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縫製工場を束ね新たな価値を“仕立てる” ──服づくりのクラウドソーシング「sitateru」(前編)

2015年08月19日



縫製工場を束ね新たな価値を“仕立てる” ──服づくりのクラウドソーシング「sitateru」(前編) | あしたのコミュニティーラボ
sitateru」は、服の生産を必要とする登録取引先(ブランドや小売店、EC店舗など)と、国内の中小零細工場を適材適所につなぐことを目的としたクラウドソーシングサービスだ。服をつくりたい登録取引先は、デザイン画などをもとにパターンやサンプル生産を依頼できる。こうした服づくりの新流通サービスは、ものづくり業界において、課題をビジネスへと変換した好事例といえる。熊本県熊本市にあるシタテル株式会社の河野秀和さんに、縫製工場との連携などを中心に話を伺った。

着る人に活力と豊かさを与える“衣”をつくる ──服づくりのクラウドソーシング「sitateru」(後編)

目指すは、ファッション業界の“Google”

ファッション産業のしくみは「川上」「川中」「川下」の3つに分けて考えられることが多い。「川上」は糸から生地がつくられるまでの段階のこと。「川中」は生地を洋服に仕立てる段階で、縫製工場などが該当する。最後に「川下」が小売・流通の段階。主に百貨店や小売店を指すが、近年はインターネットが普及し個人での販売が容易になったことで、オリジナルの服をつくりたいと考える販売事業者が多様化および細分化されている。ブランド、小売チェーン、セレクトショップ、EC事業者、さらにはIT企業など、オリジナル商品を小規模で販売していくケースは増えてきているのだ。
ファッション業界のしくみ。上から下へと流れていく (シタテル株式会社資料より編集部作成)ファッション業界のしくみ。上から下へと流れていく
(シタテル株式会社資料より編集部作成)

しかし縫製工場では、大口の生産とともに小ロット生産を行っていくのは効率が良くないうえ、限定生産だからといって工賃が高くなるとは限らない。“sitateru”はこうして行き場を失った販売事業者たちのニーズに応えてくれる。今回わたしたちが注目したのは、そうしたサービスを実現するうえで縫製工場とどのようなリレーションを築いているかだ。

その背景を探るため、ファッション業界における“Google”を目指すべく急成長中のシタテル株式会社に伺った。
本社オフィスの入口にはアンティークミシンが並ぶ
本社オフィスの入口にはアンティークミシンが並ぶ

優れた技術と、技術を求める人をつなぐ

シタテル株式会社 代表取締役の河野秀和さんは、さまざまなインタビューで「ファッション業界の“Google”を目指す」と話す。それは、どういうことなのだろうか。

「何かをはじめようとしたとき、多くの人がまず“Google”で検索するでしょう。それと同様に『衣服をつくりたい!』と思った人たちにまず“sitateru”へアクセスしてほしい。私たちはそうした人たちに向け、瞬時に適正な環境を整えることができます」
シタテルが構築した流通基盤。さまざまなブランド、メーカー、小売などの販売事業者と“川中”の工場を適材適所につなぐかたちでシタテルが存在する(シタテル株式会社資料より編集部作成)
シタテルが構築した流通基盤。さまざまなブランド、メーカー、小売などの販売事業者と“川中”の工場を適材適所につなぐかたちでシタテルが存在する(シタテル株式会社資料より編集部作成)

情報のプラットフォームであるGoogleのように、sitateruは「服づくりにおけるプラットフォーム」として、ファッション業界のスタンダードを目指すというのだ。

さらにそれを後押しする強い思いもあった。

高い技術力はありながらも、ものづくりをする環境が整備されにくい。また、「他の先進国に比べて圧倒的に遅れているのは、技術でもテクノロジーでもなく、人々が想像(デザイン)する力」と河野さんは感じている。そんな日本の産業に対して、かねてから危機感を抱いており、多様な想いを具現化できるサービスのマップを描いたというのだ。
シタテル株式会社 代表取締役 河野秀和さん
シタテル株式会社 代表取締役 河野秀和さん

もともと熊本県は「流行の先をいく地域」としてファッション業界でも一目置かれ、全国的にも縫製工場が多いという。しかし近年は海外生産工場にシェアを占められ、繊維業界全体で見ても関連事業所数はこの15年で半数以下にまで落ち込んでいる(経済産業省「工業統計」より)。もちろん縫製工場も例外ではない。そんな熊本で、かつては地場企業の問題を解決すべく経営コンサルタントとして地元企業の相談役を務めていた河野さん。多くの縫製工場を視察していた折、技術力があっても時流に逆らえず、泣く泣く工場をたたんでいく経営者の実状を目のあたりにした。

「消費者の趣味趣向が多様化するなか、問題の本質は“流通”にあると感じました。工場は自分たちがつくったものがどこに並んでいるのかもわからない。消費者も自分の着ている服がどこでつくられたものなのか、流通経路を知りません。また、ほとんどの工場において、自社で商品を企画し、多様化する市場に向けて自社のブランドを生み出すことは現実的に難しい。衣服をつくる際にはデザインやパターン、生地、資材の準備が必要になりますから。しかし、現状その環境はうまく整備されておらず、特に川中といわれるゾーンはカオスな状態でした。変えていくのは、既成概念や既得権に振り回されることなくチャレンジできる、自分のような業界外の人間なのではないかと考えたんです」

オリジナルの服づくりを支えるワンストップサービス

2012年3月、河野さんは宇城市で「earth and one 株式会社」を設立した。ここでは既存の服をカスタマイズし、世界に1点だけの服をつくれる「U+」というサービスを立ち上げた。サービスは同年「Innovation Weekend(編集部注:ベンチャー企業と支援者を結びつけ、グロバールベンチャーを育成するためのプラットフォーム)」のGrand Finaleで優勝を果たしている。

「しかし『U+』は服の2次流通に特化していました。服をゼロからつくる1次流通を充実させたうえで2次流通を攻めていかなければ、本当の課題解決につながらない」と河野さん。そのための新機軸として2014年3月にシタテル株式会社を設立。sitateruのサービスをスタートさせ、翌2015年から本格受注を開始した。
会社設立後に掲げたミッションは“made by imagination”。オフィスの扉にもメッセージとして刻まれている
会社設立後に掲げたミッションは“made by imagination”。オフィスの扉にもメッセージとして刻まれている

服をつくるためにはデザイン・生地・パターン(型紙)などが必要となるが、sitateruではデザインやパターンを作成したり、生地や資材の手配、加工を施したりするなど、利用者が用意できない部分を補填するサービスもある。

そのため、シタテルにはデザイナーやパタンナー(型紙を制作する人)が在籍しており、生地選定にも対応。最低ロットはアイテムにより変動があるが、1ロット30枚(1型15枚)から受けつける。通常この業界では半年程かかる工程を、シタテルでは全ての準備物の手配を行うと同時に1カ月程度でパターン、サンプルが完成。その後1カ月程度で本生産を行い、商品を納める。

苦境にあえぐ工場の“新規事業部”として

連携する縫製工場の数は現在国内に約50工場。工賃の確保にも注力している。従来のしくみは多重構造であるがゆえ、商品の価格が高騰したり、工場側の利益が少なくなったりしていた。特に小ロット生産は工場側からすると割の合わない仕事だ。シタテルがそれらの多重構造をなくし、流通経路を整備したことで、同品質の商品でも卸値を抑え、かつ工賃も確保できるようになった。

一方で、シタテルでは工場のクオリティチェックに厳しい目を光らせる。通常、サンプルづくりは熟練工が務めることが多いため、実際の生産ラインでの品質にギャップが生まれやすい。工場本来の技術力をチェックするため、各工場が得意としているアイテムを数点送ってもらい、縫製技術を確かめる。
これまでの成果について「earth and one 時代の2年間で知見や人脈を集められたことが大きい」と河野さんは振り返る
これまでの成果について「earth and one 時代の2年間で知見や人脈を集められたことが大きい」
と河野さんは振り返る

「工場では『何か新しいことをはじめないといけないけど、なかなかできない』と悩んでいる経営者がたくさんいらっしゃいます。そうした工場の経営者には“うちを工場の新規事業部と見なしてほしい”と話し、理解を深めてもらっています。私たちが工場の窓口となることで、今までリーチできなかった新しい仕事とつなぐことができますから」

では、こうした連携工場の経営者は、業界に新しく参入してきたsitateruをどのように見ているのか。連携工場の1つ、有限会社モード・レディースに向かった。

sitateruのサービスを支えるのは国内約50の連携工場だ。現在のところ、工場の多くは熊本県に立地している。そこで熊本市内から車で1時間ほどのところにある、熊本県玉名郡長洲町の連携工場にお邪魔した。後編では、工場経営者へのインタビューから「sitateru×連携工場」の関係性構築の秘訣に迫っていく。

着る人に活力と豊かさを与える“衣”をつくる ──服づくりのクラウドソーシング「sitateru」(後編)に続く

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