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「広い世界へ〜ごじょうめで、世界一周〜」。世界を知り地域も知る“グローカル”な授業 ──ハバタクが進める新しい学びの場づくり(前編)

2015年05月26日



「広い世界へ〜ごじょうめで、世界一周〜」。世界を知り地域も知る“グローカル”な授業 ──ハバタクが進める新しい学びの場づくり(前編) | あしたのコミュニティーラボ
いま秋田県で新しい学びの場が生まれている。同県にある国際教養大学へさまざまな国・地域からやってくる留学生と、地元 五城目小学校の子どもたちが交流しながら世界の文化・風習を学ぶ授業「広い世界へ〜ごじょうめで、世界一周〜」。これはハバタク株式会社が五城目小学校に提案して実現した半年間の特別授業で、国際教養大学の学生や地域おこし協力隊と共に企画運営している。まちづくりにつながる学びの場を目指す共創プロジェクトはどう実現したのか、丑田さんをはじめとした関係者に話を聞いた。

子どもにも大人にも知る喜びを届けたい ──ハバタクが進める新しい学びの場づくり(後編)

留学生と小学生がふるさとのプレゼンで交流

マレーシアのじゃんけんでは、「グー」「チョキ」「パー」は「石」「鳥」「水」。それぞれの国によって違うやりかたのじゃんけん大会で授業がはじまり、休憩時間にはその国ならではのおやつをみんなで楽しむ。留学生が紹介する母国の小学生事情に子どもたちは興味津々。昼ごはんは給食ではなく家に帰って食べることに驚いたり、宿題やテストがないと聞いて「いいなあ!」とうらやましがったり──。

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テストや食べ物のことなどさまざまな話題で、子どもたちと留学生が交流した(提供:ハバタク株式会社)

秋田県五城目町立五城目小学校では、2014年度から6年生が「総合的な学習の時間」を利用して「広い世界へ〜ごじょうめで、世界一周〜」という活動に取り組んでいる。国際教養大学(秋田県秋田市)の留学生を招いて交流しながら、世界の文化や風習を学ぶプログラムだ。

2014年度には香港、台湾、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、ノルウェー、イギリス、ニュージーランド、フランス、カナダ、アメリカの留学生が協力した。子どもたちは留学生の母国と生まれ育った地域についてのプレゼンテーションを聞いたり、その国のおやつを食べながら留学生と交流したりして、食や衣装や世界遺産など、おのおの興味を持ったテーマについてまとめる。

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留学生が自分の育ったまちのことを語るプレゼンの様子(提供:ハバタク株式会社)

だが、子どもたちにとって受け身の学びだけに終わらないのが、このプログラムの肝心なところ。今度は子どもたちが国際教養大に出向き、自分たちのまち、五城目の文化や風習を留学生たちに紹介するのだ。

かつて盛んだった林業や、室町時代から続く朝市に詳しい地元の人、特産のキイチゴ栽培農家をゲストに迎えて話を聞き、関心を抱いたテーマ別にグループを組んで調べ、プレゼンの準備を進めていく。

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五城目で活躍する地元のゲストによる授業の様子(提供:ハバタク株式会社)

12月の発表会では、授業でこどもたちにおやつをごちそうしてくれた「お返し」にと、保護者が協力して郷土料理の「だまこ汁」(ごはん団子と鶏肉、野菜を煮たもの)をその場でつくり、留学生たちにふるまった。

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子どもたちの発表会で出されただまこ汁に留学生は興味津々(提供:ハバタク株式会社)

子どもたち自らプログラムを変えた

「このまちの良さを留学生たちに伝えたいという想いが子どもたちの大きな目標になって、どの生徒も自主的に取り組んでいました」と、6年生担当の小玉恵(めぐみ)先生は振り返る。

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五城目町立五城目小学校6年生担当教諭 小玉恵さん

「朝市について発表するグループが複数あったんですが、それぞれ内容はだぶらなかった。歴史を中心に調べた子たちもいれば、今の朝市おすすめベスト3、のようなプレゼンをした子たちもいて。すべて自分たちなりに、どうしたら五城目の良さが伝わるか、アイデアを工夫してくれました」

同じく6年生担当の菅原恵(さとし)先生も「国際教養大の日本人学生から、文章にローマ字でルビを振ったり、写真や映像を多く、といったアドバイスは受けましたが、ほとんど私たちが手をかけなくてもいいくらい、自力で資料づくりを成し遂げ、意欲的な学びを見せました」と子どもたちの成長を語った。

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五城目町立五城目小学校6年生担当教諭 菅原恵さん

「ごじょうめで、世界一周」後半の小学生から留学生へのプレゼンテーションパートは、当初の想定では、国際教養大学に出向き、留学生によるプレゼンテーションから子どもたちが興味をもった国について調査しまとめて、伝えるプログラムだったという。

しかし、その発表に向けて作業を進めるなかで、子どもたちから「“留学生は故郷のまちのことを発表してくれたのに、自分たちがその国や地域のことをまとめて発表するだけじゃダメなんじゃないか”という声があがってきたんです」と、小玉先生は振り返る。

ちょうど夏休みの期間に、自分たちのまち、五城目のことを調べるという活動も平行して進めていたので、それを軸に留学生へプレゼンテーションを行うプログラムに変わった。子どもたちが自分たちの意志でプログラムを変えた瞬間だった。

これについては、小玉先生、菅原先生ともに「自分たちの想像を超えて、子どもの自主的な学びに変わっていった」と口を揃える。

子どもが主体的な意識をもって活動を進めた結果、「国際教養大に入りたい」「英語を話せるようになって海外へ行きたい」と望む子も現れたという。何よりも「初めての異文化交流を楽しんだ」(菅原先生)ことと、「伝えたい思いがあれば言葉の壁を超えて通じ合えるとわかった」(小玉先生)ことが、子どもたちにとっては貴重な体験だったに違いない。

グローカルな共創と、開かれた学校づくりの価値とは?

「ごじょうめで、世界一周」を企画したのは、東京から五城目町に移住し、地域ならではの仕事づくりや学び場づくりに取り組むハバタク株式会社代表取締役の丑田俊輔さん(丑田さんの働き方についてはこちらを参照)。国際教養大学の学生、五城目地域おこし協力隊の面々、町の多くの方々の尽力を得て、半年間にわたるプログラムを運営した。

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ハバタク株式会社代表取締役 丑田俊輔さん

「秋田県は教育環境が豊かで、学力も体力も全国上位。五城目の隣町の国際教養大は約30か国から留学生を受け入れているユニークな大学です。そうした地域の資源を活かした『ごじょうめで、世界一周』のような場を生み出すことで、地域や国際的な視点を育む、グローカルな学びの環境づくりに貢献できたら、と考えました。自分の子どももこれから小学校へ入るし、内外に向け“世界一子どもが育つまち”の姿を見せたい、という思いが強くありました」

gojome1_14自然豊かな五城目の様子

丑田さんの提案を受け「地域や企業と連携した学校運営を県教委時代から模索していた」五城目小学校校長の戸部裕隆さんは快諾した。

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五城目町立五城目小学校校長 戸部裕隆さん

「国際理解と同時に自分たちの地域の良さを再発見するというハバタクさんの目指す〈グローカルな共創〉と、本校の教育の目指す方策が合致しました。もともと本校は地域住民のボランティアルームを併設するなど、開かれた学校づくりを重視しています。五城目の良さに惚れ込んで移住してくださった丑田さんや地域おこし協力隊の皆さんと協働しない手はない、との思いがまずありました」

大学との連携となると、申請手続きや生徒たちの移動手段の手配や交通費といった経費処理など、小学校側のタスクが発生し、担当教諭に授業準備以外の負担が重くのしかるため、実施のハードルが高い。しかし、民間企業が間に立って学生と児童が交流するスキームならば、小学校側に過度な負担がかからずにすむ上に、担当教諭も授業に専念することができ、現場主導で柔軟な運営ができる。国際教養大も社会的意義があれば、むしろ学生の課外活動を奨励している。戸部校長は公益財団法人へ教育助成金を申請し、予算が付いて初年度は実現。その実績をもとに、平成27年度は五城目町の新規事業として承認され、継続が決まった。

国際理解と同時に自分たちの地域の良さを再発見する──。そんな想いのもとに、丑田さんと五城目小学校がタッグを組んで実現した「ごじょうめで、世界一周」。その影で、留学生の資料作成補助や、子どもたちと地域のこのプロジェクトを影で支えた人たちがいた。後編では、関係者によるプログラム充実のための工夫のプロセスを伺った。

子どもにも大人にも知る喜びを届けたい ──ハバタクが進める新しい学びの場づくり(後編)へ続く


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