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着る人に活力と豊かさを与える“衣”をつくる ──服づくりのクラウドソーシング「sitateru」(後編)

2015年08月20日



着る人に活力と豊かさを与える“衣”をつくる ──服づくりのクラウドソーシング「sitateru」(後編) | あしたのコミュニティーラボ
服づくりのクラウドソーシングサービス「sitateru」。サービスの本格稼働から間もないが、利用者の数は右肩上がりに増加している。そんなsitateruが「ファッション業界のGoogle」になるために欠かせないのが、連携工場の数々だ。連携工場との関係性はどのように構築されているのか。シタテル株式会社の河野秀和さんと、連携工場である有限会社モード・レディースの大塚賢哉さんに話を伺った。

縫製工場を束ね新たな価値を“仕立てる” ──服づくりのクラウドソーシング「sitateru」(前編)

“生鮮食料品”並の生産スピードが求められている!?

有限会社モード・レディースは、シタテル株式会社の連携工場の1つ。代表取締役・大塚賢哉さんの父親が開業した縫製工場で、かつては主に企業・店舗・学校などのユニフォームをつくっていたという。
有限会社モード・レディース 代表取締役・大塚賢哉さん
有限会社モード・レディース代表取締役 大塚賢哉さん

しかし20世紀も終わりにさしかかったころ、得意先だった百貨店が生産拠点を海外に移したことが痛手となり工場の閉鎖を余儀なくされた。

2000年代に入ってから設備などもすべて入れ替え、ニット製品(肌着や外衣用途に使われる編み物)の製造にシフトした。現在は婦人用肌着からカットソーまで、幅広く対応できるまでに生産体制が整備され、大手メーカーから定期的に大口注文を受けるところまで回復している。

「業界的にどこも多品種少量生産に切り変わりました。海外にはライバルとなる工場も多くあり、一連の流れは“生鮮食料品”を取り扱っているかのようなスピードが求められています。機械でぽんぽんと製造できると思われているかもしれませんが、縫製は手作業なのでそれは容易ではありません。スピーディに対応するためにも、人の配置を考えるなどして生産効率を高めながら、いろいろと工夫を凝らしてやっているのが現状です」(大塚さん)
モード・レディースの工房。生産工程ごとに区画が分かれ、作業ごとに特殊なミシンが整備されている
モード・レディースの工房。生産工程ごとに区画が分かれ、作業ごとに特殊なミシンが整備されている

業界全体が潤うしくみを考えてくれる助っ人のような存在

シタテルとの取引は2015年からはじまったばかり。

最初の注文は、東京を拠点とする某ブランドが展示会に出すための服を十数着程度製造する仕事だった。決まっているのはデザインと生地のみで、サンプル品はもちろん、パターン(型紙)も決まっていない状態だった。しかもブランドから希望された納期は通常よりもはるかに短いもの。

本来は見送る案件だが、河野さんは断る前に契約を結んだばかりのモード・レディースを思い出した。納品スピードとニット製品に定評があったからだ。おそるおそる相談する河野さん。ちょうど工場の業務量が谷間の時期だったこともあり、「なんとかやってみましょう」と大塚さんはこれに応じた。

まず、シタテルの東京のサテライトオフィスにいるパタンナーがパターンを作成。即日、モード・レディースにパターンデータが送られた。大塚さんは送られてきたデータをもとに、現場責任者とすぐにサンプル作成に取りかかった。

「かつてはパターンを紙で送ってもらっていたのでサンプル作成まで3日間はかかっていました。今では、パターンもデータ化されたうえ、PC上でパターンをデータ作成できるCADや、そのデータから生地の自動裁断ができるCAMといったシステムも一般的となりました。スムーズにいけば、サンプル作成は1日ですべて終わります」(大塚さん)

サンプル品は直ちに東京へ届けられ、ブランド側からの了解を得、直ちに量産体制へ。通常では実現できない、“超”短納期の注文に対応できた。ただ、「これはタイミングなどが上手くかみ合った特例であり、本来はやはり難しい案件」と河野さんは振り返る。
生地の裁断などは自動でできるが、細かな縫製は技術が求められるため機械化が難しいという
生地の裁断などは自動でできるが、細かな縫製は技術が求められるため機械化が難しいという

「ここ、荒尾・玉名地区も20年くらい前は40ほどの縫製工場が軒を連ねていましたが、今は10社にも満たない状態。工場経営者同士で話をしてもどうしても暗い話になってしまうし(笑)、ビジネスも守りに入ってしまいます。業界全体が潤うしくみを考えてくれる、いわば助っ人のような存在が必要で、おもしろい発想を出してくれる河野さんには期待をしています」(大塚さん)

とはいえ、小ロットの生産は工場側にとって決して効率が良い仕事ではないはずだ。それでも河野さんの注文に応えるのは、なぜなのか。

「当然、採算が合わないとやっていけませんが、河野さんは私たちの利益の確保も考えてくれる。それに、生産過程で職人の経験則から出た私たちの意見をお客様であるショップ側に伝えるなど、きめ細かく対応してくれます。そんな関係が築かれているから『次もやってあげたい』という気にさせられるし、今はsitateruというブランドイメージを崩したくないから失敗はできない、と感じるようになりました」(大塚さん)

市場流通総額は2億円を突破! サービスの世界展開を視野に

現在、sitateruの依頼されている市場流通総額は2億円に達している。河野さんは「今後、人員体制はもちろんですが、大中小さまざまなロットを適材適所に工場へネットワークできるよう、私たちの側で生産管理を担えるバックエンドのシステムも構築していきたい」と話す。

登録取引先(販売事業者)も拡大し、現在およそ900社。このうち370社前後から生産依頼が来ている(2015年7月末時点)。日本の縫製工場がもつ高い技術力もそれを後押ししており、ニューヨークやイギリスの企業からもオーダーがあり、活動拠点や連携工場を海外に広げることも視野に入れている。

「最終的なゴールは果てしないですが、世界規模でsitateruが使われ、世界の工場が自由に使える状態にしたい。登録取引先は1万5,000社、連携工場は200工場を目標に据えています」

アパレル産業界の革命児ともいえる河野さんだが「私はなるべく『アパレル』という言葉を使いたくない」と話す。

「その言葉だけでは私がやりたいことを言い表せていないような気がするんです。どちらかというと『衣服』を扱っているという感覚で、生活に欠かせない衣食住の『衣』というところから、意識を変えていかないといけないと思っています」

偶然にも、大塚さんの考えていることも河野さんと同じだった。

「“衣食住”のうち、“衣”と“住”は1年間、今あるものを使ってもなんとかやり過ごせるでしょう。でも“食”はそうも言っていられません。“衣”にも“食”と同じように、着る人の1日1日に活力を与え、暮らしを豊かに変えていけるものであってほしいんです。シタテルさんには、そんな“衣”が持つ価値を世の中に提案していってもらいたい」

人にとっての“衣”とは何なのか──。その言葉の重みを再定義しようとする2人は、きっと同じ未来を見ているはずだ。
経歴も世代も異なる2人は、“衣”の本質を究める思いでつながっていた
経歴も世代も異なる2人は、“衣”の本質を究める思いでつながっていた

縫製工場を束ね新たな価値を“仕立てる” ──服づくりのクラウドソーシング「sitateru」(前編)

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シタテル株式会社


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