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シニアSNSが社会課題解決のヒントになる? ──「桜」でつなぐ、シニアコミュニティーの可能性(後編)

2015年05月01日



シニアSNSが社会課題解決のヒントになる?  ──「桜」でつなぐ、シニアコミュニティーの可能性(後編) | あしたのコミュニティーラボ
「ユニバーサルデザイン」をコンセプトに、シニアにもやさしい携帯端末を目指す「らくらくスマートフォンシリーズ」のユーザーを中心とした「らくらくコミュニティ」。2012年からスタートしたコミュニティーは、シニアが「オン」「オフ」両方でつながるきっかけ、そして企業のマーケティングの場として注目を集めている。全2回の後編は、シニア向けコミュニティー形成の舞台裏と、来たる超高齢社会に向けた課題解決への糸口を探る。(トップ画像:らくらくホンシリーズ、Thinkstock / Getty Images)

桜のフォトコンテストで地域活性を応援する ──「桜」でつなぐ、シニアコミュニティーの可能性(前編)

若者をも惹きつける「居心地のよいコミュニティー」

「バイト代入りました!」

20代でアルバイトをしながら親の介護をする男性からの投稿に、「良かったね!」「おめでとう!」「がんばって!」などのコメントが相次ぐ。

富士通株式会社が運営する「らくらくコミュニティ」は50~70代の利用者が85%を超えるSNSだが、その掲示板では若いユーザーも交え、世代を超えた交流も盛んだ。開設から現在までの累計登録者数は25万人を超え、ユーザー満足度は70%にのぼる。サービス提供開始から3年。「らくらくスマートフォン」の普及とともに、オンラインでのコミュニケーションの場、オフラインのコミュニケーションの入り口としてユーザーが年々増加している。

ユーザー層の特徴が顕著に表れているのが利用時間帯だ。Facebookなど、他SNSは朝の通勤時間や昼休み、深夜などにアクセスが集中するが、シニア層が大部分を占めるらくらくコミュニティでは、朝6時から夜11時まで幅広い時間帯でバラつきなく利用されている。
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らくらくコミュニティの利用時間帯。どの時間でも一定数のアクセスがある
(提供:らくらくホンシリーズ)

朝のあいさつ、昼は散歩中に見つけた花の写真の投稿、ペットの様子や人生相談など、空き時間があれば常に見ている状況がうかがえる。毎日投稿するヘビーユーザーも多く、ある女性から「朝から晩まで見ていて、旦那に〈らくコミュ中毒か!〉と言われる」という声も上がったと言う。

これほどシニアの心を惹きつける理由はなぜなのか。それは「敷居の低さ」と「安全・安心」を徹底しているからであろう。利用する前からSNSそのものに「操作が難しいのではないか」「知らない人と交流するのは怖い」と壁をつくってしまう人も少なくない。そんな不安感を取り除くしかけが、随所に施されている。

安全・安心を担保するのは「専門スタッフによる24時間投稿チェック」だ。広告やセールス、個人情報、違法性があったり、誹謗中傷などにあたるコメントは公開を控えることもある。シニアが安心して使える場所づくりに努めた。

「みなさん礼儀正しいですね。投稿者への同意や激励の意味を込めてボタンを押し〈拍手〉を送る、いわば“応援機能”があるのですが、1つひとつの拍手に対して〈ありがとうございました、○○さん〉とこまめに返す方もいる。すべてのコメントに対応し続けた方がさすがにお疲れになったらしく〈しばらく休憩します〉と宣言後、またすぐに〈復活しました〉というエピソードもあります(笑)」(富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略本部シニアマネージャー 古木健悦さん)
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モバイルプロダクトの開発を手掛ける、富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略本部モバイルプロダクト統括部シニアマネージャー 古木健悦さん

生の声を通じて、シニア世代の本音に触れられる場

らくらくコミュニティはもともと、富士通の「らくらくホンシリーズ」の提供において、ハード面での使いやすさの追及に加え、シニアの心のよりどころとなる場所づくりを目指して開設された。

「最初はニックネームでしゃべり合える、掲示板機能のみのSNSのような形でスタートしたのですが、予想を超えて好評だったため、2013年8月のらくらくスマートフォン2の発売に合わせて本格的なSNSとしてゼロから設計し導入しました」と富士通のユビキタスビジネス戦略本部マネージャーの押田優希さん。
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富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略本部 コンシューマビジネス統括部マネージャー 押田優希さん

はじめてでも気軽に投稿できる「あいさつ」「近況」や、「ペット」「花」「旅」などシニアに人気の高いテーマの掲示板が30以上用意されている。毎月フォトコンテストを実施しているほか、単発で手芸作品コンテスト、だじゃれコンテスト、200文字小説コンテストなど、趣味を深掘りしたり、単純に楽しめたりするイベントに力を入れている。リアルな接点づくりにも努めており、コンテストの授賞式では「授賞式ということだけでなく、SNSの仲間とはじめて会えたうれしさで大変盛り上がった」(押田さん)そうだ。
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授賞式はオフラインで顔を合わせる機会として人気(提供:らくらくコミュニティ)

角川学芸出版などと「手書き俳句コンテスト」を実施したり、東京フィルハーモニー交響楽団のコンサート企画にあわせて、人生を変えた1曲を募集する掲示板を開設するなど、他社とのコラボレーションも盛んに行っている。

シニア層は我慢強い、良識を重んじるなどの傾向から、アンケートなどで本音を引き出しにくい面があるという。このコミュニティーは、コラボレーションする企業にとっては掲示板に投稿される生活に基づいた生の声や貴重な体験談など、アクティブなシニアの本音に触れるまたとない機会となっているそうだ。ユーザー間で年賀状の画像を投稿しあうなど、バーチャルなコミュニケーションも活発。また参加者以外には非公開である「個人サークル」機能を活用し、親しい仲間との交流も積極的だ。

「招き猫祭り」「キティちゃん自慢」「トイレ飾りつけ大会」などユーザー間の自発的な投稿による珍しいテーマでの盛り上がりや、「わが家のお雑煮」「季節の花」などシーズンに合わせて写真を投稿し合っている様子は、若者がメインのSNSでの盛り上がりと大きな差はない。一方で、介護の体験談やアドバイス、家族とのコミュニケーション、体調や健康といった切実な話題で真剣に情報交換し、励まし合うのもシニア層ならではの特長だろう。

こうした企画や運用努力により、今では「らくらくコミュニティがあるから端末を買い替える際もらくらくスマートフォンシリーズにする、といったユーザーが多い」と古木さんは語る。「人」を突き詰め、つなげていくことが、いかに求められているか感じられるエピソードだ。

超高齢化社会の課題に挑むインフラとして

らくらくコミュニティが築き上げつつある分厚いシニアユーザー層は、前編で取り上げた「さくらフォトコンテスト」のような、ソーシャルイノベーションを目指す活動のヒントにもなっている。日々の生活に根差したコミュニティーだからこそ、上記のようにシニアの生の声もわかる。たんなるキャンペーンの改善だけに留まらない、さまざまな課題解決の後押しにも活用ができるはずだ。

また、現在はアクティブなシニア層に新しい仲間との交流の機会をもたらしているが、家に引きこもりがちになってしまうシニア層に対しても、なんらかの価値を提供できるかもしれない。

「自治体や身近なコミュニティーとつながることによって見守りの役割を果たしてくれたり、簡単な掲示板代わりにしたり、地域のインフラとして活用できないか。今後チャレンジしたい課題です」(古木さん)。ICTを通じたシニアコミュニティーの形成は、超高齢化社会のコミュニケーション課題に挑む手段の1つにもなり得るだろう。

桜のフォトコンテストで地域活性を応援する ──「桜」でつなぐ、シニアコミュニティーの可能性(前編)


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