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地域を元気にする“コンテンツ”とは? ──食とマンガを軸にした新潟市の取り組み(前編)

2015年05月22日



地域を元気にする“コンテンツ”とは? ──食とマンガを軸にした新潟市の取り組み(前編) | あしたのコミュニティーラボ
地域コンテンツが持つ「創造性」を産業や観光、教育や福祉といったあらゆる分野に活かし、魅力あるまちづくりを目指す「文化創造都市」構想を掲げる新潟市。市民はもとより、市外からも注目される魅力あるまちをどのようにつくろうとしているのか。特に個性的な取り組みが行われている「食文化」と「アニメ・マンガ」の2分野に焦点を当て、地域が持つコンテンツの活用法を前後編で探った。

マンガ・アニメを切り口に人を呼び込むまちづくりは可能か? ──食とマンガを軸にした新潟市の取り組み(後編)

食育施設が親子連れで賑わう理由とは?

水辺や里山などの自然に恵まれ、米や野菜、花きの一大生産地である新潟市。豊かな食環境を反映してか、新潟市民は食育への関心度、生鮮野菜の1世帯あたりの購入量のどれにおいても全国平均よりも高い数値を誇っている。一方で、近年の社会情勢やライフスタイルの変化により、肥満をはじめとする生活習慣病の増加、伝統的な食文化の喪失といった課題も抱えるようになった。

あらためて日々の暮らしの基礎となる「食」を見直し、“新潟市の特徴を生かした食育”を推進することで活力ある住み良いまちにつなげたい──。新潟市では「食」に関する知識・選択力を習得し、健全な食生活を実践する人間を育てるため、2007年に「新潟市食育推進計画」を策定。2014年は2期目として4つの重点課題(朝食の欠食、肥満・低体重、食の安全に関する知識、食育推進に関するボランティア)を定めて計画を進めている。

新潟市の「食育」の拠点施設が、新潟市と指定管理者が運営する食と花をメインテーマとした体験と交流ができるエリア「いくとぴあ食花」(新潟市中央区)だ。いくとぴあ食花では食や花、動物とのふれあいをテーマとした施設を市の該当部署ごとに管理。農林水産部が所管する「食育・花育センター」では、ゲーム感覚で楽しみながら「食育」のきっかけになる体験展示コーナーや、開放感あるアトリウムなどが揃い、家族連れで賑わいを見せる。

色鮮やかな食品サンプルが並んだあるコーナー。1回分の食事メニューを8品までトレーに取り、読み取り装置に置くと、「その調子!」「惜しい!」「残念、バランスがよくないね……」など、食事バランスの診断をしてくれ、それぞれの料理グループのバランスについての情報が表示される。

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食品サンプルを使った「食事バランスチェック」コーナー

年齢・性別・活動量・朝昼夕食を設定すれば、主食、副菜、主菜、乳製品・乳製品、果物、菓子・嗜好飲料などの料理グループ別にカロリーや量の過不足の判定ができる。本物そっくりに作られた食品サンプルに触れながら親子そろって食を学ぶことができる体験型展示となっている。

ほかにも、「魚を3枚におろす」といった調理の疑似体験や、市内で生産・漁獲される食材のフェルト模型をかざすと、食材名や産地の情報などが表示されるディスプレイをはじめ、手を動かしながら「食」に対する興味・関心を呼び起こす工夫が随所に施された施設なのだ。

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新潟市 農林水産部食育・花育センター食育係 主査 和田友宏さん

新潟市が食育・花育センターを開館したのは2011年のこと。「年間入館者数目標は10万人でしたが、オープン3カ月で達成しました。現在は年間43万人を超えています」と話すのは、食育・花育センター食育係 主査の和田友宏さん。

「疑似体験するだけでなく、実際に調理体験もしてほしい」と子ども用の調理用品も備えた調理実習室を設置。市内最大級の規模といわれており、民間の料理教室でも珍しい充実ぶりだ。毎月センター主催の料理教室が行われるほか民間にも貸し出しており、稼働率はおよそ8割に達する。

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イベントや料理教室で使用できる調理実習室。市内最大級の大きさだ
(提供:いくとぴあ食花)

地域らしさを生かした食が豊かな暮らしの基礎となる

食生活を取り巻く環境は時代とともに変化してきた。バランスのとれた「日本型食生活」が実現したのは1980年前後とされるが、そこから徐々に食生活が欧米化・多様化し、伝統的な食文化の喪失や生活習慣病の増加が問題視されるようになる。

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新潟市は水稲の収穫量や食料自給率の高さが自慢

健全な食生活を送ることの重要性を問い直す機運の高まりを背景に、国は2005年に「食育基本法」を制定、本格的な食育推進に乗り出した。特に食育推進運動の展開に関しては「地域の食を知る」ことに重点が置かれ、自治体ごとに地域版の食育バランスガイドや食育関連の条例制定が行われている。ひと口に「食」といっても、その現状は地域によって異なり、地域の人々の暮らしと密接に関わっているからだ。また、食と暮らしのつながりを知ることは、食を通じた地域の理解や魅力発見にもつながる。

こうした「地域らしさを追求した食育」推進に向け、新潟市では「にいがた流 食生活」を軸に前述した「いくとぴあ食花」の整備や人材育成プログラムなど、ハードとソフトの両面で多面的な取り組みを行っている。

行政の仕事は「食に関心を持つきっかけづくり」

2012年から開始した「食育マスター制度」は、食育のスペシャリストを地域に派遣する新潟市独自のしくみとして、徐々に広がりを見せている。調理のみならず、農林水産、食品加工や流通といった食に関わる知見や技術をもつ人を食育マスターとして登録し、市内各地域に派遣することにより、食育活動を広げるとともに、食育を推進する人材の育成を図っているのが特徴だ。2015年3月末現在、8団体、52名の個人が登録されており、料理講習を中心に年間の派遣回数は100回を超す。

和田さんは「食に関心を持つきっかけづくり」が行政の役割と語る。市による第1次食育推進計画の総括調査(2011年)では、「主食・主菜・副菜のそろった食事をしている市民の割合」は、計画策定時(2006年)の59.5%から、目標値の70%を上回る71.7%に上昇した。その一方で「朝食を欠食する成人市民の割合」は、30歳代男性で28.6%から23.4%に減ったものの、目標値の15%には及ばなかった。「関心」から「実践」へのハードルは一足飛びには超えられない。

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食育・花育センターの調理室で定期開催される「子どもの料理教室」の様子
(提供:いくとぴあ食花)

「30年かかって日本人の食生活のバランスが崩れたとすると、元へ戻すのに30年かかっても不思議はないわけです。息の長い取り組みとして継続していかなければなりません」と和田さんは力を込める。

新潟市は食育への関心を高めるため、長期的視点で施策を展開している。「食」という万人に共通するコンテンツをソフト・ハード両面から訴求し、地域の食を理解、浸透させていくことで「食文化」を通じた地域活性にもつながる。後編では、食とはまた違うアプローチで地域活性を図る市の「マンガ・アニメ」施策に迫る。

マンガ・アニメを切り口に人を呼び込むまちづくりは可能か? ──食とマンガを軸にした新潟市の取り組み(後編)へ続く

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いくとぴあ食花


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