官金』のイベントであること」と吾妻部長は話す。

みると確かに、地区大会から全国大会まで、それぞれの地域の信用金庫が主要な役割を担っている。協力機関として自治体やさいたま財団のような公益財団法人が名を連ねているのは理解しやすいが、なぜ地域の信用金庫がこのような知財活用の取り組みに参画しているのだろうか。

「地元に密着した金融機関は中小企業を熟知していますから、富士通が持っている特許や技術シーズを見て、『これだったらあの会社がいい』といったことをすぐにわかってくれます。地元の中小企業に元気がないと、地域密着型の金融機関は存在意義を失ってしまいますし、将来的にビジネスにまで発展すれば融資もしやすいというメリットもあるはずです」

そもそも吾妻部長が地域の中小企業に向けた知財活用の取り組みをはじめたのは、2004年のこと。

「中小企業に特許や技術シーズを使ってもらうにも、技術そのものを説明しただけでは、広がっていかない。『お客様のお客様』まで考えた『出口戦略』を示さないと成約をまとめるのは難しく、私たちは技術の1つひとつに対してそれを示し、販売先まで探ってきました」(吾妻部長)

2007年頃には川崎市と連携し、後に「川崎モデル」と呼ばれる成功事例が生まれ、富士通でも16件の特許がビジネスに発展している。そして2011年以降、金融機関との連携がはじまり、活動のエリアはますます広がっていった。

富士通の知財をいかに活用するかが吾妻部長に課せられた使命だが、防衛や差別化を図る“特許戦略”だけではない。富士通の知財を中小企業の事業領域に変換し活用してもらう。目指すところはあくまでも中小企業と共生するための知財活用。吾妻部長は、地域に新しいビジネスが生まれることを願っている。

“ポスト川崎モデル”が生まれる兆し

chizai2-2

新たな試みとして、大学や高等専門学校も参加する今回のようなイベントをはじめたのはなぜなのか。

「私たち大人の頭だけだと、決まりきったアイデアになってしまい、なかなか出口戦略にならないものなんです。しかし、このイベントの中心にもなっている文系学生たちは、私たちの時代とは考え方が根本から変わっていて、日常で触れているものもまったく異なる。試作品にしても、理系の学生だと本当にしっかりとしたものを持ってくるけど、文系の学生はどこか無骨。だけど得てして、そうしたものが中小企業の皆さまには喜ばれるんです」(吾妻部長)

一方で、学生側のメリットもある。「ゆるちゃろいど」チームの大塚さんは、次のように話す。

「商品をつくるというと、トンカチでトントン叩いて工作していくようなイメージがあったけれど、今回の体験を通して、自分の頭で考えたことをしっかりとしたビジネスにまで落とし込んでいく、そんなものづくりもあるのだと実感しました。将来、文系の私は技術を生み出すことはできないかもしれないけど、ここで学んだことを活かし、マーケティングや販売などの面から日本の技術を支えたいです」

今後、富士通ではこの活動を全国により広げていこうと考えているが、地域性に富んだ「ポスト川崎モデル」が生まれる兆しも感じているようだ。

「今回参加した青森での地区大会には海外からの留学生も参加していて、一生懸命提案してくれた。人のためにビジネスを盛り上げようとするのは日本人特有の『利他の心』。その姿に海外の人も感動し、興味を持ってくれればおもしろいですね」(吾妻部長)

川崎の他にも、知財活用の新たなモデルケースとして、注目を集める地域がある。それが「知財活用アイデアプレゼン全国大会」で優勝チームを輩出した、埼玉だ。次回は、その取り組みのキーマンである、埼玉県産業技術総合センター副センター長である鈴木康之さんに、知財活用の取り組みについてお話を伺う。

地域活性化のカギは、誰も無理しない体制づくり ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(3)へ続く
中小企業活性化の秘策は学生にあり? ──“産学官金”連携による「知財活用アイデアプレゼン全国大会」(1)


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