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子どもにも大人にも知る喜びを届けたい ──ハバタクが進める新しい学びの場づくり(後編)

2015年05月27日



子どもにも大人にも知る喜びを届けたい ──ハバタクが進める新しい学びの場づくり(後編) | あしたのコミュニティーラボ
国際教養大と五城目小学校が協働した特別授業「ごじょうめで、世界一周」を実現できた裏には、現場である五城目小学校の教員たちのほかに、五城目町の地域おこし協力隊と国際教養大学の学生のサポートがあった。後編では、その関係者に話を聞くとともに、いま五城目でハバタクの丑田さんも参画する大人のための学びの場、「ごじょうめ朝市大学」についても話を聞いた。そこで見えてきたのは、地元だけでなく近隣市町村からも人が集まる、 “適度に開かれた田舎”に変わりつつある五城目の姿だった。(トップ画像提供:ハバタク株式会社)

「広い世界へ〜ごじょうめで、世界一周〜」。世界を知り地域も知る“グローカル”な授業 ──ハバタクが進める新しい学びの場づくり(前編)

小学校でこんな授業があったら良かったのに!

国際教養大生として授業の設計、留学生のコーディネート、プレゼン資料づくりのサポートなど裏方全般を支えた1人は当時2年生の二ノ宮将吾さん。

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国際教養大学3年生 二ノ宮将吾さん(提供:ハバタク株式会社)

「準備作業が期末試験と重なって徹夜が続くときもあったので大変でしたが、留学生たちが積極的に楽しみつつやってくれて。みんな“子どもたちが熱心に話を聞いて質問もしてくれた”と喜んでいたので、本当にやりがいがありました」

留学生にとっては自分の地域についてあらためて知る良い機会になったのと、日本語の訓練にもなった。二ノ宮さん自身は「僕の小学校時代にも他国の文化に触れるこんな授業があったら良かったのに。五城目の小学生は幸せ」と思ったという。

そんな二ノ宮さんは大学の必修授業と日程がぶつかり、初年度は泣く泣く裏方に徹し、最後まで留学生と子どもたちの交流を直に見ることができなかったという。しかし、丑田さんいわく「影の最大の功労者」なので、「今年度、8月までに二ノ宮スペシャルデーを五城目小学校で」と、労う。

国際教養大は留学が必修。二ノ宮さんは今年8月から第1希望だった米国バージニア州の大学で学ぶ。専攻は開発社会学で、まちづくりの仕事にも関心があるという。このプログラムで体験した企画設計から、学生のコーディネートまで、一連のプロセスが将来の糧になるに違いない。

学びの基本は教科書ではなく「人」にある

「ごじょうめで、世界一周」には影の功労者がまだ3人いる。地域おこし協力隊の柳澤龍さん、丑田香澄さん、石田万梨奈さんだ。

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(左から)地域おこし協力隊 丑田香澄さん、柳澤龍さん、石田万梨奈さん

地域おこし協力隊とは総務省による制度で、都市部から移住した20〜30代の人材が自治体の依嘱を受け地域の課題解決に取り組む。五城目に着任した柳澤さん、丑田香澄さん、石田さんは、廃校になった小学校を利用した地域活性化支援センター(ハバタク株式会社もここに事務所を構える)を拠点に、6次産業化や起業支援、移住・定住促進などの活動をしている。「ごじょうめで、世界一周」では、子どもたちの調べ学習のため林業や朝市などに詳しい地域の人材をコーディネートしたり、留学生のプレゼンで通訳を務めた。

柳澤さんは人口減少社会に直面する地域はどうあるべきかという難題に魅かれ、丑田さんとも知り合いの仲だったこともあり、五城目に移住した元ITベンチャー勤務のビジネスマン。「学びの基本は教科書や資料を読むことではなく人から話を聞くこと。五城目の子どもたちの授業風景を見て、地域で学ぶ本当の意味があらためてわかりました」とプログラムを振り返る。

前職では新規事業開発と並行して、トラブルやいじめに繋がる学校関連のネット掲示板などを監視するためのネットパトロール事業の運営と営業をしており、さまざまな学校に出入りしていた柳澤さん。その経験から、当時の他の小学校と比べて、新しいことに取り組む姿勢や職員室のコミュニケーションに「五城目小学校の組織としてのすばらしさを感じた」という。

将来のロールモデルを子どもが見つけられる場

秋田市出身の丑田香澄さんも「都会では想像もつかないスキルを持った地域の人たちと子どもたちの出会いの場を提供」できることが意義と話す。子どもたちは海外の異文化と地域に根ざした文化、知恵という両面の「未知」に触れ、学びへの意欲を募らせた。

学校から依頼され、キャリア教育の授業でも話をした経験もある。横で見ていた石田さんによれば、「そこでは子どもたちへ『やればできるビーム』を強力に発射し、丑田香澄さんの話が進むに連れて“子どもたちの目がキラキラしてきた”」という。自分が興味・関心のあることにひたすら取り組めば必ず未来は拓ける。そんなメッセージから、子どもたちは希望を受け取ったはずだ。

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丑田香澄さんがキャリア教育について語った授業の様子(提供:ハバタク株式会社)

“地元のおっちゃん、おばちゃん”をコーディネートしたのは石田さん。丑田香澄さんによれば「地域の人たちと一緒にまちづくりする場のリードがうまい」石田さんだが、本人は「コツなんかないですよ。朝市だれが詳しいですか? と素直に聞いて、あとはていねいに進めるだけ。世界のこともまちのことも子どもたちに知ってもらう授業です、といえばわかってもらえるし、けっこうシンプル。私たち自身が地域に深く入り込むきっかけにもなりました」と話す。

大人になったら世界へ飛び出すかもしれない子どもたちが、地域のアイデンティティもしっかり持っていたら頼もしい、と石田さんは思う。

そんな想いが通じたのか、授業の感想文に「地域おこし協力隊の活動を知って、私も将来は、五城目町のためになるような仕事に就きたいと思いました」と、自分の住む地域に強い興味を書いた女の子も。「ごじょうめで、世界一周」は小学生が自分の将来のロールモデルを発見する機会でもあったようだ。

大人の学び場から、地域をさらにつなげる

ハバタクの丑田俊輔さんと地域おこし協力隊は、地元の有志と共に大人のための新しい学びの場づくりにも取り組んでいる。それが「ごじょうめ朝市大学」だ。

運営代表の小玉昌平さん(コダマ写真館店主)は、かねてから市民によるまちづくりに関心があったが、地元では活動のきっかけをつかめなかった。そこへ丑田さんたちがやってきて、たちまち共鳴した。「丑田さんたちと地域の人たちの間のクッション役になれたら。年齢的にもそういう年齢なので」。

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コダマ写真館店主「ごじょうめ朝市大学」運営代表 小玉昌平さん

高校生レストランを開業した三重県多気町の職員や、空き家利活用にノウハウをもつ建築家ユニットなど、五城目が抱えている課題の解決やまちづくりのヒントになる実践者の講演会を定期的に開いている。商店会のメンバーや町会議員、近隣市町村からもまちづくりに関心の高い人たちが参加するそうだ。

子どもをテーマにしたワークショップも開く。たとえば「子どもたち同士で遊ぶ機会も場所も少ない」という課題が出たら、校庭で雪遊びのイベントを打つ。雪育フェスティバルと銘打たれたそのイベントには、町外からも160人が集まり盛況だった。仲良くなった母親たちがチームを組んでヨガ教室や料理教室に発展することも。

「高齢化が進む朝市の伝統をどうしたら次世代につなげるか」。そんなテーマでもワークショップを実施。“カバンや雑貨などを手づくりする若いお母さんが出店してみたら? かつて朝市は庶民のお見合いの場でもあったから、それを復活させて「朝市ウェディング」は?” などのアイデアが出ていると言う。

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500mほどの商店街路では、山菜、川魚、野菜など、地元の人が自分で収穫した商品を売っている

隣の秋田市に行かなくても、地元で学び、楽しめることを増やす。「分野多発的に五城目っておもしろいよね、という空気を醸し出すことが大切です。仲間を増やし、五城目の中心市街地に人を呼び込むしくみをつくりたい」と小玉さんは話す。

子どもが親の背中を見てカッコいいと思える仕事を

それにしても、五城目町に移住し1年足らずで、丑田さんが学校や地域の人たちの信頼を得て、新しい学びの場を築けているのはなぜか。本人は「ボクなんかまだまだ怪しいヤツですよ」と笑うが、理由の一端ともいえるエピソードを五城目町まちづくり課企業誘致係係長の柴田浩之さんが語ってくれた。

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五城目町まちづくり課企業誘致係係長 柴田浩之さん

「あるとき、丑田さんが子どもを通わせたいので保育園を見せてくれませんか、と。そしたら〈でかい! こんな広い園庭で遊ばせたい! 東京じゃ考えられない。絶対いいですよ!〉と感激しちゃって。お母さんたちに〈五城目の保育園ってすごいらしいよ〉と話したら〈え? マジで?〉といった反応。そういう気づきをくれるんですよね。自分たちがこんなの当たり前だと思ってたものについて新しい視点で指摘して気づかせてくれる」

歳の近い子どもがいるので「親の背中を見て育った子どもに〈父ちゃんカッコいいよね〉と言われる仕事をしたい」と柴田さんと丑田さんは常々語り合っていた。世界に羽ばたく意欲と同時に郷土愛も育む学びの場づくりもその1つ。行政職員と会社社長の関係ではなく五城目の1町民同士として意気投合した。そうやって実現したのが「ごじょうめで、世界一周」だ。

「世界のどこへ行っても自分のやりたいことができる。そんな大人になってほしいですね。田舎でも大人がカッコいい仕事をしていて、自分もその親に育てられたと思えば五城目のことを忘れないはずだし、故郷で新しいことに挑戦したい若者も増えるはず。そんな町にするため、役所としては住民や企業が自主的に活動しやすい環境づくりをしていきたい」と柴田さんは話している。

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ハバタクは、今回ご紹介した「ごじょうめで、世界一周」の他に、築100年超の茅葺屋根古民家をクラウドファンディングで再生して、シェアスペースとして活用していく「シェアビレッジ・プロジェクト」の運営にも携わり、地域を盛り上げようとしている 
※4月17日 年貢(支援金)募集終了(提供:ハバタク株式会社)

丑田さんは五城目に拠点を置きつつ、本社のある東京へもしばしば出張する。学校や企業にグローバルな学びの場を提供するのが事業ミッションのため、海外とのやりとりも多く、丑田さん自身が“グローカル”な仕事のスタイルをとる。人の出入りが多く、互いに刺激をぶつけあえる“適度に開かれた田舎”。「ごじょうめで、世界一周」の先には、そんな地域の理想像が見えてくるようだ。

「広い世界へ〜ごじょうめで、世界一周〜」。世界を知り地域も知る“グローカル”な授業 ──ハバタクが進める新しい学びの場づくり(前編)


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