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大学生と企業エンジニアの共創活動が生み出したもの ──立教大学佐々木ゼミとの8カ月(後編)

2015年02月20日



大学生と企業エンジニアの共創活動が生み出したもの ──立教大学佐々木ゼミとの8カ月(後編) | あしたのコミュニティーラボ
後期の成果発表会を終え、テーマオーナーであるIoTビジネス推進室の前には多岐にわたるジャンルのアイデアが揃った。注目を集めるIoT技術の進歩を日常的に見ているIoTビシネス推進室のメンバーたちは今回の取り組みから何を感じ取ったのだろうか。また、8カ月にわたるプログラムを設計したメンバーたちが2年目に課題として残したものとは。前期、そして後期の成果発表会を通じた共創活動を総括した。

大学生との共創活動の先に企業が見出したものとは ──立教大学佐々木ゼミとの8カ月(前編)

「共創」は企業の現場スタッフに何をもたらしたか

後期のプログラムは、富士通 川崎工場でのセンサー見学会、アイデアワーク、プロトタイピングワーク、ユーザー体験場面のムービー作成による有効性検証、アイデアのブラッシュアップあるいはピボット(スタートに立ち戻って練り直し)といったプロセスで進んで行った。IoTビジネス推進室のメンバーは毎回2名以上が参加して、学生へのメンター的な役割を果たした。
※詳しいスケジュールはプロジェクトの活動報告をご参照ください。
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学生とIoTビジネス推進室メンバーが中心となってアイデアを練り上げていった

今回の後期プロジェクトの成果について、IoTビジネス推進室の黒瀬義敏さんは「コンセプトを製品サービスにできるレベルまでのアイデアになっていました。たとえば〈Feel Deli〉なら、あのままつくるのは難しくても、〈受け取った時の相手の顔が見たい〉というコンセプトがとても良かったので、お母さんのつくったお弁当を子どもが開けた時にパッと顔が映り、そのデータを貯めておく、くらいのものならすぐ形にできそう」と、今後の可能性を感じている。
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アイデアを出す場ではその場でメモし、考えを共有することで議論を進めるよう工夫を行った

今回、テーマオーナーであるIoTビジネス推進室のメンバーは11月中旬頃からゼミに参加し、学生とともにアイデアを練った。学生にアウトプットを出してもらうため、工夫したポイントはなんだったのだろうか。IoTビジネス推進室に協力して参加した富士通エレクトロニクスのエンジニア、中嶋将義さんは学生と共同でプロジェクトを実施するのははじめてで、学生の発想の柔軟さがとても刺激的だったと話しながらも「何が欲しいのか、どんなことに幸せを感じるのか、困っていることは何か。それらを引き出すようなアプローチが難しかったですね」と、学生とのプロジェクトを振り返った。

「たとえば、色が変わるTシャツがあったらいいよね、というアイデアが最初に漠然と出てきました。そこで、色が変わったら何がいいんだろう? と。『楽しいから』と学生さんから答えがありました。じゃあ、どうしてそこで楽しくなりたいの? ……と深掘りしていくと、その奥底には、家族や友人とのコミュニケーションで苦労している、という背景があったりします。ならば、こんな機能があったほうがいいよね、といった違う視点が生まれる。そこが学生さんの強みなので、お互いの強みをうまく引き出そうと毎回試行錯誤でした」
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(左から)富士通 横田有輝さん、富士通エレクトロニクス 中嶋将義さん、富士通 黒瀬義敏さん

入社1年目でこのプロジェクトに参加したIoTビジネス推進室の横田有輝さんは「入社すぐの研修でも3カ月のアイデアソン研修プログラムがあったので、そのときの体験談などを学生さんに話して」アイデアを固める際の参考にしてもらったという。

「びっくりしたのは、学生の皆さんが活発に意見を交換されていたことです。富士通サイドが何も口出ししなくても、自分たちだけでどんどん議論を進めているチームもあったのでそこが驚きでしたし、前期でラピッドプロトタイピングやアイデアソンなどを体験したからこそだと感じました」

黒瀬さんは、今回のように特定部門がテーマオーナーになることで、通常業務とどうバランスをとるか、その難しさを感じながらも、引き続きチャレンジしていくことが重要と言及した。今後もし同じような学生との共創プロジェクトがあったら? という質問には「今回はIoTがテーマで特に制限無く自由に発想していただいた。次はわれわれが最初に何か具体的なガジェットを提示して、その機能や使い方を説明したうえで、これを活用して何か製品やサービスを考えてみましょう、という何かスタートを決めてアイデアを固めていく方法もおもしろいのではないか」と、今後の活動にも意欲を見せている。

身近な体験と切実な感情を基盤にしたコンセプト

今回の前期・後期合わせて8カ月のプログラムを中心になって設計・運営したのは富士通総研(FRI)のスタッフと富士通 IS部門戦略企画室のメンバー。その中心メンバーであるFRIのシニアコンサルタント・黒木昭博さんは「後期は〈共創〉の真価を問われ、学生も僕らも生みの苦しみを味わった」と明かす。

「前期は富士通フォーラムで最先端技術に触発されたこともあり、学生さんに勢いがあり、プロトタイピングも成果発表も充実した結果を残せました。それだけに2度目の挑戦である後期は、前期でわかった学生さんのもっている新しい発想や、企業の気づいていない価値観をどのように活かせば製品サービス開発に結びつけていけるのか、より難しさを感じながらの取り組みでした」
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(左から)FRI 佐々木哲也さん、秋山侑佳子さん、黒木昭博さん、富士通 福村健一さん、立教大学 佐々木宏さん

その反省をふまえ、後期のプログラム設計で重視したのが「ユーザー体験」だった。学生たちの豊かな感性、感受性を体験のなかからどう引き出すか。最初のワークではそこに焦点を当てた。どんなことでもいいから、身近な体験が自分のどんな感情を引き起こしたか。それを徹底して洗い出すところからプログラムをスタートさせた。

体験と感情が基盤にあればコンセプトの軸はブレない。その結果として、幾多の紆余曲折やピボットがあったものの、「その製品やサービスを自分はアルバイトをしてでも買うか?」との自問自答に耐えられるアイデアが絞り込まれていった。

たとえばTBWA\HAKUHODO\QUANTUM賞を受賞した「Proglass」の「マッスルペイン」チームは全員が体育会系に所属するメンバーで構成されていた。日常的に行う練習に対してのモチベーションを上げたい。スランプから脱したい。体験に基づいた切実な感情が根底にあった。

共創の新手法開発と企業人としての内省

テーマオーナー賞の「スマ箸」はこれからIoTビジネス推進室が中心となって進めている富士通内の社内ハッカソンにそのアイデアが取り込まれ、実現への取り組みがはじまる。学生との共創の最終的な成果は製品サービスとしてのリリース。確かにそうだが、必ずしもそれだけが出口ではないだろう。下手をすれば、企業が学生の知恵を借りているだけ、という虫のいい話にも受け取られかねない。
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FRI 佐々木哲也さん

企業にとって学生との共創の意義はどこにあるのか。あしたラボとしても何が結果として得られるか、予測が難しい中で活動していった。FRIのチーフシニアコンサルタント 佐々木哲也さんによれば、今回のプロジェクトは3つの果実をもたらしたと言う。

「第1に共創の新しい手法を開発できたこと。Facebookグループでコミュニケーションを取りつつ、ワークを進めるといった共創のためのICTツールをフル活用しながらのプロジェクトは、僕らにとっても新鮮な経験でした」

さらに、学生たちの瞬発力、行動力にも学ばせてもらったと言う。通常なら2時間かかるプロトタイピングを授業時間という制限のために40分でやらなければならない。しかし、その短さの制約が、かえって瞬発力、行動力を増幅させ、むしろ創造性を触発することがわかった。
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成果発表会でも自撮り棒など、最新のツールを積極的に取り入れていた学生たち

「第2に、準備から数えるとおよそ1年間ものあいだ、長期にわたって共体験したからこそわかった、学生たちの感じていること、考えていること。それはとても勉強になったし、これからのビジネスの参考になるものです。第3に、企業人としての内省。学生たちにごまかしは通用しません。分からなければ正直にわからない表情をする。そうするとこちらは言葉を選ぶようになっていくし、〈本当に考え尽くしたのか、上っ面だけで喋ってないか?〉と鏡に向かって自問自答しているような緊張感が走ります。自分が試されるんです」

学生にとって今回のようなプロジェクトは、いわば社会人としての予行演習のようなもので、今後の人生に貴重な財産となることは間違いない。と同時に、企業にとっても得るものが大きかった。大学生というパートナーとともに何をどうやってつくりだしていくか、プログラムの設計や社内との連携など、2年目も試行錯誤が続くに違いない。〈共創〉の真価は、双方がいかにその結果から新たな価値を見出すかにかかっている。結果としての成果と過程づくりとしての成果、2つの大きな課題がどう解決されていくのか、その過程を引き続き追っていきたい。

大学生との共創活動の先に企業が見出したものとは ──立教大学佐々木ゼミとの8カ月(前編)


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