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マンガ・アニメを切り口に人を呼び込むまちづくりは可能か? ──食とマンガを軸にした新潟市の取り組み(後編)

2015年05月25日



マンガ・アニメを切り口に人を呼び込むまちづくりは可能か? ──食とマンガを軸にした新潟市の取り組み(後編) | あしたのコミュニティーラボ
豊かな食環境を活かしながら市民の「食育」を推進する新潟市だが、地域資産は食や自然だけではない。有名マンガ家やアニメクリエーターを数多く輩出してきた背景を持ち、マンガ家育成と積極的な観光誘致による地域活性のサイクルを生み出そうとしている。後編では市のマンガ・アニメ活用施策を例に、段階的な地域活性を行うその取り組みを追った。(トップ画像提供:にいがたアニメ・マンガフェスティバル実行委員会事務局)

地域を元気にする“コンテンツ”とは? ──食とマンガを軸にした新潟市の取り組み(前編)

著名マンガ家やアニメクリエーターの一大輩出地、新潟

『天才バカボン』赤塚不二夫、『ドカベン』水島新司、『うる星やつら』高橋留美子、『るろうに剣心』和月伸宏、『ヒカルの碁』小畑健……新潟ゆかりの著名なマンガ家を挙げていくときりがない。新潟が数多くのマンガ家、アニメ関係者を輩出しているのは知る人ぞ知る事実だ。

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新潟ゆかりのマンガ家たち(「マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」をもとに編集部作成)

そんな新潟では、マンガやアニメに関するイベントが盛んに行われている。30年以上開催されている老舗同人誌即売会「ガタケット」をはじめ、2000年に設立し、80名以上のプロマンガ家を輩出している「JAM日本アニメ・マンガ専門学校」、1998年から毎年開催されている「にいがたマンガ大賞」は自治体が主催する全国初のマンガコンテストだ。さまざまな出版社から審査員が揃うこの大会への応募をきっかけに、2014年には14歳の女子中学生の伊藤里さんが少女マンガ誌でプロデビューを飾り、全国的に話題を集めた。

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新潟市文化政策課主査 白井麻也さん(2015年3月当時)

なぜこれほどまでに新潟ゆかりのマンガ家やアニメクリエーターが多いのか。新潟市文化政策課主査の白井麻也さんは、「はっきり理由は解明できてないんですが……」と前置きし、「黙々と地道に描き続けなければいけないのがマンガ。そんな根気のいる作業が向いている県民性なのかもしれないし、“地元の近くにプロになったマンガ家がいると、励みになってプロを目指す人が多いのではないか”とおっしゃる先生方もいます」と話す。

4年連続で「にいがたマンガ大賞」に応募し、ついに大賞を射止めた高校生もいる。マンガ家に欠かせない資質である“がまん強さ”に秀でたマンガ家志望者が多いのかもしれない。

マンガ・アニメはまちおこしの起点になるのか?

新潟市は2012年に「新潟市文化創造都市ビジョン」を策定、そのなかで「マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」を掲げた。5年計画のこの構想は、ステップ1(発展期)とステップ2(成熟期)で構成される。前者は都市イメージを発信することで交流人口の増加を図り、後者はクリエイター育成やコンテンツ産業誘致を進めることで、地域の活性化を目指すというものだ。

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マンガ・アニメを活用したまちづくり構想の展開イメージ
(新潟市資料を元に編集部作成/記載プロジェクトは記事内に登場するもの)

構想が策定されたのと前後して、それまで個別に発信していたイベントを統合し、「がたふぇす」(にいがたアニメ・マンガフェスティバル)がはじまった。2011年の第1回目(来場者2万3,000人)以来、着実に来場者数を増やしており、5回目の2014年は5万5,000人が参加。市内がマンガ・アニメ1色に染まる2日間になる。

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がたふぇすVol.5で「コスプレパレード」で自慢の衣装に身を包んだ参加者たち
(提供:にいがたアニメ・マンガフェスティバル実行委員会)

ステップ1(発展期)であるイメージ発信の拠点施設として、2013年に「新潟市マンガの家」「新潟市マンガ・アニメ情報館」が相次いでオープン。「マンガの家」は赤塚不二夫、魔夜峰央などゆかりのあるギャグマンガ家とその作品をテーマとした常設展に加え、初心者向けのマンガ講座を毎日無料で開催している。また、「マンガ・アニメ情報館」では人気マンガ・アニメを取り上げた企画展の開催の他、楽しみながらマンガ・アニメの仕組みがわかるコーナーなどを常設。この各コーナーには、新潟ゆかりの作家たちが生んだキャラクターを使用している。両館合わせ年間14万人ほどの来場者で「根強い人気を感じます」(白井さん)という。

マンガ家の卵を支援する、新潟市版「トキワ荘」

さらに、2011年には「マンガ・アニメのまち」サポートキャラクターとして「花野古町(はなのこまち)」と「笹団五郎(ささだんごろう)」を公募採用。市内を舞台としたオリジナルアニメシリーズは新潟出身のキャラクターデザイナーや歌手を採用し、“新潟”にこだわった。キャラクター素材はオープンデータとして無料で使用できるため、市では今後の広まりに期待をかける。企業とのコラボレーションやグッズ展開などで露出度を高めていく予定だ。

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サポートキャラクターの笹団五郎(左)と花野古町(右)。イベントなどにも積極的に出演している
(提供:新潟市文化スポーツ部文化政策課)

現在は、これらの取り組みに加え、「マンガの家パートナーショップ」として、「マンガの家」と連携して事業を行う店舗への補助を行っている。これはまちなかのにぎわいを作り、マンガ・アニメ文化を市内外へ広げる試みだ。たとえば「マンガの家」で描いたキャラクターを、パートナーショップへ持って行くと、オリジナルTシャツやスマホケースなどを制作できる。このプロジェクトによって商店街の人たちの間にも「マンガ・アニメというコンテンツを商売に役立てようとする動きが出はじめた」(白井さん)という。

また、ステップ2(成熟期)もすでに開始されている。目玉は「マンガ家創業・雇用支援シェアハウスモデル事業」で、同じアパートで切磋琢磨しマンガ界の巨匠が育っていった「トキワ荘」の現代版だ。光熱費と共益費を自己負担し、家賃は行政が2年分を補助する。市内の空き家の利活用促進も兼ねて、空き家をマンガ家志望者向けシェアハウスとしてリニューアル。プロ漫画家を目指す18~30歳までの女性を対象に入居者を募集した。

「入居資格は本気でマンガ家になりたい人。作品を見て、将来性も審査しました。はじめての試みなのでドキドキです。入居者には仲良く生活しながらプロをめざして勉強してほしい」と白井さんは期待を込める。今後は地域イベントのチラシを描いたり、似顔絵教室などで地域交流を図っていく予定だという。

海外へ向けての情報発信も課題の1つだ。足がかりとして台北や香港のイベントに出展するなど積極的に情報発信を行う。その効果もあり、マンガ・アニメ情報館やマンガの家には海外からも来場者が訪れるという。今後は市役所内で連携し、アニメ制作会社やゲームプロダクションなどの誘致を促進し「育った才能が新潟で活躍できる受け皿をつくりたい」と白井さん。認知度向上から経済効果をもたらし、地域活性化へつなげる挑戦は、これからが正念場だ。

コンテンツ資源を軸に“がたまる”を実現する

IT企業やIT技術者の集積地でもある新潟市で、新たに注目される取り組みが「オープンデータ活用」だ。ITやマンガ・アニメ関連企業の誘致や活性施策の1つとして取り組みがはじまったばかりで、2015年3月にはその第1歩として「“がたまる”アイデアソン・ハッカソン」を実施。オープンデータや地域コンテンツの活用方法を探った。“がたまる(=潟マル)”とは、“まちはじまる”、“ひとあつまる”、“しごと生まれる”を合わせた新潟の未来づくりを表すキーワードで、アイデアを創発するため、株式会社スノーピーク協力のもと設営したテントのなかでアイデアソンを行うなど随所に工夫が施された。

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イベント終了後はアイデアソン参加者全員で記念撮影

オープニングでは、新潟出身の起業家2人、クリエイターと読者をつなぐプラットフォーム「cakes」や個人向けのメディアプラットフォーム「note」を運営する株式会社ピースオブケイクの加藤貞顕さんと、ご当地の美少女を撮影した高クオリティーな写真集として若者を中心にヒットしたフリーペーパー「美少女図鑑」を展開する株式会社テクスファームの近藤大輔さんが「アイデアをビジネスにする」をテーマにトークセッションを展開した。

加藤さんは「いま熱い分野は、ITとリアルをからめた分野。IT分野で差別化を図るため、新潟でやるからには『新潟』を生かしたものがいいのでは」とコメント。例として、空き家と旅行者の宿泊ニーズをマッチさせた「airbnb(エアビーアンドビー)」を紹介し、あらゆる場所にビジネスのアイデアがあることを示唆した。

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(左から)株式会社ピースオブケイク 加藤貞顕さん、株式会社テクスファーム 近藤大輔さん

既存の取り組みに加え、地域の資源を活かした企画で地元の魅力の再発見や愛着を深めようとチャレンジを続ける新潟市。地元出身の若手起業家が示すように、ITとリアルをからめた分野に漕ぎ出したばかりの新潟市の地域コンテンツ活用にさらに注目が集まるに違いない。

地域を元気にする“コンテンツ”とは? ──食とマンガを軸にした新潟市の取り組み(前編)

関連リンク
新潟市マンガの家
新潟市マンガ・アニメ情報館
がたふぇす
花野 古町&笹 団五郎 オフィシャルページ


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