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社会人の“これからの学び”を最新潮流から考える ──イベントレポート(1)

2015年05月19日



社会人の“これからの学び”を最新潮流から考える ──イベントレポート(1) | あしたのコミュニティーラボ
現代の社会人を取り巻く環境は日々変化しています。今回のイベントは、社会の急速な変化に柔軟に対応するための「知識」と「スキル」、そしてそれらを身につけるための社会人の「これからの学び」をテーマに、最新の学びに通じた研究者・実践者をゲストに迎えて開催されました。これからの学びとその可能性を全員で考え、次へとつなげるためのきっかけをつくる本イベント。その様子を全3回でレポートします。

社会人の“これからの学び”を最新潮流から考える ──イベントレポート(2)
社会人の“これからの学び”を最新潮流から考える ──イベントレポート(3)

「オープン」と「ソーシャル」がもたらす新しい学び

イベントのモデレーターを務めたのは北海道大学准教授の重田勝介さん。教育工学やオープンエデュケーションを専門とし、日本におけるMOOCs(大規模公開オンライン講義)研究の第1人者として知られています。

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北海道大学准教授 重田勝介さん

富士通で自然言語処理やデータ分析を用いた研究をしている高橋哲朗さんは、2014年秋からMIT(マサチューセッツ工科大学)へ出向。AI(人工知能)や自然言語処理を教育に応用する共同研究に取り組んでいます。

実体験を通じた学びの機会を提供する一般社団法人リディラバの代表理事を務める安部敏樹さん。社会課題をテーマにしたスタディツアーの催行やNPOと社会企業家をつなぐカンファレンス、人材育成研修などのプログラムを展開し、「社会の無関心を打破する」取り組みに挑んでいます。

島根県隠岐郡の離島・海士町の隠岐國学習センターからは、以前あしたラボでも取材した大辻雄介さんが登壇。2014年に東京から海士町に移住し、地元の中学・高校と連携しながら、地域の子どもたちに新しい学びの場をつくっています。

今回は実際にイベントで参加者それぞれが日々何を学び、成長しているかを振り返るため、参加者主体のワークセッションを後半に設けました。そこでは重田さんが「日頃の経験を通じて何を学んだか」参加者に問いかけます。

プレゼンテーションに入る前に、モデレーターの重田さんがこの「問い」の意味について、「経験学習モデル」を用いて説明しました。

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オープニングで図を用いながら経験学習を説明する重田さん

「今回のイベントは社会人の学びをテーマとしています。それはつまり、教科書やカリキュラムからではない、仕事や活動のなかで日々の経験から学んでいることになります。経験を知識に変えるプロセスは『経験学習』と呼ばれ、1980年代に組織行動学者のコルブが経験学習モデルを提唱しています」(重田さん)

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コルブの経験学習モデル。このプロセスを繰り返して学ぶことを経験学習という
(提供:重田勝介)

つまり、ここでいう学習とは「知識の変換を通して知恵を創造するプロセス」。今回は参加者全員が自らの経験を振り返り、概念化することで知恵を創造することを目的に後半のワークを行いました。

万人への学習機会を提供するオープンエデュケーションの可能性

「学び」とひと口にいっても、そのかたちは多岐に渡ります。続いてのプレゼンテーションでは重田さんが「学び」の定義とその変遷を、キーワードを整理しながら解説します。

重田さんは教育者としての立場から、まず教育から学びへの移り変わりを説明。これまでの教育では“いかに上手に教え込むか”が重視されていましたが、近年では“いかに上手に学んでもらうか”という学習者支援の考え方が主流になりつつある、と語ります。

学びの変遷を捉える上では、メディアとの関係も重要です。15世紀の印刷革命以降、学校での教え方は先生の話す内容を口伝し生徒が暗唱する方法から、教科書で絵と文字を使いながら学ぶ方法に変わりました。近年では、動画など電子メディアを用いて学び、インターネットを介したコミュニティー内で先生がいなくても自律的に学ぶことも可能になりました。学びのかたちは、メディアと技術の発達によってさまざまに変容してきたのです。

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なかでもここ数年盛り上がりを見せるのが重田さんの専門である「オープンエデュケーション」の分野。無料で学べる教育コンテンツがWeb上に豊富にあるいま、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスをコンテンツに付与することで共有や改変をスムーズにし、教材の2次利用を促す動きが活発になっています。数万人規模の受講者がオンラインで学べるMOOCsもオープンエデュケーションの流れの1つで、達成度に応じた認定証を発行して能力認定を行うオープンな教育サービスです。

こうしたオープンエデュケーションを対面教育に役立てる新しい学習形態が「反転授業」です。あらかじめネット上の講義ビデオなどで予習し、授業では予習で得た知識を使って討論するなど、知識の定着と問題解決能力の育成を図ります。旧来の一斉講義とは異なる、知識を能動的に使いこなす「アクティブラーニング」が大学でも積極的に導入されはじめました。

重田さんがオープンエデュケーションに期待するのは、“複線的なキャリアを支援する教育機会の提供”だと言います。社会人を取り巻く環境が激しく変化する現代においては、社会に出てからも学び直し、知や技能を常にアップデートする必要性が高まっています。教育制度の外側で教育機会を提供するのがオープンエデュケーションに期待される役割なのです。

「誰でも自由に教え合い、学び合える社会の到来が望まれます。これにICTは不可欠で、オープンな学びが広がることで、社会がどのように良くなっていくことかを常に考えています」と締めくくりました。

幅広い「学び」をキーワードで整理した重田さん。近年勢いを増すオープンエデュケーションの解説からは、ICTが学びにもたらした変化の大きさを感じることができました。次回はそれぞれの登壇者が取り組んでいる「学び」について語ったプレゼンテーションの様子をお伝えします。

社会人の“これからの学び”を最新潮流から考える ──イベントレポート(2)へ続く
社会人の“これからの学び”を最新潮流から考える ──イベントレポート(3)


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