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イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編)

2015年06月22日



イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編) | あしたのコミュニティーラボ
3名のプレゼン後は、参加者同士のディスカッションからまとめられた質問に登壇者が答えていくトークセッション形式で進行しました。登壇者の活動からエコシステムに求められる役割を導き出していった前編。続いて、「そもそも、“エコシステム”とは何か?」という質問を呼び水に「エコシステムの構築と維持」を、自社が生業とする分野でどう行うか、今後果たすべき役割をディスカッションした後編をレポートします。

イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)

エコシステム創出にあたって、それぞれが考える課題とは?

トークセッションの序盤は「エコシステムとは何か?」という問いを軸に議論がかわされました。「生態系」や「一緒に何かを行うしくみ」といった定義を元に、参加者から上がってきた質問は「エコシステムの実現は、実際のところ難しいのでは?」といった質問。モデレーターの小林さんはそれをベースに、ゲストそれぞれが「今感じている課題」を1つ目のトークテーマに設定。最初に回答したのは、READYFOR株式会社の米良さんでした。
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編)
集まった質問をリアルタイムで整理し、まとめていく小林さん

米良さんは、ここまでのREADYFORの取り組みについて「まだ先には理想があって、それに比べたら、何もできていない状態」だと振り返ります。本質的に何かを変えるには「サステナブル(持続可能な状態)に世のなかを変えるのが理想」だと語り、「クラウドファンディングが単なる資金調達の手段に終わってはいけない」と強調しました。

「チャレンジする人の数が増えていくしくみをつくりたいんです。重要なのは、そのチャレンジがその後、世のなかにどういうインパクトを残していくか。誰もが勝者になれる関係性をいかにつくるかが、私たちの課題です」(米良さん)
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編)
(写真左から)富士通株式会社 高重吉邦さん、READYFOR株式会社 米良はるかさん、RT.ワークス株式会社 河野誠さん。登壇者同士、質問が飛び交った

一方、富士通株式会社の高重さんは、大手企業の立場からIT企業ならではの「仕事のあり方」についての課題を提示しました。

「イノベーション創出に求められるものは、私たちが日常的に行っている“お客様の要望に正確に応え、期日通りに納品する”のではなく、“自ら積極的に課題を見つけ、その市場に対して働きかける必要がある”ものであるということです。“頭ではわかったとしても、イノベーション創出に対して、すぐには体が動かない“という状況がすでに起きている」と高重さん。その意識改革のためにも、プロトタイピングを繰り返すことのできるテックショップのような創造の場は役立つと期待を寄せます。

「考えているだけでなく、その場に行って体を動かす。そうした気運と人を育てていくことが、富士通の課題となるでしょう」(高重さん)

日本のエコシステムはシリコンバレーに追いつけるか?

続いて、米良さんの留学経験を発端とするトークから、高重さんがシリコンバレーのエコシステムについて言及。そこから「日本全体が抱える問題点」が明らかになってきました。

シリコンバレーでスタートアップを立ち上げる場合、起業家が自由に発明する機会や場が設けられるほか、クラウドファンディングやベンチャーキャピタルによってそれが支えられます。さらに、その事業が成功すれば、やがてM&Aによるイグジット(exit[出口]、ここでは事業売却の意味)やIPO(株式公開)を実施。売却によって利益を得、成功をおさめた彼らが投資家となることで、次のスタートアップ起業家たちを支えていきます。こうしたシステムが「シリコンバレーのエコシステム」といえます。しかし日本には、そこまでのエコシステムが築かれてないと言います。
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編)
シリコンバレーにおけるスタートアップの役割と、そこから生まれるサイクルについて説明する高重さん

シリコンバレーの生態系が、なぜ日本ではできないのか。その原因の1つを、高重さんは「ベンチャー企業を買収する文化が、日本の大企業になかなか根づかないから」と説明します。

「技術開発から製品開発、流通、販売まで、すべて自分たちの企業のなかで行う、そのしくみ自体を変えていかないと、ベンチャー企業そのものが育たず、結局、生態系もまわっていきません」(高重さん)

この話を受け、RT.ワークス株式会社の河野さんは、企業とのパートナーシップの視点から「日本のローカライゼーションから生まれるエコシステムをつくれないでしょうか」と提案しました。

「終身雇用制度に慣れてしまった日本では、外の人になかに入ってもらい、うまくいいものをつくる習慣をなかなか受け入れられないものです。日本人の働き方や生き方にあったやり方を見つけるのも重要だと思います」(河野さん)

河野さんは起業前に、シリコンバレーにあるスタートアップともビジネスをしてきたといい、そのときの感想を「どうしても“成功するものをつくろう”という考えになってしまう」と振り返ります。その点、日本の企業には「新しいことにチャレンジしよう」という気風のようなものが感じられ、「そうした日本のローカライゼーションは、強みになるのでは」と説明しました。
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編)
これらの話を聞いた小林さんも実体験として、国内企業の新規事業担当との会話から見えた、今後のエコシステム構築とつながりづくりの可能性について言及しました。

「新規事業の担当者は、いきなり既存事業と同等の成果を求められてしまうために最初の一歩を踏み出せないことが多く、たとえ競合であっても“自分たちと同じような立場に立たされる人に成功してほしい”という気持ちにさえなることが多いと聞きます。新しいことにチャレンジしようとする人々が増えるような取り組みが必要であるのと同時に、多様な企業の共創が必要なIoTの時代においては、大企業とベンチャー企業がフラットに話せるような関係性が重要になってくると思います」(小林さん)

失敗に寛容になることで、継続的にチャレンジしやすい環境へ

以上のトークセッションを終え、イベントは終了。ゲスト3名は、これからのエコシステムで求められることを、それぞれ次のようにまとめました。

「日本の中小企業はすごくクオリティが高い。エコシステムでは、大企業が事業不振などでだめになったときに、中小企業が力を見せ、大企業を支えるようなしくみにも期待しています。なぜなら、大企業と中小企業のバランスがこれからの日本の経済を支えていくから。われわれも1つのベンチャー企業として、そうしたネットワークを必要としています」(河野さん)
イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(後編)
「チャレンジャーがいれば、触発されて次のチャレンジャーも生まれてくるものです。そのためには、継続的にチャレンジができる環境づくりがとても大事なんです。だからみなさんにも『失敗してもいい』と寛容になって、チャレンジしている人を応援してほしい。いろいろツッコミどころがあっても『それいいね!』というひと言をかけてあげれば、相手にとって大きな力になるはずです」(米良さん)

「日本の企業が海外企業とすれ違う理由は、日本の企業が今できることだけを語って、将来のビジョンを語らないことにあると思っています。これからの時代、日本にエコシステムを拡げる意味でも、私たちのような大きな企業が『どんな未来をつくりたいのか』というビジョンを示し、それを皆さんと共有していかないといけません」(高重さん)

イベントのまとめとして、小林さんは次のように話しました。

「IoT(Internet of Things)の時代を迎えた今、なぜみんなが突然“エコシステム”と言い出したのか。今日のイベントをきっかけに、ちょっとでもそんなことを意識してくれたら、変化の兆候を感じることできるかもしれません。そうしたことから見方が変わり、そこからチャンスが生まれる。今までつながっていなかった人ともつながったりするかもしれませんね」(小林さん)

“これからのものづくり”を考えるうえで、重要なキーワードとなるであろう「エコシステム」。個人、ベンチャー企業、大手企業がその実現に向けてどんな取り組みをしていくのか、その動向を追うとともに、あしたラボ自らがそのしくみづくりを行うためのヒントを得たイベントでした。

イノベーションを引き起こす「共創型アプローチ」のすすめ ──イベントレポート(前編)

関連リンク
情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
READYFOR
RT.ワークス株式会社
富士通株式会社 Fujitsu Technology and Service Vision


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