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2025年、“Fabスペース”は消滅する!? ──生活に根づくデジタルファブリケーションの展望とは(後編)

2015年06月18日



2025年、“Fabスペース”は消滅する!? ──生活に根づくデジタルファブリケーションの展望とは(後編) | あしたのコミュニティーラボ
徐々にネットワークを広げているFabスペース。前編ではFab浸透のカギとも言える異分野参入の例としてHappyPrintersを取り上げた。後編ではFabLab Shibuyaが進める新たなチャレンジを例に、わたしたちの生活におけるFabムーブメントの定着・可能性について考えていく。

広がる、越境するFabの試み ──生活に根づくデジタルファブリケーションの展望とは(前編)

ものづくりを楽しむ文化を、ホームセンターにインストールする

これまで「移動型ファブラボ」や「&Fab」などで企業とのコラボレーションを重ねてきたFabLab Shibuyaは、さらに領域を拡張する新たなコラボレーションをはじめた。

ホームセンターを展開する株式会社カインズの「カインズホーム鶴ヶ島店」(埼玉県)内に2015年4月からオープンした、DIYをサポートする「CAINZ工房」に協力。同工房は3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機器に加え、木工、金工などの機材も取り揃えている。
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第1号として鶴ヶ島店内にオープンしたCAINZ工房(提供:FabLab Shibuya)

しかも、それらの機材を使うためのプログラムやワークショップがさまざま用意されており気軽に受講可能だ。買い物のついでに、元大工などの経歴をもつプロのスタッフに機材の使い方を教えてもらい、資材を加工してクルマで持ち帰れる。FabLab Shibuyaは、デジタル工作機器の導入教育と商品開発のサポートを行っている。

「立ち上げの導入として、木のボックスをつくって色を塗りましょう、みたいなワークショップを実施していたのですが、僕が行ったときは、朝昼夕の3コースすべて満席でした」とFabLab Shibuyaの梅澤陽明さん。
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FabLab Shibuya代表 梅澤陽明さん

「しかも、ふらっと立ち寄った主婦同士が誘い合って参加したりしている。ホームセンターって園芸コーナーもあるし、潜在的にものづくりに関心のある人たちが集まる場所なんですね。受講料も1回1,000円程度で手頃だし、店に資材は豊富にある。この集客は、ユーザーの多様性にもかかわらず、おしなべて高い共感力を集める、という点でおもしろいと思う。つくることを楽しむカルチャーが芽生えつつあります」

CAINZ工房は鶴ヶ島店が第1号。カインズ全店舗でも売場面積の大きさは上位レベルとスペースに恵まれており、ちょうどリニューアルのタイミングに合わせてオープンした。梅澤さんによれば、今後複数店舗へ展開されたときに、よりデジタルファブリケーションの強みを活かした取組みに育つ可能性があると言う。

「デジタルファブリケーションの強みは、“データをシェアすればどこにいても同じものがつくれる”こと。それをカインズさんのネットワークに載せれば、資材は工房の隣にあるわけですから、たとえば誰かがすごくカッコいいテーブル天板をつくったら、それは全店舗の工房でつくれるようになります。するとカインズさんのなかにデジタルファブリケーションのデータアーカイブが積み上がるわけで、ゆくゆくはそれ自体が商品・商売になる可能性が高い。そのようなプラットフォームづくりを目指したい」
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CAINZ工房内にはさまざまな工作機器が並ぶ(提供:FabLab Shibuya)

ふだんFab施設を利用するのはデジタル機器を使い慣れた20〜30代が多い。だがホームセンター内にFab拠点があると、優れた手技を持つ地域の職人やアナログ系の機材を使える熟練者から若い人まで混じり合った、個人によるものづくり交流の新しい景色が見えてくるかもしれない。

「そのなかで技術が交換され、ゆくゆくは自分たちの地域をこうしたい、というコミュニティー開発にまで視野が広がるのではないか」と、梅澤さんは大きな期待をかけている。

「誰もが気軽にものづくり」があたりまえの社会へ

冒頭の「TOKYO FABBERS’ MEETING #05 ──FABは通用するのか:FABコミュニティの未来予想図を描く編」では、ゲストに日本大学藝術学部デザイン学科准教授の細谷誠さん、あしたのコミュニティーラボの柴崎辰彦代表が登壇した。
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日本大学藝術学部デザイン学科准教授の細谷誠さん(スクリーン右奥)によるプレゼンテーションの様子

細谷さんは2025年までの社会と技術の変化のパースペクティブを描き、柴崎代表は企業が多様なセクターとの共創によって新しい価値を生み出す重要性を強調。多様なバックグラウンドを持つゲストとの交流から、イベント後半に参加者全員で予測する「2025年までの自分事・社会事」のワークに向けて補助線を引いた。

ワークでは、参加者それぞれが思い思いに未来を予測した。多くの人に共通していたのは、誰もがものづくりをすることがあたりまえの社会になったとき、それによって個人の働き方・暮らし向きが大きく変わるのではないか。そこから、決して楽観はできない日本の未来をポジティブに変えることができる社会システムが生まれてほしい、という希望だった。
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参加者が考えるFabコミュニティの未来予測で模造紙が覆われた

イベントの終盤、未来のFabスペースについて各拠点のメンバーがコメントしている。なかでも強い印象を残したのは、FabLab Shibuyaの井上恵介さんによる「2025年にFabスペースは消滅する」という話だった。

「もし誰もが家で個人的なものづくりをすることがあたりまえの社会になったら、たとえば料理と同じように、ワンランク上のノウハウを学ぶ教室は残るかもしれない。けれど、今のような入口としてのFabスペースはいらなくなる」。井上さんは希望的観測を込めてそう語る。
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FabLab Shibuya 井上恵介さん

誰もがものづくりをすることがあたりまえの社会は、果たして到来するのか。そのためには、まだ一部のムーブメントにとどまっているデジタルファブリケーションが、もっとさまざまな領域に越境し、世代も立場も異なる人たちを巻き込んで、社会や街中にじわじわと浸透していかなければならない。

TOKYO FABBERSの活動も、HappyPrintersのメーカーと連携したマス・カスタマイゼーションも、FabLab Shibuyaのホームセンターとの共同事業も、そうした試みの一環といえるだろう。日々の生活にも浸透していくようなものづくりの楽しさを広めるエヴァンジェリスト(伝道者)としての役割が、これからのFabスペースには求められている。

広がる、越境するFabの試み ──生活に根づくデジタルファブリケーションの展望とは(前編)


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