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イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)

2015年06月19日



イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編) | あしたのコミュニティーラボ
東京国際フォーラムで開催された「富士通フォーラム2015」。今回、あしたのコミュニティーラボでは、フォーラム初日の5月14日に「イノベーションを引き起こす『共創型アプローチ』のすすめ ——これからのものづくりとエコシステムの姿」と題したトークイベントを実施しました。日々新たな技術が生まれ、より生活者に身近な存在になってきたものづくり領域をテーマに、生活者視点での課題解決・イノベーションを創出するためのエコシステムのあり方と、その可能性を考えたこのイベント。「エコシステム」の定義から、構築に向けての課題やそこに求める協力者、それを多様なプレーヤーとともに回すためのしかけまで“ものづくりをより身近にさせるヒント”が詰まったイベントとなりました。前後編でその様子をお届けします。

イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編)

技術系ベンチャー企業、クラウドファンディングサイト、大手IT企業……立場の異なる3名が登壇

モデレーターを務めたのは、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]産業文化研究センター教授の小林茂さん。自身もf.LaboというIAMAS内のプロトタイピングスペースをベースにしたものづくりコミュニティープロジェクトを展開し、地場産業と情報産業の共創によるイノベーション創出に取り組んでいます。
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)
モデレーターを務めた情報科学芸術大学院大学[IAMAS]産業文化研究センター教授 小林茂さん

ゲスト1人目は、RT.ワークス株式会社 代表取締役の河野誠(こうの せい)さん。家電メーカーとして著名な船井電機でヘルスケア関連商品のビジネス化を目的とした社内ベンチャーを立ち上げ、そこからスピンアウトする形で2014年7月に起業。高齢者が第2の人生をより豊かで充実したものにするという意味の“アンコールスマート(Encore Smart)”がコンセプトの電動アシストカート「ロボットアシストウォーカー RT.1」を開発、2015年7月からの販売開始を控えています。

2人目は、READYFOR株式会社 代表取締役の米良はるかさん。2011年春に日本初のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を立ち上げ、掲載プロジェクトは累計で約2,500件、支援金総額は約13億円のサービスに成長しています。

3人目は、富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 ポートフォリオ戦略統括部長の高重吉邦さん。海外市場向けマーケティングや新規ビジネス開発、グローバル企業との合弁事業や戦略提携のマネジメント業務を経て、現在は社のビジョンとそれを実現するテクノロジーとサービスをまとめた「Fujitsu Technology and Service Vision」の策定・統括の責任者を務めています。

4名のゲストによるプレゼンテーションの後、会場参加型のワークとして、来場者同士の意見交換の時間が設けられました。意見交換から生まれた質問は小林さんが整理したうえで、後半のディスカッションテーマを設定するプログラムです。

21世紀のトレンドはエコシステムとエコシステムの競争

そもそも「エコシステム」とは何を指すのでしょうか。端的に表すと「ビジネスや社会の“生態系”」を指しますが、まずは各登壇者が考える「エコシステム」をひもときながら、ゲストが今まで行ってきた活動を振り返ります。富士通の高重さんは“エコシステム”を「相互依存的に価値を連鎖させながら、ビジネスを行うためのしくみ」と説明。さらに、エコシステムの現状を小林さんが次のように補足しました。
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)
富士通株式会社グローバルマーケティング本部統括部長 高重吉邦さん

「“新たなプロダクトをつくる”フェーズではこれまで、『企業対企業』あるいは『製品対製品』という競争の形が主流でしたが、これからはカテゴリだけに分断されたモデルでなく、各分野で多様なプレーヤーやコミュニティーを巻き込んだ共創によるエコシステムが生まれ、エコシステムとエコシステムが競争する時代になっていくでしょう」

企業間パートナーシップの必要性を痛感 ──ベンチャー企業の視点から

続いて、ゲストの3名がそれぞれの立場から自らの取り組みを説明しました。河野さんが代表を務めるRT.ワークス株式会社の電動アシストカート「ロボットアシストウォーカー RT.1」は、ユーザーの動きや路面状況をセンサーで検知し、アシストやブレーキなどの動きを自動制御するプロダクト。今年7月から販売を開始する予定です。河野さんは「製品化の過程で出てきたさまざまな課題を、他社とのパートナーシップで解決してきた」と振り返ります。
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)
RT.ワークス株式会社代表取締役 河野誠さん

たとえば、株式会社NTTドコモとは、シェア環境提供に向けた実証実験で協働。さらに、富士通株式会社もRT.1の活動量測定や見守り機能を支えるIoTプラットフォーム構築で協働しています。

「コストに対して価値を見出せるのか、リスクマネジメントをどうするか。コンシューマ向け商品をつくるには、今まで経験したことのないあらゆる課題が立ち塞がりました。ロボティクステクノロジーへの参入は初めてだったのですが、起業から1年、いろいろな企業や人との出会いでここまでやってこれた」と河野さん。“ベンチャー企業のチャレンジをパートナー企業が支える関係性”は、エコシステムを形成するうえで、重要な要素の1つと言えるでしょう。

20億円の資金調達を得るチャンスが、誰にでもある

一方、「チャレンジする個人」への応援、特に金銭面での援助も、活動を継続させる大きな要素の1つです。多くの人々からプロジェクト実行者への共感を生み、金銭面でのプロジェクトへの支援を行うWebプラットフォーム「READYFOR」。代表の米良さんは、2011年当時日本には広まっていなかった“新しい支援のサイクル”を回すため、試行錯誤を繰り返しました。
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)
READYFOR株式会社代表取締役 米良はるかさん

同社が提供するクラウドファンディングの特徴は、目標額に到達しないと受け取れない「オールオアナッシング」方式。目標を掲げ、その進捗度合いを可視化、特に「あともうちょっと!」という段階ではソーシャルメディア上で拡散されやすくなり、今までリーチできなかった人も巻き込んでいくことになるといいます。また、プロジェクト実行者は支援者に対し何らかのリターンを提供するしくみで、双方の長期的なコミュニケーションやファンづくりも後押しします。

スタンフォード大学への留学経験を持つ米良さんは、アメリカのクラウドファンディング市場の規模感について「1つのプロジェクトに20億円の資金調達があることもある」と説明。日本初のクラウドファンディングサイト立ち上げの理由をつぎのように話しました。

「世の中にまだ出ていないものでも、クラウドファンディングならば20億円を集めるチャンスがあるんです。自らのアイデアを実現してもらい、その次のアクションとして、社会にインパクトを与える。新たな価値を提供し続けるサイクルづくりを日本で実現したいんです」

大手IT企業の役割は“個人”が参加できるしくみをつくること

富士通の高重さんは、この日の午前中、アメリカ・カリフォリニア州にある「テックショップ」のマーク・ハッチCEOとのパネルセッションを終えたばかりでした。テックショップは、定額でレーザーカッター、3Dプリンターなどの工具が自由に利用できる会員制DIY(Do It Yourself)工房を全米で展開。また、富士通とはパートナーシップを組んで、カリフォルニア州の小中学校を巡回するDIYトレーラーなど、さまざまな取り組みを共同で行っています。
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)
テックショップCEO マーク・ハッチ氏(別セッションでのプレゼンテーションの様子

「マーク・ハッチ氏がパネルセッションで強調していたのは、“テックショップがコミュニティーに与える影響の大きさ”でした」と高重さん。

「失業の憂き目にあった人が、テックショップで独自のプロダクトを制作、それをクラウドファンディングに提案し、ビジネス化に成功した事例も数多くあります。実際に、テックショップはカリフォルニア州サンフランシスコ周辺の地域で約2,000人の雇用、120億ドルの株主価値を新たに創出する原動力となったそうです」

「クラウドなどのデジタルテクノロジーの普及によって起業に必要なコストが10年で1,000分の1にも低下し、誰もがチャレンジできる時代が来ています」と高重さん。ものづくりのパラダイムが、「職人の時代」から「産業化の時代」と移り変わった後、「今、この2つの時代のいいところを組み合わせることができる時代がやってきている」と強調。

「1人ひとりが創造性を発揮し、個別のニーズに対応したものを、低コストで大規模に提供できる時代。そのときに重要になる考え方がエコシステムなんです。スマートフォンがよい例で、プラットフォーム、ネットワーク、端末にそれぞれ別の企業が参入し、かつ、ソフト開発というかたちで、数え切れない“個人”も参加している。それがエコシステムのスケール感で、強みになるわけです」(高重さん)
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)
各登壇者のプレゼンテーション後、近くに着席した参加者同士でグループディスカッション。各社のビジネスマン同士、はじめて出会ったとは思えない盛り上がりを見せた

大企業からのスピンアウトを経て、さまざまなパートナーと協働してきたRT.ワークスの河野さん。若きリーダーとして新たな市場開拓に取り組んできた米良さんと、グローバル展開するものづくり企業で新たなパラダイムに立ち向かう高重さん。3名の活動に共通するのは“継続させるしくみづくり”、それを動かす“人の重要性”です。後編では“日本におけるエコシステムの役割”と、 “人の巻き込み”を軸として、活動に共創を取り入れるためのヒントを、トークセッションから導き出します。

イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編)へ続く

関連リンク
情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
READYFOR
RT.ワークス株式会社
富士通株式会社 Fujitsu Technology and Service Vision


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