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地域活性化のカギは、誰も無理しない体制づくり ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(3)

2015年02月09日



地域活性化のカギは、誰も無理しない体制づくり ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(3) | あしたのコミュニティーラボ
今回のイベントで優勝チームを輩出した埼玉では、知財活用事業に注力している。富士通の吾妻部長やさいたま市産業創造財団とともに「埼玉モデル」を築き上げた埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)の鈴木康之副センター長に話を伺った。

中小企業活性化の秘策は学生にあり? ──“産学官金”連携による「知財活用アイデアプレゼン全国大会」(1)
知財戦略は地域を救う? ──“産学官金”連携による学生アイデアプレゼン大会(2)

地域経済活性化のための知財活用

「富士通の吾妻さんと知り合い、開放特許を地域経済の活性化につなげるプランを練りました。それが、現在私たちが進めている『特許ライセンスを活用した企業支援事業』のベースとなっており、知財を持つ大手企業や大学等と、自社製品をつくり展開したい中小企業を“商品アイデア”がつなぎあわせるモデルが築かれました」
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埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)鈴木康之副センター長

そう話すのは、埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)の鈴木康之副センター長だ。鈴木副センター長は、もともと公的な立場から創業者支援やベンチャー企業を担当してきた人物。地域経済活性化を「最大の使命」として活動を進めてきたなかで、富士通の吾妻さんと出会い、企業に対する支援策の1つとして、知財活用の取り組みを企画した。

「確実に成長するベンチャーを見つけるなんて、たとえるならば、小学生時代のイチローを見つけてくるようなもの。私たちがやりたいのは、リトルリーグをたくさんつくり、その選手たちにいろいろなチャンスを与えることなんです。そのなかで特別に成長した選手がいれば、次のステージに上がってもらい、さらなる支援をすればいい。すなわち、すべての企業が自由に成長できる体制づくりこそが重要で、知財活用を選択できるインフラ整備が必要とされていたというわけです」(鈴木副センター長)

そもそもSAITECは、地元企業の技術相談を受けながら、検査機器の開放や技術支援を行っている公設試験場。しかし100名弱のセンター研究員ではすべての企業をフォローできないため、かねてから県内外に強固な技術支援ネットワークの構築に努めてきた。知財活用事業のプランニングでは、そうしたネットワークが地域資源として活かされた。

オープンな“商品アイデア”がライセンサーとライセンシーをつなぐ

「吾妻さんと出会うまで、特許と中小企業を直接結びつけるのは非常に難しいと考えていましたが、吾妻さんと話をしていくうちに、ライセンサーとライセンシーの間に“商品アイデア”があればいいのではないかと考えるようになりました。特許を企業にそのまま持って行くよりも、商品アイデアの形にしたほうが理解してもらいやすい。たとえば、部品加工の企業ならば、『この部分だけならうちでもできる』といったふうに、組み合わせも可能になります」(鈴木副センター長)

こうして第1回となる「特許ライセンスを活用した企業支援事業 inさいたま 」が2013年10月にスタート。富士通から提示された3つの特許技術は、フジサンケイビジネスアイのウェブサイト「イノベーションズアイ」で公開され、一般公募がなされた。その結果、応募総数103件のアイデアが集まり、バイヤーや製品プロデューサー、弁護士などを招いた評価委員会によって、推奨される6件が決定。その後、さいたま財団によるマッチングが行われ、1件がライセンサーとのライセンス契約に至り、2014年10月の段階で、2件の新商品開発についてプロジェクトチームを編成して進めている。
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「特許ライセンスを活用した企業支援事業 inさいたま」では成果が生まれつつある(現在は募集期間終了)

富士通に続き、第2回の同事業では日産自動車が特許技術を提示。信州大学・中央大学・東京電機大学・東洋大学が参加する「大学の開放特許を活用した商品・製品アイデアコンテスト」や、今回のような大学生からアイデアを募るイベントを開催するなど、その動きは活発だ。

誰も無理する必要がない連携を実現

SAITECが中心となって進める埼玉の知財活用事業。大企業等の技術を学生や、ネット上でオープンにさまざまな人へ開き、またそのアイデアを中小企業へつなぐ。想像しただけでも大規模なプロジェクトであり、誰かやどこかの組織が無理をしないと回らないようにも思えるが、実際の運用についてSAITECの鈴木さんは意外と大変ではないという。

「私たちの活動は傍目にはたいへんそうに見えるかもしれませんが、実は事業のためのセンター組織はつくっていないんです。それぞれの『機関』がもっている『機能』を使っているだけ。特別なものをつくる必要がないし、誰かや組織が無理をする必要もない」

実は、知財活用を成功させた秘訣がここにある。すなわち「機関」同士の連携は得てしてうまくいかないものだが、「機関」の持っている「機能」をつなげてしまえば、わざわざ新しく専担組織をつくる必要もなく、動きもとりやすい。たとえば、埼玉に近い東京や、神奈川、群馬などと連携し、SAITECでできない技術支援を、その連携組織の機能を利用して行うなど柔軟な対応をしている。そしてこの場合の「機能をつなぐ」とは「組織をベースとした人同士のネットワーク」のことを指している。
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SAITECの技術支援ネットワーク(提供:埼玉県産業技術総合センター)

「人同士の組み合わせは、プロジェクトごとに変えてもいいんです。現に私たちのプロジェクトも主体者は、富士通だったり日産だったりさいたま財団だったり、フレキシブルなチーム編成。ただしここで重要なのは、事業を上昇気流に乗せるにはコーディネーター役が必要で、その人は自らが推進力をもってコトを進められる“自燃型”でなければいけないこと」と鈴木副センター長は話す。

自らが自燃型である吾妻部長や鈴木副センター長らがキーマンとなり、埼玉における知財活用事業をここまで牽引してきたのだ。

今回の「知財活用アイデアプレゼン全国大会」にて、埼玉大学の学生チームが優勝した背景には、学生の努力に加え、このような埼玉独自の先進的な取り組みがあったのだ。

組織を動かすのは、かなりの力を消費する。ならば、駆動力となる「人」を探し、組織内外の人と人をつないでみたらどうなるか──。富士通と埼玉県やさいたま市が中心となって動かしてきた知財活用事業には、なにか大きな物事を成し遂げたいときのヒントが詰まっているはずだ。

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関連リンク
特許ライセンスを活用した企業支援事業 inさいたま


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