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“地域密着”で脚光を浴びる日曜市 ──「人」の魅力を軸とした高知県の地域おこし(2)

2015年05月28日



“地域密着”で脚光を浴びる日曜市 ──「人」の魅力を軸とした高知県の地域おこし(2) | あしたのコミュニティーラボ
新たな取り組みとして盛り上がりを見せる土曜市に対して、長い歴史を築いてきたのが、市の中でもっとも大規模な日曜市だ。第2回では、観光のためではなく、あくまでも「生活市」という原点を貫く日曜市の背景に迫る。

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総延長1.3kmの2車線道路が露店で埋め尽くされる

(おばちゃん)「私が穫りゆうがですよ。うまいカニで、エガニ」
(編集部)「なんでピンクのたすきみたいなのがかかってるんですか?」
(おばちゃん)「ツメにはさまれんように、くくったまま湯がいてもらわないかんがです。このこんまいカニにはさまれて、三月(みつき)痛かった、わははは」

日曜市の露店での一幕。おばちゃんが売っているのは、浦戸湾で穫った高級ご当地食材だ。

「ときどきエガニが出るのはここだけ。良かったですね、見られて。茹でて食べるとおいしいんですよ」。そう案内してくれたのは高知市産業政策課の藤村浩二さん。日曜市は、高知市が管理する街路市(日、火、木、金曜市)のうち最大規模の市だ。
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季節を問わず、早朝から夕方まで日曜市は開催されている

日曜市は高知城を突端とする追手筋南側2車線の道路1.3kmを利用して開かれている。出店登録者数は426軒(平成27年度)。道路占用料を市に支払うことで毎週出店できる。野菜や果物などの農産物を売る店が大半で、他に加工食品、塩干物、陶器、工芸品、飲食等々がある。

年間約87万人の人出があり、売上や駐車料金といった狭義の経済波及効果は30億円程度と推計される。

地元の暮らしに寄り添う「生活市」の原点を貫く

高知の街路市の歴史は、実に1690年(元禄3年)から続いており、土佐藩が政策としてはじめたのがきっかけだ。江戸時代以前は、開催日を事前に設定する日切市(ひぎりいち)だったが、太陽暦の採用により明治9年から曜日市となった。戦後の高度成長期には、自動車が増えたことによる交通問題と、量販店などの普及による存在意義が問われ、一時は廃止の声が上がる。しかし、市民生活に定着していることに加え、観光資源として活かせることから、存続が決まった。

「もともと全国各地にも、こうした生活市はたくさんありました。それがだんだん役割を終え、衰退していった。高知はたまたま開発が遅れ、経済的な指標では全国下位となった反面、昔ながらの生活文化が残ったといわれています」と藤村さんが話すように、高知の街路市の方針はブレていない。「観光市」にはせず、あくまでも「生活市」の原点を貫くこと。
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高知市産業政策課 藤村浩二さん

そのため、観光客向けに特化した土産物などは扱わない。出店者の条件は、高知県内に居住する生産農家や漁業者で固有の店舗を持たない個人、といったように限定されている。

市場の活性化は年間商品販売額の減少、県内市場の縮小を課題とする高知県の経済立て直しの一端も担っている。人口減少と高齢化により県内の購買力が徐々に縮小し、同時に市場が他県資本に食い込まれている現状にある高知県は、産業振興計画の施策として「地産地消」「地産外商」の推進に力を入れているのだ。まず地産地消を徹底することで県内産業の力をつけ、官民共同での外商強化と観光客誘致を進めていく。2009年には「高知県地産外商公社」を設立し、小規模業者が多くを占める高知県の商品力・営業力の克服を図っている。
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“市民の日々の暮らしを支える場”という姿勢は変わらない

日々の暮らしの買い物に地元客が街路市を利用する。観光客も高知ならではの山海の恵みを旅の思い出として持ち帰る。そんな姿を今後も維持していくという。歴史ある市場をいかに存続し、市場拡大につなげるか。今後の取り組みに期待がかかる。

江戸時代からの地域資源を継承するために

現在、出店者は60代以上が80%を占め、20〜30代となると4%に満たない。「見た目はそれなりに繁盛していますが、見えないところで危機がじわじわと進行している」(藤村さん)。一方で、以前は少なかった観光客の数はここ10年で増加。地元客との割合は4対6と逆転した。
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店主の高齢化に加え、客層も変わってきた(提供:高知市)

こうした高齢化と観光客の増加などを背景に、生活市としての基本方針は貫きつつも、魅力向上に向けた新たな施策が求められている。市では有識者会議を開いて具体策を検討しているが、その1つが出店条件の緩和だという。たとえば、生産農家以外の雑貨などを手づくりしている個人にも広く門戸を開く。子育て世代は毎週日曜日の予定が埋まってしまうという懸念がつきまとうことから、グループ出店の制度も試行・検討されている。

もう1つの施策は県外への情報発信の強化。積極的にPRすることで「高知の街路市」の認知度を高める。たとえば飲食の人気店を育てたり、中心市街地との回遊性を高めたりすることでリピーターを増やし、市場の元気を取り戻したい。

大学生のボランティアが観光案内も兼ねて出店したり、商業高校が街路市の学習と販売体験を組み込んだ授業を行うなど、若年層が地元の街路市の価値や魅力を再発見し、応援する動きも出てはじめている。出店者のなかには、保育園の児童に100円の「おかいもの券」を配る企画を実施するなど、まず市民ありきの姿勢に敏感な出店者は少なくない。「こうした取り組みを将来につなげていきたい」と藤村さんは語る。

「今日のおすすめは何?」「そんな食べ方もあるの!?」。コンビニやスーパーにはない、人とのふれあいが高知の街路市にはある。買物にそのあたたかみを求める人がいる限り、街路市の人通りは絶えないだろう。

2回にわたって市をテーマに、地域の魅力による賑わい・経済効果の創出を取り上げてきた。最終回では今年で10回目を迎える土佐の「おきゃく」に足を運んでみた。県民性を打ち出した観光誘致の取り組みと、高知県を盛り上げる1大プロモーション施策の「高知家」にかけた、地域づくりへの思いを行政担当者に聞く。

大宴会の文化「おきゃく」で人と人とがつながる ──「人」の魅力を軸とした高知県の地域おこし(3)へ続く
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関連リンク
土佐の街路市


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